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その48

その48


冒険者ギルドも私達もそれなにり協力して動かないと不味いと言うリューネさんの意見に納得し、私がディーアからアニスやこちらに向かう予定だったパーティー二組を連れて来て護符を配布し、作戦会議を小屋の前でしようとした時、それは起こった。


物凄い地鳴りや揺れと共に、私達から見て迷宮入口付近やその後ろの地面が土煙を上げながら急速に盛り上がる。


皆が呆然と見つめる中、高さこそ300メートル程と低いものの横幅が数キロにも及ぶ丘の様な山の様な物へと地形が変わってしまったのだ。


いやいやいや、何これ?!


「魔力と瘴気が馬鹿みたいに膨れ上がっているね」


「むう、無数の穢れた気配を感じるぞ」


ユグヌスクさんとラルがそれぞれに感じ取った事を話す姿を横目に、私やアニスは風魔法で視界を遮る土煙を散らす。


元々あった入り口を封じていた氷の蓋も地形の大きすぎる変化には対応出来ず砕けちゃったので、今ではこちら側に向けて大きな口を開いている。


地鳴りや揺れが収まると複数の出入り口が作られたのか、山のあちこちから無数の魔力を感知する。


一部のギルド職員や下級冒険者は呆然としていたけど、それ以外の人々は魔力感知や何かしらのスキルや経験則で危機を察し、武器を構えたり防御魔法を唱えたりしていた。


リューネさんも腕輪を弓モードにして身構えている。


うん、やっぱり他の職員とは違って良い反応だね。


「リューネさん、これ使って!」


「師匠!ありがとうございます!」


私は収納からいくつか矢筒を取り出して彼女に渡した。


今ここにいるのは私達を除くとアニス、リューネさん、破魔の青天、ディーアから連れてきたB級冒険者パーティー、四本の槍の四人と星降る夜の四人、あとは数名の兵士とギルド職員たちだ。


「これはまずいですね。

あまり戦力を分断支度はありませんが、近隣の町や村へ魔物が向かう可能性を考えると仕方ありません。

こちらから見て破魔の青天は正面を、左右はそれぞれ四本の槍と星降る夜が、サラさんたちは裏側を中心に各自新たな出入り口の確認と魔物の討伐をお願いします」


アニスがそう指示を出し、私達もすぐに動き出した。


「転移のためにちょっと行ってくる!皆は少しだけここで待ってて!」


私はそう声を掛けると超高速で飛び上がり、そのまま小山の裏側へと降りてから位置を覚え、皆の元へと転移して戻る。


とは言え見た目がそうそう大きく変わるわけではないので、間違えない様に天術で位置を示す紋を地面に刻み込んだ。


「準備完了!行くよ!」


とメンバー全員と共に小山の向こう側へ転移して、二手に別れて向こう側を目指すことにした。


「あのぉ、なぜ私もこちらに居るのでしょうか?」


「あっ」


うん、一時期パーティーを組んでいたので勢いでリューネさんも巻き込んで連れて来てしまってた。


一応師弟関係でもあるし、アニスとは違うのだよ、アニスとは。


「えっとあれだね!

リューネさんの幅広い知識が役立つと思うんだ!」


さっと帰すことも出来るけど、実際問題長いこと寝ていたり、元々人種じゃなかったり、完全に人を捨ててる連中ばかりだとどうしても常識的な判断や知識が難しいんだよね。


少し私をジト目で見ていたリューネさんだったけど、ふぅと息を吐いて笑顔になる。


「後で叱られるかも知れませんが、そのときは一緒にお願いしますね、師匠!」


晴れやかな笑顔でそう言われちゃったので、アニスに怒られるのは嫌だけど仕方ないやと頷いておいた。


「仕方ないなぁ。僕が伝えておくよ」


ユグヌスクさんがその辺の草に触れて何かを囁きかける。


「うん、これで一応伝わったよ」


どうやら植物を通して声を伝えたらしい。


使い勝手がめちゃくちゃ良いけど、ユグヌスクさんや植物系の精霊でもないと使いこなすの無理そうな気がするよ。


「ありがとうございます!

と言うことで、右側を私、リューネさん、ヴィンドゥナガが、左側はユグヌスクさんとラル、三姉妹で二手に別れて出入り口の確認やその他異変のチェック、魔物の討伐をしつつ正面へと向かう感じでよろしく!」


まず知識面でリューネさんとユグヌスクさんを分け、後は相性等の問題からこんな感じにしてみた。


ヴィンドゥナガは他の魔王と今ひとつ仲が良くないみたいだし、私の事を弟子兼孫もどき、リューネさんの事は孫弟子だと思っている様なので多少マシなはず出し。


それはユグヌスクさんや三姉妹、ラルも同じような事を思っていたのか納得してくれた。


私達は斥候などのスキルを使いつつしばらく進むと、剣戟や獣の鳴き声などが聞こえて来た。


今回の作戦とは関係ない別の冒険者たちがたまたま遭遇したとか?


近場の森を探索していたり、何処かしらからの帰り道に地鳴りやら揺れやらあれば、そりゃ気にもなるから寄って来る人もいるだろうしね。


「何ですとっ?!」


「どういう事じゃろうな?」


「さっぱり分かりませんね」


私達は小走りに音の出処まで向かうと、予想外の光景が目の前に繰り広げられていた。


山の斜面に直径十メートルほどの穴がポッカリと開き、そこからワラワラとアンデッド化した魔物たちが湧き出て居るのだけど、その魔物たちを別の魔物達が倒していたのだ。


瘴気と共に進む腐りかけの獣や昆虫などのアンデッドどもやヒラヒラと舞う蝶たちに、頭のない金属鎧姿の騎士が大きな片手剣を振るい、青白い肌にボサボサの長い髪、血走った目にボロボロの服を纏った女が長い髪を操り魔法を放ち、しっとりと何かで濡れた赤黒い帽子を被った醜怪な浅黒い顔の小人が大鎌を振り回して次々と倒していく。


その他にも透き通った半透明のエルフや天人にも似た美しい女性が空を駆り風を操って瘴気を散らし、同様の美貌を持つ足元までずぶ濡れな長い髪の女性が水や冷気を操ってアンデッドや蝶を駆逐している。


その他にも口からチロチロと火を吐く黒い犬なんかも居るね。


よく見れば騎士や小人、女性たちはそれぞれに私が作った護符にも似た腕輪やネックレスを身に着けて居て、瘴気の影響を受けない様にしていた。


ほぼ透明な姿なのに腕輪だけ透けてないとか、どんな構造なのか凄く知りたいね、これ。


てかアンデッドと戦っている者たちが味方なのか、それとも何か別の思惑でも働いているのか。


ちょっとどう動くべきか考え倦ねてしまう。


「どれどれ、竜眼!

あー、ワシ分かったかも知れん。こりゃ厄介なのが増えるのぉ」


ヴィンドゥナガが鑑定効果もある魔眼を使ったらしく、首なし騎士たちの方を指差してこう言った。


「迷宮から出てくるアンデッドと戦っているあ奴ら、妖精じゃな。

デュラハンにバンシー、シルフにウンディーネ、あとはレッドキャップにブラックドックじゃの」


それを聞いたリューネさんが、


「もしかしたら、これが例の森などで見掛けるアンデッドの群れの正体なのかも知れませんね。

首なし騎士にほぼ透明な女性、青白い肌の女性、ずぶ濡れの女性、赤い帽子の小人、何れも薄暗い森の中や街道近くでも夕暮れ時などならアンデッドにしか見えないですから」


と少し疲れた様子で言い出した。


「有り得るね。

鑑定系や魔物知識のスキルを持っている冒険者ってそこまで多くないし下位の冒険者なら尚更だろうから。

目撃者の多くが行商人や村人だとすると余計に勘違いしそうだもん」


鑑定はあるだけで仕事に付けるから冒険者になる人は少ないし、普通の商人を含む非戦闘職なら鑑定する前に逃げるだろう。


知識系統のスキル持ちは鑑定と同じく職を見つけやすい上に、一部を除いてあまり町から外へ出る機会も少ない上に、下位冒険者だとそこまで取得する余裕がない人も多いだろうからね。


そもそも好んでスキルを選べない人種が多いのが問題な気もするけど、そこは神々のお考えがあるのだろうから何とも言えないな。


〈サラさん、聞こえるかい?〉


一応身構えつつ妖精とアンデッドの戦いを見ていたら、ユグヌスクさんから眷属魔法で念話が繋がった。


〈聞こえます。何かありましたか?〉


と応えると、


〈大した事ではないのだけれどね?

出入り口と思われる穴は発見したものの、アンデッドと妖精が戦っていてね。

どうしたものかと思った次第だよ〉


凄く軽いノリでそう言ってきた。


〈あ、実はこちらもそうなんです。護符を身に着けたデュラハンやバンシーなどがアンデッドを倒しまくってます〉


〈うーん、これはあれだね?

別の魔王が関係して来そうだね〉


〈そうですか…少しの間静観した方が良さそうな気もしますけど、中で何が起こっているのか分からない以上時間もあまり掛けられませんし、アンデッドだけ倒しちゃいましょう。

それで妖精たちが敵対して来たら、そのときは各自対応と言うことで〉


〈了解した!〉


という事で私達は妖精を避けつつアンデッドへ攻撃を開始する事にした。


「リューネさん、アンデッドのみ攻撃しましょう!

ヴィンドゥナガは非常時に備えて待機しつつ、襲撃なんかの対応よろしく!」


「はい!」


「仕方ないのぉ。任しとけ!」


「助太刀します!」


と一応声をかけ、リューネさんは弓その物に宿る諸々の加護が宿った普通の矢を、私は光魔法の槍を多数放ってアンデッドや蝶を次々と倒していく。


ヴィンドゥナガは竜気を一気に膨れ上がらせ、知覚を含む全ての身体能力を大幅に上げ始めたようだった。


万が一を考えて、羽衣少し伸ばして私とリューネさんの周りを軽く取り巻き防御に使う。


妖精たちはちらりとこちらを見た後、かなり数の減ったアンデッドを倒して行くとある時点でばったりと穴から敵が出て来なくなった。


「助太刀感謝します。ここは我らに任せ、他の穴をお願いします」


頭のない騎士が左手に抱えた兜から、青年くらいの若い声が聞こえて来た。


イメージ的に渋いオッサンだと思ってたら違ったらしい。


てか、自分の頭を抱えつつ戦うとか器用だよね。


確かに高さこそ大した事はないけれど盛り上がった範囲はそれなりに広いので、一箇所に留まる訳にもいかないか。


「宜しくお願いします!」


私はそう応えると、リューネさんとヴィンドゥナガと共に先へと進む事にした。


心から信用している訳じゃないけど、敵が増えるよりはマシかな?と思ってね。


それにもたもたしていて蝶が増え、結果的にアンデッドが増えても困るからね。


念話で声を掛けてみるとユグヌスクさんも同様の選択をした様で、先へと進み出したらしい。


しばらく小走りに進むとアンデッドの大群とヒラヒラと飛ぶ長の群れに遭遇した。


今まで倒してきた魔物よりも体躯が良かったり、獰猛そうな魔物がベースとなったアンデッドが多いね。


中層以降の魔物たちかも知れない。


「ヴィンドゥナガ!一気にやっちゃって!」


気を溜め込んでいたヴィンドゥナガはニャっと笑って応えると、目にも止まらぬ早さでアンデッドの群れへと突っ込んでいった。


さっきは戦えなくてちょっと不満だったみたいだし。


あ、何か大技使いそうだね?


「地よ!壁となれ!」


土の壁が現れるのとほぼ同時に、魔物の群れの中心部から閃光が迸り無数の雷にも似た気が降り注ぐのが一瞬見えた。


危ねぇ。


ちょっと耳がキーンとしてるし。


「弱過ぎるの」


とか言ってるけどその辺のアンデッドが魔王に勝てる訳ないじゃんね?


まだ穴からこちらにわらわらと向かって来るアンデッドと蝶、そして瘴気にリューネさんが浄化の力を詰め込んだ矢を放った。


「横雨の矢!」


矢の雨の横バージョンだろうね。


一本の矢が無数の聖なる矢になり、敵を一掃する。


触れずとも神気を帯びた矢が通り過ぎただけで瘴気が霧散していく。


「永久氷壁!」


私は分厚く硬く冷たい氷の壁を貼って穴を塞いだ。


このままでは消えてしまうので、氷壁に天術と祈念魔法を込めて不浄なるものを浄化するマジックアイテム的な何かへと変化させた。


これで瘴気に侵食されたり、アンデッドに壊される事も無いだろう。


蝶は攻撃手段なさそうだしね。


この先幾つの大穴があるのか分からないから、一箇所でもたもたしていられないし、ってそうかっ!


「ちょっと飛んで上から様子を確認するから、二人で先に進んでて!」


私はそう声を掛けると返事も待たずに飛び上がり、それなりの高度に上がってから小山を見下ろした。


私達の側にはあと3つ穴があるようで、アンデッドたちが湧き出ている。


ユグヌスクさんたちの方を見ると数本の木々が絡み合って出来た巨木にも見える物が2本立っていて、残り一つの穴からアンデッドが湧いている感じになっていた。


アニスたちの方は余裕を持って戦っているみたいだね。


妖精たちも苦戦をしている様には見えない。


と言うかデュラハンやバンシーなど妖精の数が増えてる。


お、ユグヌスクさん側の妖精は絵本に出てくる様な蝶やトンボの羽を持つ妖精や、緑がかった馬に横座りしている白いドレスを着た女性や髪の長い槍使いの騎士など、アンデッドと見間違えないだろうなって組み合わせになってるね。


よーしよし。


これなら出来るな。


私はヒヒイロカネの小さな塊を収納から3つ、質の良い魔石や宝石も取り出し錬成して3本の矢にした。


魔石はリューネさんの特訓の時に島で手に入れた小さな亜竜の物で、ゴブリンなんかのとは段違いの質だ。


あの巨大な芋虫の液、本当に質が悪かったな。


日持ちさせる必要はないので、その分性能面の強化に割り振る。


矢には場の浄化と破魔、そして極力強固な障壁結界を付与した。


この魔石でも3日は保つだろう。


一旦矢を収納すると、


「浄炎の御柱!」


と光魔法と火魔法を組み合わせ、瘴気と敵対するものだけ焼く特性を与えた光の柱を3本撃ち込んだ。


光の柱に触れずとも、照らされた敵は浄化され燃え尽きると言うイメージ通りにあちこちから火の手が上がり、延焼することなく燃え尽きる。


後は高速飛行でそれぞれの穴に矢を突き立て、魔道具として起動させれば完璧だ。


穴周辺は獣の肉や毛が焼けた臭いで焦げ臭い。


奥から湧いて出る瘴気やアンデッドは浄化かれ、蝶は強固な障壁があるから出られない。


うっし!


という事で飛んでリューネさんやヴィンドゥナガと合流すると、軽く状況を説明した。


なんか二人共渋い顔をしているけど気にしない。


「さっき思い付いて作った魔道具だからね」


と一応断りを入れて、余分に数本作る事にした。


魔石も鉱石も沢山あるからね!


ユグヌスクさんは魔道具としての性能面を気にしてあれこれ聞いて来るかも知れないけど、三姉妹が文句を言いそうだし、何よりラルの何とも言えないあの視線を向けられるのは嫌だなぁと思いつつ、気付いたら十本くらい作っていたのだった。

その49を書き始めたのでアップします。

なぜか全然うまく進まず、遅くなりました。

49は逆に勢いよく書き始めていますが、今週は仕事が忙しいので果たして書き上げられるかどうか謎です。

がんばります!

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