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魔の子たち  作者: ひら
第一章 力の目覚め

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16.本拠地襲撃③

 右京が敵と邂逅したのとほぼ同時刻、他の四人もそれぞれ敵と向かい合っていた。




 「軟弱…実に軟弱っ!幻天会といっても所詮この程度なのか…実にがっかりだ!」


 男はそう叫ぶと、辺り一面に雷を落とした。27区域にて敵と邂逅した千歌は、雷を避けながら防戦一方になっていた。


 「うっさいわね!あんたゴロゴロピカピカウザイのよ!…〔不知火の武者〕!」


 千歌が召喚した〔不知火の武者〕を男は雷で粉々にする。


 「どうやら君はここまでのようだな…面白いものを見れるかと思って遊んでやっていたが、がっかりだ!そろそろ決着をつけてやろう。『因子解放60%』!」

 

 透の体が雷を纏い、辺りに放出している。雷の弓矢を創生し、千歌に向けた。


 「最後に名前くらいは教えといてやろう…《雷獣の縁(らいじゅう えにし)》、雷電 透(らいでん とおる)だ。さぁ、喰らえ…〔雷轟の剛弓(らいごう ごうきゅう)〕!」


 「舐めんじゃないわよ!〔円天炎壁(えんてんえんへき)〕!」


 千歌が張った障壁を、軽々と雷の矢が貫く。


 「がぁっ…」


 雷の矢の直撃を受け、千歌は倒れ込んだ。


 「実に弱く脆い…まさか因子解放すらできないとは…哀れだ、だが安心しろ、すぐに息の根を止めてやる」


 倒れ込んだ千歌がプルプルと腕を震わしながら体を持ち上げた


 「フフッ…もう…勝った気でいるのね」


 ボロボロに倒れ込んだ千歌を見て、透が鼻で笑う。


 「この状況では、逆に負ける気がしないというものだが…下らん負け惜しみは自分の格を下げるだけだぞ…?」


 千歌がフッと笑う


 「ウチはね…因子解放ができないわけじゃないのよ…ただ、馴染ませるのに時間がいるの。ウチ、他のメンバーに比べると若いしね…貴方は確かに強い。でも驕りが過ぎたわね。…もう終わったわ。…『因子解放60%』」


 千歌の体から炎が吹き出し、額から炎の角が生える。両腕には炎の輪が展開された。


 「それが君の因子解放か…だが、そんなボロボロの体でどうするつもりだ?君が今から何をしようとも…僕の勝ちは揺るがない!!」


 透はそう叫ぶと、手で因を結んで千歌に向けた。


 「終わりだ!〔雷轟殲滅砲(らいごうせんめつほう)〕」


 「ウチも全力でいくわ…〔火華金剛円斬(かかこんごうえんざん)〕!」

 

 透が放った雷と、千歌の放った炎がぶつかり合い炸裂する。周りには土煙が舞った。土煙が晴れたとき、そこには二人が向かい合って立っていた。


 「…ちくしょう」

 

 ドサッ

 倒れたのは透だった。そばには、血まみれになった千歌が立っている。千歌はそのまま、フラフラになりながら戦っていた部屋を出た。


 (あぶ…なかった…早く…他の…み…ん)


 千歌は壁にもたれかかると、そのまま気を失った。


 

 ―――――――――――――――――――――

 35区域。糸川 うららも、敵と接戦を繰り広げていた。


 「はじめまして。《鎌鼬の縁(かまいたち えにし)》風斬 凛(かぜきり りん)だ。よろしく…なっ!」


 ヒュッ

 風を切るような音がしたあと、うららの後ろの壁に大きな亀裂が入った。うららは、すぐに凛に攻撃を仕掛ける。


 「私っ、こそっ、はじめましてっ!糸川 うららだよっ!」


 うららは風のような斬撃をかわしながら攻防を続けた。


 (こいつの能力は多分風を斬撃に変えて放つ能力!だけど妖気に集中すれば避けれないことはない!)


 斬撃を放った隙を狙い、うららがキックを側頭部に入れる。凛は吹っ飛んで壁に激突した。


 「…なるほど。君、強いんだね。油断できないなぁ…妖気の感じからして透もやられちゃってるし。そろそろ本気出すね!『因子解放65%』!」


 凛の両手に緑色の鎌のようなものが生成される。


 「因子解放した私の風の斬撃はほとんど何でも切れる。岩だろうと鉄だろうと…空間だろうとね」


 (なるほど…この本拠地に侵入できたのはあなたの能力ってわけか)


 うららは手から糸をだし、凛を捕えようとするが、細切れにされてしまう。

 

 「こんな糸じゃ、ボクは捕まえられないよ!」

 

 (なるほどね…疲れるけど、やっぱやるしかないかぁ)


 「…『因子解放70%』」


 うららの体から妖気が吹き出し、背中から八本の蜘蛛の足が生えた。


 「へぇ…君も因子解放できるんだ。なんの縁なんだい?」


 凛が楽しそうにうららに問いかける。


 「私は《女郎蜘蛛の縁(じょろうぐも 縁)》…そろそろ終わらせるよ」


 「終わらせる、ねぇ…?さっき見ただろ?君の糸じゃボクの風には敵わないってさぁ!わかってないな…教えてやるよ!〔風断大竜巻(かぜたちおおたつまき)〕!」


 うららの足元から巨大な竜巻が発生する。


 「因子解放状態のボクが作る最大の竜巻だ!触れるもの全てをきり刻む!細切れになっちまえ!」

 

 凛は完全に勝利を確信し、この場から離れようとしたが、違和感に気づいた。


 (体が…動かせないっ…!)


 よく見ると、体中に糸が巻き付いている。じっくりと見ないと気づかないような、極細の糸。


 「…ようやく気づいたみたいね」


 竜巻の中から声がする。凛が慌てて振り返ると、竜巻の中から白い糸の塊が出てきて、塊の中からうららが現れた。


 「バカな…全てを切り裂く竜巻だぞ!何で糸が切れてない!」

 

 凛が焦ったように叫ぶ。


 「これは〔万層糸卵(ばんそうしらん)〕。全てを切り裂くあなたの竜巻は、とても恐ろしいものだったけど…今の私はほぼ無限に糸が出せる。貴方か切る速度より私が糸を出すほうが速かっただけよ」


 うららはそういうと、糸を大量に凛に巻きつけた。

 

 「クソっ、こんなものっ!」



 凛は風を出し、糸を切ろうとする。だが、竜巻で既に妖気使い果たした凛に、糸を切ることはできなかった。


 「さて…捕獲完了っと」

 

 糸を切るのを諦めた凛を見て、うららが呟いた。うららが凛に問いかける。


 「ねぇ…貴方たちは何が目的だったの?」


 凛が嫌そうな顔をしながら顔をしながら答える。


 「知るかよ…人探しとは聞いているがな。聞きたいなら団長に聞くんだな…今ここに、来てるからよ」


 ―――――――――――――――――――――

 「怖い…怖い…怖いねぇ、恐ろしいねぇ…!」


 58区域では、海堂 一心が敵と邂逅していた。


 (なんだこいつは…こっちからの攻撃が当たらない…?)


 一心が攻撃を繰り出しても、なぜか間一髪のところで当たらない。向こうからの攻撃は避けられるが、なかなか勝負がつかず長期戦になっていた。


 「恐ろしい、悍ましい…戦いっていうのは…とても怖いものだねぇ…」


 敵は常に怯えたような様子で攻撃を仕掛けてくる。

 

 (さて、どうするか。…攻撃が当たらないタネがわからないと因子解放してもおそらく意味がない…まだ様子見だな)


 一心は、攻撃をしながら相手に話しかけてみることにした。


 「お前、さっきから何ブツブツ言っている。というかお前は…なんなんだ?俺に何をした」


 怖い…怖い…とブツブツ言っていた男は、一心からの問いかけに対し、虚ろな目をしながら答えた。


 「…俺は…古和 出(こわ いずる)…《狐者異の縁(こわい えにし)》だ…俺をみた奴は恐怖に駆られ、足が竦んで攻撃ができなくなる…恐怖は…皆に平等…生きている限り、全員に等しくある感情…!逃れることはできない…!」

 

話を聞きながら、一心は相手を分析する。


 (なるほど…そう言うからくりか…ということは)


 一心は攻撃の直前目をつぶりながら相手に攻撃をしてみた。拳に肉の感触が伝わる。出は、壁の方向へふっ飛んでいった。


 「見れば攻撃が当たらねぇなら、見なけりゃいけるだろう?」


 クックック…


 出が飛んでいった壁の方から、不気味な笑い声が響いてきた。


 「なるほど…まさか…そんな…バカな戦法に出るとは…だが…それも…あまり意味はない…『因子解放70%』」


 出の周りに、無数の目玉が展開される。その目が一心をみた瞬間、一心は動くことができなくなった。


 「〔大恐愚想眼(だいきょうぐそうがん)〕…この眼に見られたものは、恐怖で動けなくなる。目をつぶっても無駄…その目は、見たものすべてに恐怖をねじ込む…」

 

 一心は、呼吸もままならない状態でも、思考を止めずに分析し続けた。


 (能力は大体理解できた…なら次は…)


 息を整え、手に琵琶を出現させる。

 

 「…〔波浪大津波節(はろうおおつなみぶし)〕!」

 

 一心の周りから大量の水が吹き出し、出の方へ津波となって押し寄せる。


 「津波…確かに…強力だが…俺には…効かない…!」


 出はそう言うと、妖気を一気に放出し、津波を吹き飛ばした。


 「…まぁ効かねぇだろうな。だが俺の狙いはそこじゃねぇ。一瞬だけ目をそらせれば十分だ…『因子開放75%』」

 

 莫大な妖気とともに、津波の向こうから一心が現れる。


 「なるほど…あの津波は…俺に…ダメージを与えるためではなく…目を逸らすためか…だが…意味はない…!恐怖に潰されろ…!」


 一心は懐からタバコを一本取り出して火をつける。


 「…俺は『海座頭の縁(うみざとう えにし)』でな…通常時だと大量の水を操るんだが、解放時だと細かいこともできんだよ…〔大海螺旋槍(たいかいらせんそう)〕」


 「「べんっ!」」


 一心が琵琶を鳴らすと、一心の前に水の壁ができると同時に、一心の周りに水の渦が何本も現れ、出の方に向かっていった。そして、それらは出の周りに浮いている眼をすべて破壊した。


 「バカなっ…俺の…術がぁぁ…」


 出は大きな包丁のようなものを取り出すと、奇声を発しながら一心に向かっていった。


 「俺がっ…恐怖が…負けることなど…ないっ…!!」


 一心はタバコの火を水で消すと、再び琵琶に手をかけた。  


 「お前の恐怖…心の弱いやつならあるいは殺せたかもしんねぇが…俺には効果が薄かったみてぇだな。……〔魔虞三角(まろうさんかく)海域(かいいき)〕!」


 出のいる地面に、三角の陣が浮きでる。次の瞬間、陣から真上に高圧水流が飛び出した。出の体は粉々になり、頭だけが一心の足元に転がった。


 足元に転がった生首に、自分の持っていたハンカチをかける。

 近くの瓦礫に座りながら、一心は胸からタバコを取り出した。

 

 

 

 


 

 


 

 

 

 




 


 

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