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魔術監察官ユロ  作者: 脱出
1章 7回殺された被害者
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7話 真相Ⅱ


 『君の孤独を癒す方法ならありますよ』


 1年前。全てが始まった日。

 青年ウィッツの前に現れた男はそう語った。

 魔術師を名乗る男は語る。


『君はずっと孤独でした。資産家の両親は君に自分たちと同じような成功を期待してくる。友人の作り方も分からず、他者と関わることもできない。幸せになる方法も分からない。幸せになりたいのかさえ分かっていない。それなのに周りの幸せな人間を見ていると惨めになる――あなたに必要なものを私は知っています』


 男は小さな筒を差し出した。

 透明な容器の中には色のついたガスが漂っている。


『この中には人間の人格が宿っています。私の複写魔術によって複製された人間の人格が。君に差し上げましょう。この人格はきっと君の良い理解者になれる』


 複写魔術によって複製された人格。

 この人格がウィッツの中に埋め込まれた。

 

 ウィッツの中に、もう一つの人格が発生した瞬間。


『人格の持ち主の名前はイメイといいます。仲良くしてあげてください。そしてもう一つ差し上げるものがあります。私の複写魔術、です』


 ウィッツは男から複写魔術も引き継いだ。

 なぜ、ここまでするのか? とウィッツは男に目的を問いただした。

 

 男は静かに答える。


『なに。ただの実験ですよ。複写魔術は継承しただけで、私も変わらず使えますし……。私以外の使い手がどのようなことを成すのか興味があるのです』


 男はそう言ってウィッツの前から姿を消して、二度と現れることはなかった。


 ――そして、ウィッツの人生は大きく変わった。

 人生が上手く進み始めたのだ。


 別人格であるイメイは夜に目覚める。その間ウィッツの意識は眠りに入る。

 彼らは交換ノートを介して、お互いの感情を伝え合った。


『――お前は悪くない。私だけはお前を理解できる』


 とイメイはウィッツにとって良い理解者となった。

 同時にイメイはウィッツによくアドバイスをした。

 手に入れた複写魔術を有効に使う方法を。

 彼らは複写魔術を王国の有力者達に売り込んだ。軍人、政治家、企業の社長……複写魔術に興味を抱いた有力者達から金を巻き上げることに成功した。

 複写魔術を餌にして金を稼ぎ、その金を元手に他の商売に手を出し、更に成功した。

 たった1年でウィッツは成功者となった。


『私たちはずっと一緒だ。ウィッツ』

 

 イメイはそうノートに書いた。


 しかし、徐々に、だが確実に。

 ウィッツはイメイを重荷に思うようになってきた。

 イメイは過激で、乱暴な手を使う。

 

 邪魔だな、と思うようになった。


 しかし自分の別人格は、自分の肉体にこびりついて離れない。

 もしかしたら死ぬまで一緒にいないとダメなのか、とウィッツは不安になった。

 一生。自分が生きて死ぬまで。結婚して子供ができても。

 イメイが自分の人生に付きまとう。


「いや彼から離れる方法ならあるじゃないか」


 ウィッツは笑う。


「今の俺は死んで、新しい俺を創れば良い。複写魔術で」


 彼は複写魔術で自分と同じ存在を創り出そうとした。

 完璧に同じ自分ができあがれば、古い自分は自殺すれば良い。

 そうすればイメイが入った自分とはおさらばだ。


 何も問題はないと彼は考えた。

 とっくに狂っていた。

 

 しかし、ウィッツの企みはイメイも知ることになる。


「――私から離れるなんて許すものか」


 複写魔術がかけられウィッツに変わろうとする人間は。

 イメイが操る魔術人形によって殺された。

 

「お前は私と一緒に生きるしかないんだ。それを分からせてやろう」


 ウィッツが自分と同じ人間を創り出そうとする度に、イメイがその人間を殺す。

 

 その繰り返しで7人が死んだ。



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