33.互角の攻防
瑞稀が荘安に扉に押し込まれた直後、天狐と紫煙はすでに戦いを始めていた。
「燃えろ!〔狐火灯籠〕!」
「〔臥魍白壁〕!」
天狐の周りに紫色の火の玉が現れ、一斉に紫煙に向かって飛んでいく。紫煙は煙を壁のように自身の前に出して防ぐ。
(やはり…こいつの強みは煙であるがゆえの変幻自在の鉄壁の防御!物理攻撃は通りが悪いな…ならば)
天狐は少し距離を取る。天狐の動きを察したのか、紫煙も自身の妖気を整えて解放する。
「「『因子解放80%』!」」
二人が同時に妖気を解放する。当たりの壁の岩に亀裂が入り、足場が少し揺れる。
「天狐…あんた、いつまで縁たちを匿い続けるのさ」
「……どういう意味だ」
紫煙が、天狐にゆっくりと近づきながら尋ねる。
「ボスが昔言ってたんだが、あんたはもともと……こっち側だったんだろ?」
「私は、そっち側に居たつもりはない…妖怪の力を恐れ、力があるという理由だけで罪なき人間を殺すお前らと、一緒にするな!」
天狐が紫色の炎から槍を作り出し、振り回しながら紫煙に叩きつける。紫煙は煙でその攻撃を防ぐと、煙をらせん状にして天狐に叩きつけた。
天狐は煙に弾き飛ばされるが、すぐに体制を整える。
「でも、平和のためには仕方のないことでしょう?妖怪の力は、適切に管理しなくちゃ……これは、正義のためなのよ」
「そんなものは詭弁だ。私はお前とくだらん話をするためにきたわけではない……〔三幻歪界〕」
天狐の周りが一瞬歪む。だが、それ以外には特にこれといった変化がある様子はない。紫煙は煙の人形を大量に生成すると、天狐の方へ向かわせる。
煙の人形は天狐に向かって持っている刀を振り下ろす。だが、天狐の姿はグニャリと歪み、そのまま消えていった。
「!?……どういうことだ」
次の瞬間、人形が全て切り刻まれて消滅する。咄嗟に紫煙が自分の周りを煙で守る。すると、天狐が何もないところからいきなり現れ、紫煙を斬りつける。
「ほう、感がいいな……だが、油断するなよ。これも、本物の私じゃないかもしれんぞ」
そう言うと、その天狐はゆらゆらと揺らめいて消える。紫煙は、冷静に周りを観察する。
(恐らく…ここは天狐が生成した幻影空間。この空間全域に、天狐の幻が発生する!)
すると、目の前に天狐が何人も現れ、一斉に紫煙に向かって紫の炎の刀を突き立てる。紫煙は殆どのものは煙で防ぎきったが、そのどれもが偽物。
本物の天狐の刀が、紫煙の胸に刺さる。
「……終わりだ、紫煙」
天狐がそう言った瞬間、ボンッ、と音を立てて紫煙の体が煙に変わる。
「…残念、はずれ」
天狐の後ろから、紫煙の声がした。紫煙が煙で拳を作り、天狐に振り下ろす。天狐は間一髪でそれを避ける。
「フフッ。びっくりした?…何も、姿を消せるのは貴方だけじゃないのよ?さぁ、もう一回。〔隠者の奇煙〕」
再び、紫煙の姿が消える。と同時に、天狐の体が何かに殴られて吹っ飛んだ。天狐は壁にぶつかりそうになるが、空中で回転して壁を蹴り、衝撃を感じたところを斬りつける。
姿を現したのは、紫煙ではなく人形だった。
(姿を消すだけではなく、自身が生み出す煙も消せるのか!)
天狐は元いた場所から距離をとり、三幻歪界を解除する。
「〔四解乱術〕!」
すると、紫煙を隠していた煙の術が消滅し、紫煙が姿を現した。
「……驚いたわ、私の術を強制解除するなんて。でも、幻影と同時には使えないようね」
辺り一帯の空気が揺れる。紫煙の体を覆っている妖力が、徐々に増していく。
「もう、油断はしないわ……『降魔解放:白玉華厳義尊宮』」
凄まじい妖気が放たれるとともに、大量の煙が紫煙の周りに渦のように展開される。
「覆え……〔瘴煙大白世〕」
紫煙の周りから凄まじい量の煙が吹き出し、辺り一帯を覆う。
「その煙は視界のほかに妖気探知能力も奪う……さぁ、続けましょうか。〔白蛇の舞〕」
紫煙が天狐を嘲笑うように言う。周りを覆った煙が、蛇の形へと次々と姿を変え全方向から天狐を攻撃する。
(くそ……負担が大きいからなるべく使うのは避けたがったが、ここで奴をどうにかするには……仕方がない)
天狐の周りから、妖気が徐々に湧き上がる。
「『降魔解ほ――』」
天狐が降魔解放をしようとしたその時だった。天狐の頭に、大きい声が響く。
『皆聞いて!この試練の攻略方法がわかったよ!』
それは、瑞稀の声だった。
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