第四十三器 憎しみという理性
「能力者を使ってるだと?」
「そう。
脳に機械を埋め込み、意のまま操る。
それが能力者なら能力すらもコントロール可能なんだよ」
「ひどい…」
「ひどい? お嬢ちゃんには分からないかもしれないが、彼等は以前よりも数段に強くなっている。
感謝されてもいいくらいだよ」
「狂ってる」
「人類の新たな可能性を広げるためだよ」
「貴様は殺しておいた方が良さそうだな」
刀磨はシュタインへと駆け出し斬りかかった。
「相手は私ではない」
「ちっ!」
二人の間にバウドの放った光りが伸び、刀磨を遠ざける。
「あんな力もあるのか」
「先にこいつを片付ける!
炎刀・刻朱」
天井を埋め尽くす炎を刀から出し、バウドへと振り下ろす刀磨。
「バウド…極上の餌だ」
バウドの肩から皮膚と一体化した球体が現れ、炎を吸い込んでいく。
「吸収だと?」
「バウドは力が強い分、燃費が悪くてね。
呪装状態を保つのには大量の波が必要になる。
だから僕が開発した波吸収装置で補っているんだ」
「呪装状態の能力者を改造しているのか。
なら装置を破壊すればいい!」
炎を吸い込み終えたバウドの肩へ刀磨は刀を振り下ろす。
「わかってないね」
刀が装置に触れた瞬間、刀磨の体から波が一気に抜けていく。
「ぐっ…」
「刀磨!」
刀磨をバウドから引き離す夜詩。
「大丈夫か!?」
「なん…とかな…くっ!」
「休んでろ」
「君はかなりの波を持ってるようだね。
君を改造してみたくなったよ!」
「あの装置に気を付ければいいんだな」
バウドの周りを素早く回りながら夜詩は間合いを徐々に詰めていく。
「何をする気かな?」
バウドの尾を避けながら側面に立ち、力を込め拳を放つ夜詩。
「(ただのパンチ?)」
「吹き飛べ」
すると、凄まじい速さで壁へと叩きつけられるバウド。
「バウド!?」
「グァウァァァァ」
「体の内側に波の塊をぶつけた。
今のも吸収できるか?」
「バウド、立ってあいつを倒すんだ!」
「ガァルルゥ」
なんとか立ち上がるとバウドは尾を自分に突き刺し、夜詩へと向くと大きな口を開ける。
「なんだ?」
光りがバウドの口へと収束し夜詩へ放たれた。
「!?」
光りは夜詩を飲み込んでいく。
「波吸収装置以外にちゃんと兵器も装着済みだよ」
「夜詩お兄ちゃん!」
爆発と共に周囲を煙が覆う。
「殺すのは勿体なかったかな?」
「殺す? 誰を?」
夜詩の前には半透明な盾が浮いていた。
「今のを防いだのか!?」
「なかなかの威力だった。
けど、この程度じゃ俺の盾は砕けない!」
右手にガントレットを出現させ盾を光りの玉へ変えると、ガントレットの穴にはめる夜詩。
「吸収なら俺も得意なんだよ。
片翼の嘆き!」
肩の噴射口から光りの翼が現れ掌に穴が開く。
「バウド、吸収してやれ!」
「グアゥァァァ!」
バウドは頭を下げ肩を突き出す。
「腹壊すなよ!」
巨大な光りがバウドへ伸び、装置へと吸い込まれていく。
「そうだ! バウド吸い付くしてしまえ!」
徐々に光りは消えていき、片膝を突く夜詩。
「はあ…はあ…はあ…」
「ここまでのようだね」
「そうだな」
「!?」
刀磨がバウドの真上に現れ、肩の装置に刀を突き刺す。
「グァウァァァァ!」
「なぜ吸収出来ない!?」
「満腹なんだろうな」
「満腹!?(今の一撃でバウドの限界まで吸収したのか)」
「アリス!」
「吸収出来ないなら思いっきり力を使える!」
アリスの声でバウドが痙攣を起こし横たわる。
「何をしている!
立てバウド!」
「グゥ…し…」
「し?」
「死ね」
バウドの尾がシュタインの体を貫いた。




