30.侵入者
一通り探索し終わって、皆で入り口に戻る。集めた情報を整理すると、どうやらこの空間は一本道とそれぞれ左右に分かれ道が二本ずつあり一階層ごとに四十八個の扉がある。
そして階層はすべてで四十八階層あり下の層から吹き抜けになっている。それぞれすべて似たような構造だった。扉には、ドアプレートに点と線からなる謎の模様が刻まれていた。
また、各階層は階段で繋がっていたいるのだが階層をまたいだ新しい階層の入り口に、それぞれ英文で何かが書いてあった。
八戒に、扉に入るのを試してもらった。扉に入るとランダムに別の扉に飛ばされ、一度入って閉じた扉は二度と開けることができなくなるという仕組みだった。
「つまり、熊の尾→弓の順番で当たりの扉にはいらなけりゃならんってことか」
八戒が疲れたようにぼやく。瑞稀は、戻ってきてからずっと何かを考えているようだ。
「瑞稀さん。どうかした?」
「ん、連っち。んーなんかなぁ。階層またいだどこに書いてある英文、ど〜っかで見たことあるんだよね。あと連っち、私も八戒と同じで敬語苦手だから敬語じゃなくていいよ」
瑞稀が頭をぐねぐねしながら思い出そうとしている。
「そうか…思い出したら教えてくれ。ひとまず、ざっと探索はしたが各階層の細かいところまで見たわけではない。今から二人一組で詳しい探索をする。……いいか?くれぐれも一人で行動するなよ?」
天狐が八戒と瑞稀に念を押す。天狐と瑞稀、八戒と連に分かれて各階層を見て回った。
連は八戒と下の方の層を探索していた。
「なぁ、連。この扉についてる模様なんだが…なにに見える?」
八戒が連に尋ねる。
「ん〜なんだろう。点と線…なんか見たことある気はするんだけど…」
「だよな。…俺はお手上げだ」
八戒が疲れたように言う。
「これもういっそ、片っ端から入っちゃだめなのか?」
「多分やめといたほうがいいな。万が一正解の扉を順番逆で入ったら詰みだし」
「だよなぁ〜。でも、急がんとな」
「そうだな。八戒は修羅の連中と戦ったことはあるのか?」
連が扉を調べながら、八戒に尋ねる。
「そりゃある。俺だってなかなか古株だからな。仲間が殺されていくのを何百年と見てきた。いつだって、友達が死んでいって自分だけ生き残るのは嫌な気分になるもんだ」
八戒が、真面目な顔をしながら話をする。連だって、明香や千歌、天狐や八戒など親しくしてきた人たちが次々死んでいくのは耐えられない。八戒は、これを何百年と繰り返してきたのだろう。
「まぁ、そんな暗い話はいい!俺は必ずお前や皆を守るさ!ガッハッハ!」
暗い空気を吹き飛ばすように、八戒が大声で笑う。
「…そうだな」
連も、八戒と同じ様に誰かを守っていきたいと感じていた。
八戒と談笑しながら歩いていると、後ろからお〜いと呼ぶ声がした。
「お〜い!」
見ると、後ろから瑞稀が走ってくる。八戒が瑞稀に向かって叫ぶ。
「ん!?なんだ、瑞稀か?一人で行動するなって言われてただろう!?」
「ごめんごめん!天狐さんに読んで来いって言われて。それより、すごい発見があったんだ!連と八戒も一緒に来てよ!」
「え!?まじか!」
連は瑞稀の方に走っていく。だが、ふと後ろを見ると八戒は立ち止まったままだ。
「どうしたんだ?八戒」
八戒が急に真顔になって瑞稀を見つめる。
「なぁ瑞稀、思ったんだがよ。さっき天狐は単独行動はするなって言ってたよな。重大な発見があったなら、天狐も一緒に来るんじゃないか?」
言われてみればそうだ。連は瑞稀の方を見る。
「それが…諸々事情があって、天狐さんは今動けないんだよね…とりあえず、一緒に――」
「動くな!!」
八戒が聞いたこともない様な声で怒鳴る。
「まぁそれだけならまだ疑わなかった…だがよ、俺と瑞稀は長い付き合いだ。あいつは天狐のことをさん付けで呼ばないし、何より俺と連のことも呼び捨てでは呼ばない…少なくとも、俺に対してはここ数百年な……………お前、誰だ?」
瑞稀の笑顔が消える。そして、にやりと笑う。
「――なんだ、バレちゃったか」
少年の様な声がした。
「っ!?連、そこから離れろ!!」
八戒が叫んだ束の間、瑞稀の姿をした何かが連をがっしり掴んで連れ去ると、吹き抜けから下まで飛び降りた。
「クソっ!!」
八戒が追いかけようとする。しかし、見えない何かに弾き飛ばされた。
「ヒヒヒ…君の相手は…僕だよォ」
じわじわと姿を現したそれは、八戒にとっては見知った顔であった。これまで、幾度となく見たことのある顔。過去何百年間、仲間を食い荒らし殺してきた―――
「貴様……乱童ぉ!!」
乱童は、懐から二枚刃がついた刃を取りだし、殴りかかってくる八戒の拳を受け止める。轟音と共に、粉塵が舞った。
―――――――――――――――――――――――
上の階を探索していた天狐たちが、異変に気づく。
「今の声…八戒?」
ズンッと重い音が下から聞こえる。下を覗こうとしたとき、大量の煙が下から這い上がってきた。
「瑞稀!下がれ!」
天狐が瑞稀を後ろに下げる。煙は天狐たちのいる階に来ると、内側から二人の男女が現れた。
一人は紫煙、もう一人は黒い法衣を纏った身長の低い老人だった。
「……紫煙、今回は本体のようだな。よくも前回は偽物を掴ませてくれたな」
天狐が紫煙を睨みつける。
「そうねぇ、今回はちゃんとした任務だもの……じゃあ斗賀、そっちの女は任せるわ。私は、天狐をやる」
「了解…」
老人は、自身の影から手の様なものを出現させ、瑞稀を近くにあった扉の中へ押し込む。と同時に、老人自身もその扉の中に入っていった。
「…分断成功ね。今頃、酒呑童子のところにも私の煙で潜伏した私の仲間が向かっているわ。私たちの勝ちね」
天狐が、紫煙のほうを向いてふっと笑う。
「お前ら、舐め過ぎだな。連も着実に強くなっている……強いぞ?私の仲間は」
紫煙も面白そうに笑うと、煙を生成して天狐の方へ放つ。天狐も妖気を解放して煙をはじき飛ばす。
戦いが、始まった。
㊗️三十話!
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