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その55 使徒と眷属

残酷描写があります。

苦手な方はご注意下さい。

残酷描写があります


その55


森の中をしばらく歩くと何本もの木々が薙ぎ倒され、力なく頭を垂れ白く凍り付いたドラゴンに似た巨大な魔物を見つけることが出来た。


何か普通のワイバーンより目と鼻の穴が大きい気がするなーと鑑定してみたらワイバーンの亜種、センシティブワイバーンだった。


何でも嗅覚聴覚視覚共にかなり優れていて、ある程度だけど風と光を操る力を持つらしい。


あー、だから目と鼻が大きいのかってそんなことあるかい!と突っ込みたかったけど、誰も分かってくれそうもないので黙っておいた。


原初の冬たちを相手にこの程度の魔物が勝てる訳もなく、フーッとされて凍え死んだんだろうね。


「良い具合に凍っておりますわね。美味しそう…」


フラウの言葉はサラッと無視して、アウルさんが死体を見たのを確認してから収納すると、私の魔力感知に複数の魔力が引っ掛った。


「この感じ、人?」


森のより深い所で複数の強い魔力がぶつかっているね。


多分だけど少数対多数、ありがちな所だと旅人や冒険者一行を襲う盗賊の類だろうか?


行く必要はないかも知れないし、世界中の人々を救えるとも思ってはいないよ?


魔力の感じからそうだと思っただけで私の勘違いの可能性だってある訳だけど、でもさ、知っていて放置って気分が悪いし後々後悔したくない。


放置したら絶対に後悔する自分の姿が目に浮かぶ程度にはお節介な性格をしてる事も自覚してるけど、私にはある程度の事なら解決出来る力があるのも事実だし。


「ちょっと行ってくる。ステラは一緒に来て。ラルとフラウは町の人たちをお願い」


他の面々も気配などで感じ取ったのか、私の指示に各々反応してくれたので羽衣を纏うと複数の魔力を感じる所へと飛んだ。


その後をフワフワとステラが追いかけて来てるのも魔力で分かるし、なんなら試験官であるアウルさんも凄い速さで走って付いて来ているのも感じ取れた。


何かしら事件だった場合、隣国から来た冒険者だけなのよりもそれなりの立場のある人が証人だった方が良いだろうし、荒事絡みなら冒険者ギルドの職員は最適だしね。


走る早さ的にもその辺の下級冒険者では出せないものだし、きっとこの地域位なら余裕に違いないと思う事にして私は木々の上を高速で移動する。


見つけた!


鬱蒼とした森の中でも開けた場所があり、そこで20歳前後の男女が十代半ばの少女を庇っていて、それを囲むように冒険者風の男たちが四人、鎧や剣こそごく一般的な物だけど佇まい等から高貴な身分だろうなって青年、そして黒装束姿の連中が7人ほどいた。


魔力や気配を探れば隠蔽スキルや隠密スキルで隠れていると思われるの者が別に8人居るね。


雰囲気からして隠れている連中も黒装束の仲間なのだろう。


それぞれに剣や短剣など武器を手にしていて、いつ戦闘が始まっても不思議じゃない雰囲気だった。


「多重障壁!ステラ、私達以外の魔力を阻害する霧を!」


「かしこまりなのです!魔散霧」


私の魔力が淡い光を放つ光の壁となり3人と襲撃者を隔て、どこからか吹き出た薄い霧が辺りを包み込む。


視界がやや悪くなる程度のそれは、いつだったか町を覆い尽くした霧とは異なる性質を持たせてあって簡単に言えば私達以外魔法を使えない状態にした感じだ。


実はあの三人が悪人で他の面子はその追手である可能性だってある訳だし、取り敢えず間違えて悪人を助けたとか洒落にならないからね。


突然の事に貴族風の男は慌ててるけど、黒装束や冒険者たち、それに囲まれていた三人もこちらの様子を伺っているみたいだ。


てか、良く見ると三人組のうち女性二人は突然現れた第三者の様子を伺うというよりは、何だかこう私達に付いて来た町の人達と同じ様な目を向けて来てる。


本当に何なのこれ?


まぁいいや。


アウルさんもこちらの気配を感じ取ったのか、少し離れた所で立ち止まると太い木を背にして腰の辺りから短剣を取り出した。


チラッとそちらに視線を送ってから何が起きているのか声を掛けようとすると、私が口を開くのより僅かに早く貴族風の男が、


「目撃者がいるのはマズい。消せ」


と冒険者たちや黒装束に命じた。


穏便に事を済ます事は出来なそうだね。


黒装束たちは普通の冒険者なら視認も出来ない様な早さでこちらにナイフやダーツを投げて来たり一気に距離を縮めて来た。


その動きなどからレベルが100前後、なかには200以上ある者もいるだろうけど、私やステラのレベルは1000を超えている。


スキルや装備などである程度以上の強化があったとしても、そうそう遅れを取る事などあり得ない。


戦闘モードに意識を切り替えた私には、黒装束や冒険者たちの動きもゆっくりと見えてるし。


タンッと音を立てて地面を蹴りつつ戦斧を振るい、首や胴など刈り取ったり霧を毒に変えたりして息の根を止めて行った。


ステラは基本的に自身へ向かって来た者たちや隠れている連中を中心に、いつの間にか手にしていた短槍で次々と黒装束たちを屠ってる。


「やべーぞ!本気でかかれ!こいつら強ぇ!」


ミスリル鎧を身に着けた30過ぎに見える冒険者がそう号令を掛けた時には、既に15人の黒装束は息絶え地面に倒れていた。


「大地斬!」


ミスリル鎧の冒険者が長剣を振り下ろし、何やら技を放ってきたけど私は左の羽衣でそれを防ぎつつ、右の羽衣を繰り出してその頭部を粉砕し、呆然としている魔法使いらしき男の胴を両腕ごと戦斧で切り裂き分断した。


ステラも下位のドラゴンか上位のワイバーン亜種辺りの革鎧を着た男の喉を一突きで倒し、黒光りする金属鎧の男の胸を槍の石突で突いて吹き飛ばした。


黒い金属鎧の胸元がベコッと大きく凹んでいるから、心臓や肺、胃なんかも潰されているしまず助からないだろう。


強力な治癒魔法や魔法薬でも鎧まで治る訳じゃないから、脱がせずにそれらを使っても苦痛が長引くだけだし。


「闇影封じ」


闇魔法を発動させて何が起きたのか理解出来ないでいる貴族風の男をぐるぐる巻に、目や口もしっかりと塞ぐと死体や装備品等を全て収納し、クリーンも地面や武器なんかに掛けて血などの汚れを消し去った。


証拠隠滅って訳じゃなくて血の臭い何かで飢えた魔物を寄せ付けない為だからね?


基本的に賊やそれに近い何かと遭遇した場合、下手に手加減して生き残ると後々面倒な事が起こったり、恨まれて自分や周りの人が危害を加えられる事がある。


だから生きたまま捕獲する様な依頼があるか、明らかに国や領所属の兵士や騎士でもない限り確実に殺した方が良いんだよね。


アウルさんは短剣を構えたまま何か呆然とした様子で私達を見てるけど、そちらは放置して襲われそうだった三人へと声をかける。


「大丈夫でしたか?」


「えっ?あっ、はい。助かりました。本当に、本当にありがとうございます」


「使徒様、私共をお救い下さりありがとうございます。心より感謝申し上げます」


冒険者にしては髪や肌の手入れがちゃんとされている神官戦士風の女性が慌てた様にキラキラした目で私を見詰めつつ礼を言うと、後ろに庇われていた少女がとても丁寧に深々と頭を下げた。


てか使徒様って何?


二人の様子に驚いた感じの青年も、


「すまん、助かった。それにしてもあれだけの数の実力者たちを一瞬で…」


と驚きつつ礼を言われた。



「いえいえ、困った時はお互い様ですから。所で、使徒様って…」


「えぇ、分かっておりますとも!無闇に公言する事柄では無いですもんね!」


「ですが使徒様の放たれるご神気は、信徒の多いこの国の民にとって夜空に輝く星の如き光に心惹かれてしまうのですわ」


神官戦士と少女が目を煌めかせつつグイグイと迫って来た。


「ご神気?あっ」


そうか、この国は日月星の三神を主神としていて、その分敬虔な信者も多い。


ダンジョンに星神様の神殿が出来ちゃうくらい影響を受けている眷属な私の気配に、星神様の神気を感じ取っているんだね。


そんな様子を見たステラに、


「うぇっ?今まで気付いていなかったのですか?」


と本気で驚かれてしまったよ。


「いや、あのですね、私は使徒様じゃありませんよ?

一応眷属ではありますが」


「眷属であらせられるならば、それはもう使徒様ではないのですか?」


「いやいやいやいや、そんな大層なものではないですってば」


少女に眷属と使徒の違いを上手く理解して貰えずどう説明しようかと考えて、ふっと野良眷属って言葉が脳裡を過ぎったけど、それを言うのもアレなのでそこは黙っておいた。


私達がそんな話をしていると、アウルさんがやっと動き出して私達の近くへとやってきた。


「お二人が瞬時に倒してしまった四人組の冒険者は隣町、ラウラーザを拠点とするA級冒険者パーティー雷星の四刃です。

それをああも容易く倒してしまうとは、貴方方は一体…」


結構手練な冒険者だとは思っていたけど、A級冒険者だったのか。


目撃者も殺そうとしていた辺り、表立っての依頼ではないだろうし、こちらからしたら悪党そのものだ。


それでも相手はA級冒険者。


何かペナルティでもあるかと思ったけど、


「そこは問題ありません。

どちらかと言えばそこに捕らえられた方が問題と言えますね」


とぐるぐる巻にされた男をチラッと見つつアウルさんはため息をついた。


「鎧こそ騎士団の物ではありませんが、まず間違いなく第八騎士団副隊長、ハナル・ティータ・ガウラ様でしょう。

ガウラ侯爵家の三男に当たるお方です」


げっ。他国に来て早々に面倒な事に巻き込まれたかも知れない。


どうせならサクッと倒して収納してしまえば良かったと思わずにはいられなかった。

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