第五十六器 王の最期
「夜詩…なの?」
「夜詩お兄ちゃん…」
夜詩は遠くを見つめ指を折り呼び寄せる仕草をする。
「俺に気付いたとは驚いた」
夜詩の側にジパーが現れた。
「ジパー、あなたがどうして?」
「雑魚はほとんど片付けたと思ったら城が消えてびっくりして来てみたんだよ。
かなり遠くから見てたが…随分と変わったな」
ジパーを見つめ刀磨と游とアリスを指差す夜詩。
「連れて行けってか。
分かったよ」
刀磨に触れながら游達の方を見て一瞬で移動するジパー。
「待って! 夜詩も」
「あいつにはあいつの戦いがある。
俺に掴まれ」
游とアリスはジパーの肩を掴む。
「逃がすと思うか?」
キングリーの光りの突きが游達へと飛んで行く。
「!?」
激しい爆発音が響くと游達の前に片手を伸ばした夜詩の姿があった。
「あぶねぇ…行くぞ!」
「夜詩、絶対帰って来てね!」
「お兄ちゃん、頑張って!」
そう言い残し四人の姿が消える。
「逃げられたか…貴様を殺した後で追えば済むか。
呪装でもないその力がどれ程か試してやろう」
一瞬で目の前に移動し、それに反応し突きを放つキングリーの槍を右手で払い除けながら体を回転させ、尾でキングリーを地面に叩きつける夜詩。
「ぐっ! 愚民が!」
素早く体を回転し下から夜詩を突き上げるキングリー。
「貫けぬか…はっ!」
光りの突きで夜詩を上空へと打ち上げ、キングリーは更に波を高め飛び上がり、夜詩の上を取ると槍を突き下ろし地面へと落下する。
「…頑丈な様だな」
地面が窪む程の衝撃でも槍は夜詩を貫けなかった。
「ならもう一度…!?」
夜詩が振り上げた手の爪でキングリーの鎧は砕け、体に斜めの傷が走り血が吹き出す。
「ぐぐっ…私が血を流した…王の血が流れた…許さぬ…許さぬぞ!」
キングリーが槍を掲げると波が槍に集まり凄まじい輝きを放つ。
「全てを砕く王の一撃!」
槍を構え起き上がる夜詩に突進するキングリー。
「はあぁぁぁぁぁ!」
槍は突き出した夜詩の掌を貫き、肩をも貫通させ吹き飛ばす。
「我は全ての頂点に立つ存在!
敗北など許されるのだ!
そう…あれは敗北ではない…あの男との勝負はまだ着いていないのだ!」
傷口から血を流しながら立ち上がり、空へ飛び立つ夜詩。
「逃げるか?」
右拳が赤く輝き、夜詩は空を高速で飛びながら円を描く。
「まだやる気か…次で終わらせてやろう!」
キングリーが槍を構えると同時に高速で向かっていく夜詩。
「我は最強だ!」
頬の皮膚を削り取りながら夜詩の拳はキングリーの顔を掠め、槍が夜詩の腹を貫く。
「我の勝ち…ぐおっ!」
キングリーの左脇腹に夜詩の右拳がめり込んでいた。
「(このままでは…右に飛んで回避を…動けぬだど!?)」
槍に流れる夜詩の血がキングリーの体を地面と繋ぐ。
「(あのスピードは攻撃の威力を上げる為でなく、槍を深く突き刺す為だったか!)」
キングリーは吹き飛び遠くにあった兵器の台座に叩きつけられ、夜詩は剥がれるように皮膚が落ち元の姿に戻りながら倒れる。
「ぁぁ…ぁぁぁ…(まだ…だ…この兵器で…奴を…)」
這いながら兵器の操作装置まで進むキングリー。
「(もうじき…奴の…根城が…)」
その時、空が映し出されたスクリーンに城のような物が見えた。
「(来た! …これで奴を…傷を癒し…次こそ世界を…)」
キングリーが照準を合わせトリガーを引くと、兵器の先端にエネルギーが集まり空へと伸びる。
「(我の…勝ち…だ?)」
しかし、途中で何かに阻まれ爆発した。
「愚かな」
「な…んだ…」
スクリーンには白い羽を広げた男が映っている。
「神を狙うとは愚かな人間め。
神に代わりこのミカエルが裁きを下す」
キングリーの遥か頭上に光の輪が現れた。
「我…は…王…だ…」
輪から眩い光りが降り注ぎ、兵器あった周辺が一瞬で跡形もなく消え去る。
「憐れな子羊に神の祝福を…」
ミカエルは夜詩に近付く。
「神の半身…」
ミカエルが手を伸ばすと周囲を光りが覆っていった。




