第二十二器 過去の傷
ハートネスが黒い球体を掌に浮かべ頭上に投げると四つに分裂し、夜詩達の目の前に落ちる。
「な、なんだこれ?」
「なんか生きてるみたいで気持ち悪いよ」
「でも、ハートネスは心を操る力なのにこれは一体…」
「来るぞ!」
黒い物体は膨れ上がり徐々に人の形へと変わっていく。
「なんで…瞬」
「パパ…ママ」
「サト…リ…」
「くっ!」
夜詩の前には瞬、アリスの前には両親が現れ游の前にはサトリ、刀磨の前には少年が現れた。
「心とは象る事が出来るんだよ。
君達の心の闇に喰われるがいい!」
黒い人型が襲い掛かってくるも、四人は反撃で攻撃を耐え続ける。
「瞬じゃない…分かってるのに…
このままじゃみんなやられる」
「人間は失ったものを二度も失いたくないと思うもの。
君達はもう戦えない」
「なら、お前を斬ればいい!」
ハートネスの背後に突然現れ斬りかかるが、黒い少年が間に現れ手を止める刀磨。
「鞘斗…」
鞘斗は刀磨の腹を蹴り飛ばす。
「弟は斬れないのかな?一度斬っているのにね!
あっはっはっは!」
「くっ…ハートネス!」
「やはり人間の心は醜く。
そして能力者は穢れている」
「穢れている?貴様も能力者なのを忘れたか?」
「分かっているよ刀磨…だから、私自身も能力者だと思うと死にたくなるよ!」
ハートネスは更に黒い物体を空に放つ。
「人の心から生み出された力を使う能力者は穢れそのものだ。
そんなのがいるから…悲しみを生む!」
空に放たれた黒い物体は雨の様に降り注ぎ地面を貫く。
「みんな俺の側に!」
夜詩は大きな盾を掲げそこに駆け寄る三人。
「君の力は知っている」
黒い物体が集まり一本の剣へと形を変え、落下し盾を貫き夜詩の右肩に突き刺さる。
「ぐあっ!」
「夜詩!」
「お兄ちゃん!」
「氷刀・流蒼!」
刀磨が地面に刀を突き刺すと、周囲を分厚い氷が覆う。
「くそっ!強い…」
「やつがここまで強いとは予想外だ。
こっちの弱味も知っている分かなり厄介だ」
「まずは夜詩の止血をしないと!」
「このままでいい」
夜詩は盾を消し、剣を肩から引き抜き立ち上がる。
「刀磨、合図したら俺を外に出してくれ」
「勝算はあるのか?」
「大丈夫…俺は迷わない!」
「分かった」
「断罪の意思」
鎌を手に出し刃を肩の傷口に当て、全身に血の鎧を纏う夜詩。
「準備完了だ」
「行くぞ」
氷の一部が砕け、出来た穴から夜詩が飛び出す。
「一人か。
その姿は報告にあったものだな」
「体験してみるか?」
夜詩は素早くサトリの背後に回り、鋭い爪で体を引き裂くとアリスの両親と鞘斗も倒し、ハートネスに襲いかかる。
「一人忘れてるぞ!」
ハートネスの前に瞬が立ち塞がった。
「瞬…またな」
瞬を引き裂き、ハートネスへ間合いを詰めると体を回転させ、蹴りを腹に当てハートネスを吹き飛ばす夜詩。
「もう姑息な手は通じない」
刀磨達が夜詩に駆け寄ると同時に、ハートネスはゆっくり立ち上がる。
「やはりこれ位やってもらわないとな…」
周辺から黒い物体がハートネスに集まり、笑みを浮かべるハートネスを覆っていく。




