↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔の子たち  作者: ひら
第二章 天の岩戸の試練

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/35

32.瑞稀の閃き

 瑞稀が、扉から飛び出す。突如出現した老人の術で扉に押し込められてしまった瑞稀は、天狐たちがいる少し上の階層の扉に飛ばされてしまった。


 「くっそ~。油断した!」


 瑞稀が出てきた扉から、先ほどの老人が現れる。

見れば見るほど不気味な、ニヤニヤと笑う老僧。しわがれた声で瑞稀に話しかける。


 「油断したなぁ…小娘……これで、分断は成功じゃ。後はゆるりと――殺せば終わる。捻り潰せ、〔黒き腕(くろきうで)〕」


 老人は、足下から黒い腕を何本も出現させる。腕は滑り込むように瑞稀の足を掴む。


 「なめんな!」


 瑞稀は足に妖気を纏わせると、体を捻って回転させ腕を捻じり切る。しかし、腕は次から次へと瑞稀の方へと向かって来る。


 「そっちこそ舐めるでないぞ小娘。その程度で儂の腕が防げるか…」


 瑞稀は距離を取ると、黒い手が追ってこれないように角を走り抜ける。しかし、老人は自身が生み出した手の上に乗り、高速移動をしながら瑞稀を追いかける。


 「手の大きさは自由自在ってわけね。いいわよ、やってやるわ…『因子解放70%』!」


 「ホッ!儂もやったほうがよいな……『因子解放75%』」


 老人と瑞稀が、同時に因子解放を行う。


 「いくよ…!〔芭蕉扇(ばしょうせん)〕!」


 瑞稀の手に、大きな団扇が現れる。瑞稀がそれを一振りすると、突風が発生し老人の周りの腕の一部を消し飛ばした。


 「なるほど…そこそこの威力。油断はできんなぁ…〔閉明祟(へいみょうた)臨獣(りんじゅう)〕」


 老人の影から、モゾモゾと巨大な黒い何かが這い出てくる。それは、四本の足に六本の腕を生やし頭がなく胸の部分に四つの穴が空いている化け物だった。

 化け物が、瑞稀の方に腕を伸ばす。化け物の腕は伸縮自在のようで、先ほどの腕よりも太い。瑞稀は思いっきり殴られ、壁の方に飛んでいった。


 「拍子抜けじゃのぉ…ここまで弱いのか。もういい、とどめを刺せ」


 化け物が、瑞稀に向かって突進する。瑞稀は壁から立ち上がると、芭蕉扇に妖気を集中させる。


 「はぁぁぁ…!〔嵐天牙突(らんてんがとつ)〕!はっ!」


 瑞稀が思いっきり芭蕉扇を振るう。すると、瑞稀の前に巨大な風の渦が現れ、突進してくる化け物を粉砕した。


 「どうだ!見たかこのやろー!」

 

 崩れていく化け物を、老人が静かに見つめる。


 「……先程の発言は撤回しよう。お主強いな、名は何という」


 「あーしの名前は嵐辻瑞稀!私の仲間は、殺させないよ!」


 瑞稀が老人に向かって叫ぶ。老人は目を見開きにやりと笑う。


 「カカッ!こんなに心躍るのは何時ぶりかのぉ。…儂も名乗っておこうか。第三師団団長補佐、小黒 荘安(おぐろ そうあん)。さて、ゆくぞ。『降魔解放:黒輪弄教(こくりんろうきょう)大僧正(だいそうじょう)』」

 

 黒い液が渦を巻いて荘安を包み込む。やがてそれは卵のような形になり、粉々に砕け散った。中から現れたのは、背後に黒い円が浮かび、額には黒い目の紋が現れた禍々しい姿となった荘安だった。


 荘安が合わせていた手を片方瑞稀に向ける。掌には、額にあるものと似たような目が浮かび上がっていた。瑞稀が咄嗟に避けようとするが、瑞稀はその場から動くことができなかった。瑞稀の手から、芭蕉扇が落ちる。


 「〔戒告の邪眼(かいこくのじゃがん)〕…動けんじゃろ?妖力も動きも全て動かせんはずじゃ。儂は《黒坊主の縁(くろぼうずのえにし)》でのぉ、影を操ることができる。この目に見られたものは、影を縛られそ(・)の(・)場(・)か(・)ら(・)一(・)切(・)動(・)く(・)こ(・)と(・)が(・)で(・)き(・)な(・)く(・)な(・)る(・)。さらに…」


 荘安が指を動かす。すると、瑞稀の腕が勝手に動き自らの首をきつく絞める。


 「な…に、これ…」


 「縛った影も自由自在じゃ…どうかの?普段自分についてくる、自分の影に支配される気分は」


 瑞稀の首にかかった手の力が徐々に強まる。


 (まずい、意識が………!)

 

 意識が消えかける瑞稀は、この状況を打開させるために頭をフル回転させる。そして、一つの違和感に気づいた。


 (あの荘安とか言う老人…さっきから手(・)を(・)私(・)に(・)向(・)け(・)た(・)ま(・)ま(・)動(・)か(・)そ(・)う(・)と(・)し(・)な(・)い(・)…普通、動けない相手ならそのまま自分でとどめを刺せばいい…もしかして……!)


 瑞稀は体内にある妖気を顎に集中させる。瑞稀は今、妖気を放出することはできない。しかし、体の一箇所に集中させることによって、一部分のみ操作を打ち破ることに成功した。


 「扇げ!!芭蕉扇!!」


 瑞稀の手から落ちた芭蕉扇が、ひとりでに持ち上がり荘安に向かって風を扇ぐ。荘安が咄嗟に影から出現させた腕で防ぐ。荘安が防いだ瞬間、瑞稀の体の支配が解ける。


 「なるほどね!あんたの能力の発動条件は、相手の影を縛るとき相手に自分の手を向け続けなきゃならない!おまけに、その影の手とかも使えないんだろ!だからこうして、相手の手を動かせれば解けるってことだね!」


 体制を立て直した荘安が、嬉しそうに邪悪に笑う。


 「それがどうした!また縛れば、それで終わりだろう!」


 動けるようになった瑞稀は、荘安が自分に手を向ける前に吹き抜けから別の階へ風に乗って飛んで行く。


 「逃さぬ……!」


 荘安も自身を影の手の上に乗せ、瑞稀を追う。


 「空を飛べば、拘束されぬと思うたか!甘いわ!」


 荘安は、自身の周囲からいくつもの影の腕を出現させ、空を飛んでいる瑞稀に向かって次々に伸ばしてゆく。瑞稀は機敏な動きでそれらを次々かわしながら異なる階層を出たり入ったりしていた。


 (はやく…はやく当たりの扉を見つけないと!)


 瑞稀は様々な階層を周り、腕を風で吹き飛ばしたりかわしたりしつつ攻略のヒントを探し回る。

 すると一瞬、目の端に見覚えのある模様が見えた。急いで旋回し、腕をかわしつつ扉の模様をしっかり見る。

 その瞬間、瑞稀の頭に電撃が走る。


 (これは……もしかしたら!)


 急いで、瑞稀はその階層の入り口に向かう。そこには、英文でこう書かれていた。


――『Ursae Majoris』


 (やっぱり!だとすると…どこかの層に、もう一つあるはず)


 瑞稀はスピードを上げる。大急ぎで階層ごとの入り口に書かれている英文を読み上げる。


 「なんじゃ、さっきから逃げてばかり…戦わんのかぁ!?」


 荘安が背後に迫る。いくつか階層を下ったとき、瑞稀の目に、ある英文が止まる。


 (あった!!これで試験はどうにかできる。何より、もう遠慮する必要も……ない!)


 瑞稀は、一気に上に上昇する。ぐんぐんと上昇していき、一気に最上階まで突き抜けた。最上階につくと、瑞稀は地面に着地、それとほぼ同時に荘安も追いつく。


 「どうした…?降参かね?」


 瑞稀息切れをしながらも、荘安を見ながらフッと笑う。


 「逆だよ…加減する必要がなくなったの。『降魔解放:断凰風姫(だんおうふうき)』」


 瑞稀の周りに突風が巻き起こる。妖気が背中に集中し、緑色の羽を形成する。巻き起こる風で周囲の壁や扉、自分の衣服の一部が風化し、ボロボロと崩れていく。


 「…降魔解放できたのか。なぜ、隠しておった」


 荘安が、怪訝そうに尋ねる。


 「なにも、隠していたわけじゃないんだ。ただ、あーしの降魔解放は攻撃範囲が広いんだよね。うっかり当たりの扉を壊したりしたらだめでしょう?」


 「……ということは、あたりは見つかったようじゃのぉ」


 荘安が、ニヤニヤしながら瑞稀に尋ねる。瑞稀が、自身の妖気を弓の形にする。


 「おじいちゃん。この状態のあーしは手加減ができない……降伏するのを勧めるよ」


 荘安が、目を見開きながら大笑いをする。


 「カカカッ!笑わせるな小娘!……降魔解放ができるヤツと戦うのは何百年ぶりか。引くわけがなかろう!」

 

 荘安が妖気を一気に解放する。自分の周囲から一気に黒い腕を出現させ、それを一つに固める。それらは徐々に、門の形を形成していった。


 「〔永獄暗縛(えいごくあんばく)大牢門(だいろうもん)〕…儂の最大奥義だ。この中に引きずり込まれたものは、永劫闇の中で死ぬこともできず永遠とさまよい続ける。いくぞ――開門!」


 門が勢いよく開き、内側から数百本の腕が一気に伸びる。瑞稀は真っすぐと前を見据えながら、弓矢を作り出して構える。


 「わかった……あーしも、全力でいくよ。〔風魂一閃(ふうこんいっせん):疾風弓(はやてのゆみ)〕」 


 決着は、一瞬だった。


 瑞稀が、矢を放つ。瞬間、凄まじい妖気同士の衝突で辺り一帯に妖気の渦が一瞬巻き起こり、波のように周囲に放たれる。


 渦が消えたとき、荘安の降魔解放が消えた。瑞稀の放った矢は、荘安の繰り出したわざを貫通し、荘安の胴体の右半分消し飛ばしていた。


 「…………見事」 


 荘安は、最初は驚いたような表情をしていたが、すぐににやりと笑うと、最後に瑞稀を称賛しながら倒れ込み、息絶えた。


 瑞稀は、倒れた荘安の前に座り、手を合わせる。


 (戦いが終わったからって、全てが終わったわけじゃない。わかったこと、皆に伝えなきゃ!)


 瑞稀は立ち上がると、急いでその場から立ち去っていった。

  

 


 

  

 

 


 最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!感想やご意見があれば、ぜひとも書いて頂けると嬉しいです!


 星の評価、ブックマーク、リアクション等、作者のモチベーションに繋がりますので、やっていただけると嬉しいです!


 今後とも応援、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。