第四十九器 砕けない小さな心
「先ずはその可愛いお顔を壊してあげるわ」
拳を握ったジレーザがアリスを殴ろうとした瞬間、後方へ飛ばされ胸から煙が上がっていた。
「危ないわねぇ。
音速で自分の血を飛ばしたのね。
私じゃなかったら貫通してたわよ」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「最後の抵抗も無意味だったわね。
楽にしてあげるわ」
「まだ…戦える!
狂戦士の鼓動!」
アリスが叫ぶと周囲の壁や床に亀裂が入る。
「なんて声よ!?
今、静かにしてあげる!」
ジレーザは殴りかかるもアリスの姿を見失う。
「消え…がはっ!」
足元に現れたアリスの拳が腹に入り、体を打ち上げられるジレーザ。
「(何この力!?)」
「はっ!」
ジレーザは一瞬で目の前に移動したアリスの蹴りを顔面に受け吹き飛ぶ。
「まだ休ませない!」
地面に転がるジレーザへ追い討ちをかけるアリス。
「はぁ…はぁ…ちょこまかと…」
起き上がったジレーザをアリスの猛攻が襲う。
「確かにあなたは硬いけど、音速の拳を何発も受ければダメージは通る!」
「(自分の体を強化したって訳ね…でも)
ガキが鬱陶しい!」
ジレーザの体から波が溢れだし、アリスは距離を取る。
「私の本気見せてあげる。
はあぁぁぁぁぁ!
乙女の肉体美!」
眩い輝きを放ったジレーザの体は金色に輝いていた。
「き…気持ち悪い」
「掛かってきなさい。
私はここから動かないから」
「じゃあ遠慮なく行くよ!」
ジレーザの目の前に移動し顔面に拳を打ち込むも、拳から血が吹き出すアリス。
「ぐっ!」
「もうあなたの拳は効かない。
ただ固くなっただけじゃないのよ」
捉えられない程の速さでアリスを殴り飛ばし壁にめり込ませるジレーザ。
「あぁ…あ…」
「この姿は内臓や血管、脳まで金属に変化させてるの。
本来、人間には耐えられない程の力も簡単に出せるし、軟化させて筋力を他から移動も出来る。
もう聞こえてないかしら?」
「(波でガードしたのに…勝てない…のかな…)」
「誇っていいわよ。
私を本気にさせたのはあなたで二人目なんだから。
終わりにしましょう。
乙女の愛の結晶」
ジレーザの右手がどんどん膨らんでいき、自分の体と同じくらいなっていく。
「(まだ…死ねない…こんな所で…)」
「さようなら」
左手で右手を支えながら駆け出すジレーザ。
「(みんな…)」
ジレーザの拳が壁を突き破り、瓦礫が遥か彼方へと飛んでいく。
「…まだそんな力があったの」
「まだ…やれる!」
素早く移動しながら声の衝撃波をジレーザへ飛ばしていくアリス。
「私の体が振動してもダメージはないわよ」
「もう少し」
「しつこいわね…次は確実に当てるわ!」
少し右手を小さくし足に筋力を戻しアリスに迫るジレーザ。
「(もう少し…今のは!?)」
アリスはジレーザの肩がほんの僅かに欠けた事に気付く。
「死になさい!」
「消滅の子守唄!」
ジレーザの拳がアリスに届いた瞬間、粉々に砕け散る。
「何…これ?」
「あなたを破壊できる振動数を調べてた。
生身の人間には簡単には出来ないけど、全身金属のあなたなら出来ると思ったの」
「小さいのに…機転…効くのね…」
全身にヒビが入るジレーザ。
「さようなら」
アリスは部屋を出ていく。
「キングリー様…私の…愛は…ここま」
ジレーザは粉々に砕け、金の粉が舞う。
「はぁ…はぁ…兵器を破壊しないと…何!?」
通路を通るアリスを壁が囲い激しく揺れ始め、しばらくすると動きが止まった。
「どう…なったの?」
すると、壁が砕け外の光りが見える。
「外? …夜詩お兄ちゃん!?」
外へ出たアリスの目に写ったのは、傷だらけで倒れている夜詩を見下ろすキングリーの姿だった。




