第二十八器 受け継ぐ意味
アメリカを離れた刀磨はとある山の頂きにいた。
「剣術を捨てて得た力すら役に立たなかった。
もっと強く…もっと強く!」
両手に刀を持ちがむしゃらに振り回す刀磨。
「みっともない動きじゃのう」
「誰だ!?」
声に動きを止め刀磨は周囲を見渡すが誰もいない。
「こっちじゃ、こっち」
振り向くと老人が一人立っていた。
「何者だ?」
「珍しく人が居たもんでな。
しかしお前さん…弱そうじゃの」
「…そんなに死にたいか?」
刃先を老人に向ける刀磨。
「わしゃもう死んでおる。
器の力で霊として残ってしもうた。
ま、生きとってもお前さんのような半端な小僧には負けんがの!かっかっかっかっ!」
「(器で霊体に…)
やってみるか?」
「そうじゃな。
わしが使うのは指一本にしといてやろう」
「くたばり損ないが!」
刀磨は一瞬で老人の背後に周り込み刀を振るも指一本で簡単に受け止められる。
「!?」
「これが全力なのかのぅ?」
「ちっ!」
両手の刀で連続で攻撃するが老人は指一本で全てを受け止めていく。
「くっ!」
「単調な動きじゃ。
ほれ、隙だらけじゃぞ」
「ぐはっ」
刀を指で弾きそのまま刀磨の腹を一突きして吹き飛ばす老人。
「なぜ剣術を使わん?」
「!?」
「未熟者じゃな…付いてこい」
「どうしてあんたに…」
「強くなりたいんじゃろ?」
「…」
刀磨は老人の後に続き小屋へと入っていく。
「霊なのに家があるのか」
「元々わしの家じゃ。
さて、お前さん名はなんという?」
「…刀磨」
「刀磨か。
わしは源流という武芸者じゃ。
なぜお前さんの刀がわしに通じなかったと思う?」
「霊体…いや能力か?」
「違う。
ただ指に波を集中させただけじゃ」
「波を集中させただけだと?
あんたより俺の方が明らかに波は大きい。
集中させた程度じゃ防げるわけがない」
「確かにお前さんの方が波は大きい。
じゃが刃先に流れる波の量は極僅かじゃ。
わしの波でも余裕で受け止めれる。
それにお前さんは自分の能力を理解しきれておらん」
「理解していないだと?」
「能力者は波を使って力を発動させる。
じゃがその力を最大限に発動出来る者は少ない。
それはなぜか…使う波の量が間違っておるからじゃ」
「波の量が間違ってるだと?」
「ほとんどの者は戦う時に防御や相手の能力の波の強さに応じて変化させておる。
じゃがそれが間違いじゃ。
それぞれの能力には最適な量が決まっておる。
多すぎても少なすぎても威力、強度、範囲と様々なものが弱くなってしまう」
「最適な量…」
「そしてお前さんの欠点は剣術を使わん所にある」
「どうして俺が剣術を使っていないとわかる?」
「お前さんの一太刀一太刀には剣術の影が見え隠れしておった。
じゃが剣術が前に出そうになると無理矢理抑えて動きが崩れる。
それを繰り返す動きなど手に取るようにわかってしまう。
なぜ剣術を隠す?」
「…隠してる訳じゃない。
ただこの能力に合わないだけだ。
刀の原型を留めない武器でどうやって剣術を使う?
刀のない剣術なんか通じない」
「お前さんの剣術は技だけか?
動き、呼吸そして心…お前さんは師匠から何を教わった。
教わった物と違う物に変わってもお前さんの中にある物は何も変わらん。
大事なのは全てを受け入れる気持ちじゃ。
大丈夫、お前さんの師匠は怒ったりせんよ」
「…」
「こんなに自分と自分の剣術を大切に思ってくれる弟子は誇りじゃろうて。
汚すのと埋もれさすのは同じ事じゃ」
「今からでも強くなれるか?」
「努力すればの」
源流へ正座して頭を下げる刀磨。
「よろしくお願いします」
こうして源流による刀磨の修行が始まった。




