25.鬼神
空気が震える。ヒトバシラ二柱の因子解放により、尋常ではないほどの力の渦が周りには発生していた。道場の扉が蹴破られ、天狐たちや他の組員らがなだれ込んでくる。
「財前!…これは、どうなっているんだ?」
財前が連の攻撃を相殺し、弾き飛ばす。
「すまない。事前に話しておいた通り、連くんの力を少し覚醒させるために同じ鬼系統の因子を持つ空条に手合わせをさせてみたんだが。……結果は見てのとおりだ」
天狐が、連の方に目を向ける。
「暴走してるな。やはり凄まじいな…財前、一人で止めれるか?」
「まぁ…止めればするだろう。少し手荒にはなるが、天狐は他のみんなを避難させてくれ」
「わかった!」
天狐が急いでその場を離れると同時に、連が再度咆哮をあげる。連の手にあった刀が変型し、巨大なノコギリのような形になった。
(連が正気のときは、あれは金棒だった。おそらく連の力は、自分の妖気を望む形に錬成する力!それに加えて、今は鬼が基本持つパワー強化が加わった形か)
「空条、いけるか?」
財津が、そばに倒れていた空条に話しかける。
「えぇ…いけやす!」
財津が根性で立ち上がる。胸からは血が噴き出すが、お構いなしだ。
「空条、10秒だ。10秒稼げ、その後は俺がやる」
「合点!」
空条が財津の前に立ち、刀を周りに出現させ一斉に連に向かって放つ。連はノコギリのような得物を振り上げると、凄まじい速さで振り回しすべて叩き落とした。
「儂の〔兵仗乱舞〕、さっきは本当に殺しかねないんで使いやせんでしたが、こんな使い方もあるんでやすよ…〔兵仗乱舞『銃砲』〕」
空条の周りに、大量の散弾銃やライフルといった銃が現れる。
「儂の〔兵仗乱舞〕は、儂が使ったことのある武器を大量召喚する能力!刀だけじゃないでやす……喰らえや!」
大量の銃口から、連に向かって一斉に銃弾が放たれる。連は凄まじい咆哮を放ち、銃弾をすべてはじき飛ばすと、目にも留まらぬ速さで空条のそば駆け寄り、ノコギリで銃ごと切り捨てた。
「……よくやった、空条」
財津が、空条の前に出る。
「後は俺がやる〔牙閣狸縛縄〕」
連の周りに四角い陣が浮きでると同時に、帯のようなものが連の体を拘束し、そのまま檻に閉じ込める。しかし、連の力によって徐々に檻に響が入って来ていた。
「80%の僕の拘束をここまで壊せるか、流石は酒呑童子ってとこだな。………しかし、想定内。〔天鎖万獄大戒林〕!」
連の周りに円状に新たにいくつもの柱が降ってくる。柱から、何本もの鎖が連の拘束されている檻に巻き付くと柱と柱の間に結界が張られる。連の咆哮が聞こえなくなったら、
「……拘束完了」
財前はそう呟くと、空条の傷を癒しながら天狐に電話をかけた。
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財前に呼び戻された天狐たちが、武道場に戻ってきた。武道場の中央には、巨大な封印結界がある。
天狐が結界を見ながら、財前に尋ねる。
「…財前、連は………」
「術で拘束して、結界で封じた。暫くしたら、元に戻るだろう。……部屋で話した通り、空条は《鬼童丸の縁》。酒呑童子にかなり近い部類の縁だ。空条と戦うことで、少し覚醒することを狙ったんだが……暴走してしまった。すまない」
財前が、天狐に頭を下げる。
「いや…認知した上で止めなかった、私にも責任はある。しかし、あそこまでの力とは」
「もう少し力を行使していたら、自らの力で自壊していただろう……もうそろそろ大丈夫そうだ」
財前が、連の封印された結界に手を当てる。封印にヒビがはいり、一気に崩れた。なかにいた連が、床に倒れ込む。
「あれだけあった傷が、すべて塞がっている…儂のような鬼系は治癒力が確かに高いが…これほどまで…」
財前の手当を受けた空条が、連に駆け寄った。後を追うように、天狐や他の皆もも連のそばに行く。
「連…とりあえず、無事なようだな」
「あーしと八戒は連っちを部屋に運んでくる!」
八戒と瑞稀が、連を部屋に運ぶ。他の組員も、それに続いたため、部屋には財前と空条と天狐の三人のみが残った。
「それで…天狐よ。おそらくこれで、連は降魔解放の習得ができるようにはなるが…できるならば、少し予定を前倒しさせて習得させたほうがいい」
財前が、厳しい顔をしながら天狐に話しかけた。
「なぜ?」
財前が、指をパチンと鳴らす。すると、財前のそばに中学生ほどの少年が現れた。
「こいつは、久我 一重。主に、修羅に対する斥候をしている者だ。一重」
財前が久我に合図を送ると、久我は天狐に対して話し始めた。
「ここ最近の修羅の動きで、新しい情報が入りました。どうやら、前回の襲撃の目的は偵察だったようです。連くんの力が覚醒しかけだとわかった今、修羅は一カ月後、幻天会、百鬼組に向けて五つの師団全軍を侵攻させる予定のようです。おそらくですが……全軍を率いているのは、元帥かと」
「なっ……!」
天狐が絶句する。以前の襲撃の目的が連であった以上、いずれ来るだろうというのは予測がついていた。だが、いくらなんでも早すぎる。その上天狐には、想定外なことがもう一つあった。普段修羅は一団ずつの行動で、纏って行動するとしても二団が殆どである。それが全軍同時に動くなど、前代未聞であった。
(それに、元帥だと!?奴はここ数百年、姿を見せてはいないはずだ!)
説明が終わり、財前が再び話し始める。
「僕ですら見たことがない修羅の元帥。それがこのタイミングで出張って来たんだ…それだけ、連くんは連中にとって大きい存在なんだろう……天狐、気をつけなよ」
そう言うと財前ら三人は部屋を後にする。武道場に残った天狐は、黙ったままその場に立ち尽くしていた。




