4.女の正体
「少し、話そうか」
連は一瞬言葉に詰まったが、すぐに女に問いかけた。
「お前は…いったい何なんだ?俺の何を知っている?」
女は少し考えた後、屈託のない笑みを浮かべながら答えた。
「結論から言うと…君は人ではないんだ。」
連は驚かなかった。なぜか分からないが、その女が発する異様な雰囲気から、その言葉が嘘ではないと本能的に感じ取っていたのだ。
「お前がこの前言っていた鬼の子というやつか?
だが、俺の両親は人間だ、俺も…人間の…はずだ。」
連は、弱々しく言った。
「自分は人だ、とは断言しないんだね…君も気づいているんだろ?普通の人には、人間の頭部を素手で叩き潰すことはできないんだよ。」
「俺が人ではないなら、俺はなんなんだ?」
女は、少し間をおいて答える。
「鬼の子―というのはあくまで比喩でね、使いやすいから私が使っているだけなんだ。何も、君の親が鬼だと言いたいわけじゃない。君には、鬼の因子―【縁】があるんだよ。」
―縁
聞いたことがない。混乱する連を見つめながら、女は続けた。
「あまり時間がないから詳しいことはまた後で話すが、簡単に言えば、君は鬼の因子に選ばれた人間なんだよ。なんの鬼かはわからないがね。魔のものの因子に選ばれた者たちを、私たちは探していたんだ。」
連は、大きく深呼吸し、女に向き直った。
全て理解できているわけではない。しかし、黙っていて何か変わるわけでもないということくらいは、連も理解していた。
「それで…お前はなんなんだ?」
「私の名前は花山 天狐、君と同じように、因子を持つもの…《九尾の縁》だ。因子を持つもののたちが集う組織、【幻天会】の、副官を務めている。君には、私たちの組織に入ってもらう。」
なにもかもが突然のことで、連は再び混乱していた。
―この前まで普通の日常を送っていたのに
という思いが、連の頭でぐるぐるまわる。しかし、自分のことを知るためには、もうこの女―天狐に頼る他ない。
「理解しきれないことも多いが、話は大体理解できたよ、しかしなぜ、その組織に入らないとだめなんだ?」
「…確かに急な話だったな。君の気持ちを考えず、すまなかった。だが、さっきも言ったようにもう時間がない。へたすれば、君は――死ぬことになるだろう。」
連は、鳥肌が立った。まさか、自分の命を脅しに交渉する気なのだろうか。
連の警戒を感じ取ったのか、女は弁明する。
「あぁ、組織に入らなければ殺すとかそう言う意味じゃない。しかし、君をそのまま放っておけば、近いうちにそうなるという話だ。なぜそうなるかについては―」
突然、女が後ろを振り向いた。そして、少し焦ったような口調で連に向かって言った。
「どうやら、時間切れのようだ。強引な手を使うことになってすまないが…つれてかせて貰うよ。」
「ちょっとまて、どういう―」
女が、パチンと指を鳴らした。
その瞬間、連と女の周囲の地面がひび割れはじめ、地面にポッカリと大きな穴があいた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
女とともに、穴に吸い込まれていく。
連たちが落ちてまもなく、穴は閉じた。
穴が閉じてから数分後、そこには一人の女が立っていた。
白い和服を着た、白髪の女。
「…逃がしたか」
女はそうつぶやくと、煙のように姿を消した。
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