28.第一の試練
連たちは、天の岩戸の中にある巨大な門の前までたどり着いた。
「……これ、どうやって開けるんだ?」
連が呟く。門の大きさは、学校の校舎ほどの高さがあり、少し押してもびくともしない。
「試練の参加者が手を門に当て、妖気を流し込むと開く」
天狐が説明する。天狐の言うとおりに四人で門に手を当て、妖気を流し込む。すると、門が鈍い音を立てて開き始める。門の先は巨大な石造りの廊下になっており、冷たい空気が流れ込んでくる。
「さっきも言ったが…恐らく、私が前に来たときと試練内容が違う。何が起こるかわからない、ならべく固まって動くぞ」
天狐が先導する。全員が入った途端、門がものすごい勢いで閉まった。
薄暗い廊下を進む。暫くすると、小さな扉が目の前に現れた。
「これは……」
「これが、第一の試練の場所だ」
第一ということは、他にもいくつか試練があるのだろうか。
「試練っていくつあるんだ?」
「ここでの試練は全部で3つ。それぞれの部屋をクリアすると前へ進めるシステムだ。ちなみに、この空間では腹が減るとかはないが時間の進みは外と同じだ。要するに、あと一ヶ月がタイムリミットだな」
「…そんなかかるのか?」
「私は前回何人かで来たが、そのときは二週間ほどだったな」
どうやら、試験内容はかなり難しいらしい。だが、他の三人を見ていると、この人たちとなら何でもできるという気がしてくる。
「さて…じゃあ、いきますか!」
連たち四人が扉の中に入る。次の瞬間、連たちは眩い光に包まれた。連は、咄嗟に目をつぶった。
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光が、徐々に弱くなっている。連は、少し目を開ける。そこは、扉の中とは思えないほど広大な石の広場であった。周りには大小様々な石片が浮き、何本もの石柱がそびえ立つ。
「これは…すごいな。はっか―」
連が周りを見渡す。しかし、誰もいない。
「は……みんな、みんなどこだよ!?」
急いで、広場の周りを探し回る。
「天狐!八戒!瑞稀さん!みんな、どこいったんだよ!」
力の限り叫ぶが、返事が返ってくることはなかった。連は疲れ果てて、元いた扉の前に来る。戻ろうか少し迷ったとき、聞き慣れない声が響いた。
『孤独に渡る、修羅の道。挑む者よ、力を示せ』
女の声だった。連が、あたりを見渡す。次の瞬間、連の足元に弓が飛んでくる。連は、慌てて石柱の影に隠れる。
弓矢が飛んできた方向を見ると、そこには首のない祭服を纏った何かが、弓矢を構えていた。すると、上の方から嫌な気配がする。慌てて上に向かって盾を出現させる。刀と金棒を持った、弓矢を撃ってきたのと同じようなものが二体、上から振ってきた。
「なんだっ…これ…」
間一髪で防いだ連は、咄嗟に飛び退いた。すぐさま金棒を作り出し、首のない人形(?)のようなものに殴りかかる。金棒を持った人形は、体が粉々になり消滅した。しかし、もう一体の人形はメキッと音を立てて吹っ飛んだが、すぐさま立って攻撃を仕掛けてくる。
(こいつ…打撃が効かないのか!?)
剣を持った人形の猛攻を防ぐので手一杯な連に、もう一体が横から弓矢を飛ばしてくる。連は咄嗟に、盾で防いだ。連は金棒と盾で応戦しながら、隙を見て石柱の影に隠れる。
(くそ…このままじゃジリ貧だ…何か…打撃が無理なら、斬撃はいけるか?)
連は、財前の話を思い返す。連は、暴走した時の具体的な話を財前から聞いていた。その話によると、暴走中の連は金棒ではなく刀やノコギリなど多種多様な武器を使っていたという。
(叩き潰すイメージじゃなくて、切るイメージ!それが俺の力なら、できるはずだ)
連は呼吸を整え、金棒の形を変える。鋭く、硬く、薄く…金棒は徐々に、刀の形になっていった。
「よし!」
連は一気に石柱から出ると、剣を持つ人形を斬りつける。人形は真っ二つになったあと、消えていった。
(一体撃破!残るは…)
弓矢を構えているやつを探す。すると、上の方から弓が放たれて、地面に突き刺さる。連は一気に跳躍すると、思いっきり人形に対して刀を振りかざす。しかし、刀は人形の体に少し食い込むだけで弾かれてしまった。
(どういうことだ?斬撃が正解じゃないのか?)
連は人形を観察する。すると、あることに気がついた。
(さっき、金棒で襲ってきた奴は金棒で、刀を持った奴は刀で倒せた。ひょっとして、あいつらが持ってる武器で倒すのが、正解なのか?)
連は、試しに弓矢を作ってみる。刀でのイメージのおかげで、さほど時間はかからずに作れた。
連は石柱の上にジャンプすると、人形相手に弓を構える。
「くらえ!」
連は人形に向かって弓矢を放つ。ところが、弓は全然飛ばずに途中で落ちた。向こうの人形が弓を放ってくる。
「なんでだよぉ!」
連は、またしても石柱の影に隠れる。最初はなぜかと思ったが、よく考えれば当然のことだった。連は修行を受けたとはいえ、それは単純な格闘技や妖気を使った戦い方の修行であり、金棒以外の武器を扱う修行はしていなかったからだ。刀は力任せに振るだけで何とかいけたが、弓矢は違う。
(さて、どうする?)
恐らくあいつには弓矢しか効かないだろう。クロスボウでも作れたらよかったが、連はクロスボウの構造を知らない。イメージできないものは作ることができなかった。連は考えた末、一つの考えが浮かんだ。
(これなら…いけるか?)
連は石柱の上に再び飛び乗ると、盾を構えて突進する。人形は矢を乱射するが、連の盾を貫通することはできない。連は人形のそばまで駆け寄ると、矢のみを生成した。
「弓矢で死ぬなら、何も弓で矢を撃たなきゃいけないわけじゃないんじゃねぇか?」
連は矢を直接人形の腹の部分に突き刺す。人形はボロボロと崩れていった。
「っっしゃぁぁぁ!」
連が喜びで叫ぶ。
「しっかし…俺もなかなか強くなってきたな!さて、これで試練は終わりか……?」
連は、扉とは逆方向にある壁を見る。しかし、扉らしきものは特に何もない。
「どういうことだ?まだ終わりじゃないのか?」
連が呟くと、またも連のいる石柱に弓が飛んでくる。連が周りを見渡すと、今度は十体ほどの人形が、連の周りを取り囲んでいた。
「おいおい…まさか…これ、無限か?」
顔が引きつる連を嘲笑うかの様に、人形は連に武器を向けた。
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