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その40

その40


意味不明になって来たので、アシュリーナさんとクラリウスを置いてアーストン迷宮の最下層、星神の神殿の本殿部分に移動する事にした。


本当はリューネさんもギルドの関係で残りたがったんだけど、ユグヌスクさんが弓の状態を見て離してくれなくなったのだ。


本殿は何故か地下なのに星空が広がっていて、そこら辺にフヨフヨと上位精霊や聖獣、神獣達が飛び交ったり走っていたりする。


ここの魔物は私やラルに危害を加えないし、命令にも従うので同行者が襲われることもない。


今ここに居る面子は、私、ラル、リューネさん、アルシェ、ステラとルナ、そしてユグヌスクさんだ。


「ほほう、へぇ?ここでなら弓を修復、いや、強化すら出来そうだね!」


どうやら星神様の神気が漂っているらしく、ウキウキしながら庭の土を掘り出した。


自由だねぇ。


『色々お世話になっている魔王だから、危険な事がない程度になら自由にさせてあげて』


と核さんには伝えてある。


なお核さんとはアーストン迷宮核の名前だ。


最初は渋ってたけど、さんまでが名前だからね?!言うなれば核さんさんだよ?!とゴリ押ししたら気に入ってくれたようだ。


「さぁ、この穴に弓、あぁブレスレット状態で構わないから入れて入れて」


リューネさんはユグヌスクさんに従って不安そうに腕輪な弓を穴に入れる。


「ん?近くに井戸があるようだね?」


水魔法で井戸水をコップ一杯分ほど運び、穴を埋めた後にジャバッと掛けた。


「始めるね!


満天の夜空に輝き人びとを見守り導く星々の神よ!


今ここに我、ユグヌスクが願う。


彼の者、リューネを守護し共に有り続ける弓に御神のご加護と祝福を!


迷宮の主たる天女よ 舞い祈れ!


精霊たちよ 歌い踊れ!


風雷の精霊竜よ 神聖なる獣たちよ

     

気高き咆哮で迎えよ!


ハイエルフにして樹王たる我、ユグヌスクが請い願う。


新たなる形、新たなる弓、成長せし命をいまここへ!」


前の呪文とは異なる祈りを主体としたそれは、いつものどこか飄々とした雰囲気が消え失せ、まるで神官の様な威厳すら湛えて朗々と詠唱した。


星々の光が増し、キラキラと小さな粒が舞い降りる。


何なら私の体もキラキラと光り、その粒も弓を埋めた辺りに降り注いだ。


「ん?待って?ここは神殿でもあるけど迷宮でもあるよね?そしてこの迷宮の主は私だよね?天女よ舞い祈れって、あれ?え?」


「魔王同様、理に携わる称号を複数持つ貴女の影響も出るだろうね?」


何かサラリと言い出したよ?


辺りにいる聖獣や神獣、上位精霊まで巻き込んで、無数の光が弓に集う。


ズン!と光の柱が立ち上がり、そして地面へと吸い込まれていった。


土がポコッと小さな山になり、芽が出て枝葉となると、一気に弓の形へと変化していく。


「うん、完成だね!」



何だか嬉しそうなユグヌスクさんと、弓を呆然と見つめるリューネさん。


以前の物よりも妙に神々しく物々しい弓が再誕した瞬間だった。


「これは、良い弓です」


何だろう?既視感を感じる言葉を呟き、頬づりしそうな勢いでリューネさんが弓を手に取った。


『いい加減に名前をつけて!』


それがこの神々しくも仰々しい弓が再誕後、初の言葉だった。




ラルとアルシェにユグヌスクさんと三姉妹の二人を任せ、弓を手にしたリューネさんを連れてリントの町へと戻り、冒険者ギルドリント支店でアシュリーナさんと合流した。


各ギルドや神殿などにはほぼ被害はなく、特に神殿は逃げ込んだ人々で大変だったらしい。


クラリウスは冒険者ギルドの職員に事情を話して地下牢に入れられていた。


「事を大きくするつもりはありませんから、貴族名簿からの除名と子爵家からの除籍で済むでしょう。

ただ現領主の娘が関与した事はどうしても大きくなってしまうでしょうけれど」


小さな領なのでクララの事は住民の殆どが見知っていたし、人を襲う姿も目撃されているから言い訳も出来ないよね。


頑張っても吸血鬼に操られてとか、そっち方面に持っていく位かな?


「確認作業が終了しました」


弓を抱きしめながらリューネさんが受付の奥から戻ってきた。


何処かの神獣よりも重症じゃないのこれ?


「それじゃ、戻りましょうか。アシュリーナさんもご一緒しますか?」


リューネさんに答えつつ、アシュリーナさんに訪ねてみたけど、彼女は首を横に振った。


「今回は以前お見せしたギフトを使っていませんから何処も調子は悪くありませんし、アンデッドの動向を探りながら戻る事にします」


一人になりたい時もあるよね。


「むしゃくしゃするので強いアンデッドと遭遇出来ると良いのですけれど」


あー、そっちかい。


と言う事で私はリューネさんを連れて再び本殿へ。


いつの間にか応接室の様な物が作らていて、皆ソファに腰を掛けてお茶を飲んでいた。


勿論三姉妹の二人も縄を解かれて極普通にお茶を飲んでいる。


「なんだかなー」


そう呟きつつも収納からお菓子や軽食を取り出してテーブルの上に置いた。


「それで、これからの事ですけど、どうしましょう?」


三姉妹の事もギルドに伝えないと駄目だろうし、呪王や吸血鬼の情報も伝えないとまずいよね。


「一応亜人王の手下の吸血鬼を捕らえ封じた事、三姉妹は敵ではない事、アンデッドの黒幕は呪王の可能性が高いことはギルド便で伝えてありますが」


おぉ、流石はリューネさんだよ!


きっとぼかす所はうまいことぼかして伝えてくれたのだろう。


まぁヴァンパイアの件は言わないとクラリウスの件もあるからね。


「どうやら亜人王と呪王は何らかの形で手を組んだようだね?腹立たしい事だよ。ここは一応支配禁止区域の一つなのにね」


さらっとまた飛んでもない事を言い出したよ、この魔王。


三姉妹もそうだけど、案外みんな口軽いんじゃないの?


「サラさん、何だか酷いことを考えている様だけど、僕とそこの狼女とは別物、全く違うからね?

ちゃんと理由があって話しているだけさ。

あ、そうそう、三姉妹の夜の子も迷宮に入れてあげてくれないかな?

ちょっと重要な話があるからね?」


シュルリと地面から草が伸び、その先端に手のひら大の半透明な果実が実った。


その果実はまるで占いに使う水晶玉のようで、どかの映像を映し出した。


このダンジョンの入口近く、広場の露店で買い食いしまくっている黒いドレス姿の美しい女性が映ってる。


串焼きや果実水、焼き菓子なんかも頬張ってるね。


「うわ、ずりぃ」


「お恥ずかしいです」


その光景はすぐ近くに座っているルーナとステラにも丸見えで、ルーナが自分も食べたそうによだれを垂らし、ステラは赤面して両手で顔を覆っていた。


「長い間封印されていたので、食に飢えていたのです。

解放されてもろくなものを貰えなくて」


ヴァンパイアは血を好むけど、普通の飲食も可能だ。


ただアルフレッドの様子からすると、一時的な部下に気を使うつもりなど全く無さそうだもんね。


「ちょっと待ってね」


私は買い込み過ぎていつ出すか謎だった食料を次々とテーブルに並べた。


串焼きや焼き魚、弁当に果物にお菓子色々、ついでにワインと果実水も何種類かとりだした。


「どうぞ、召し上がれ」


「おぉ、何と豪勢な?!よし、今日から私は貴女の下僕となろう!」


ルーナが真顔でそう言って肉へと齧り付く。


「ちょ?!ルーナ、貴方本気で馬鹿なのです?!」


ステラが慌てた時には遅かった。


〈夜魔王エネエブラスの分体、月のトリアルーナが眷属となりました〉


無情にも天の声が私の頭の中に響くのだった。




「そぇで、ルゥーニャぎゃけんじょくになっ、ゲホッボコッ!」


必死でテーブルの上に並ぶ食事を掻き込みつつ喋っていたノクスが咽て涙を流している。


何か最初に会った時は威厳がある様に見えたけど、凄く残念な感じになってるよね。


「食べるか話すかどちらかにすると良いです」


ステラはとても上品に、だけど他の二人よりもとてつもない早さで次々と食べまくっていた。


そうか、食べることそのものは恥ずかしくはなくて、買い食い立ち食いをする姿に赤面していたのか。


こいつらマジ良く分からん。


先程ゲートを開いてノクスさんを拾ったんだけど、テーブルの上を見た瞬間ソファに座って食べ始めてたし。


「それで夜の、僕からの提案なんだけど、どうだろう?サラさんに協力しちゃわないかい?」


ちょっとお茶でも飲まないかい?位の軽いノリでユグヌスクさんが話し始める。


「ここは星神の神殿だ。

その眷属に誓いを立てるなら、ここより向いている場所なんかないからね。それでルーナさんは簡単に眷属化しちゃったみたいだけど、僕らもルールをうまい事破る為に、サラさんの眷属になっちゃえばいいと思うんだよ」


「なるほどです。

それはもろにルールの裏をかいたやり方ですね。

それならあくまでも私達が他の魔王の不利益になる事をするのではなく、主の意志で動いてますで通りますですね」


ユグヌスクさんの発言になんか乗り気なステラ。


「いや、当の本人を置いてそんな話をされてもですね」


「考えてみておくれよ。現状サラさんは亜人王と呪王、2体の魔王と敵対しているんだ。

あの二人の手の者と敵対して閉じ込めている時点で知らなかったとは言えないしね?」


あー、そうか。


亜人王と呪王はアルフレッドと言う共通点で繋がって動いている。


私は元々の因縁に加えてアルフレッドの件やギルドの依頼込みでそのニ魔王と敵対関係にあるんだ。


「私達を目覚めさせたのも、亜人王と呪王の意思が働いていると思われるです。あの程度の奴等に良い様に使われるのはかなり腹が立つのです」


「そふね。ふぁらはたつゲフン」


「だからノクスは食べるか喋るかどっちかにするですよ!

ルーナを見るです。食べ物以外全く目に入っていないですよ」


「私はもう眷属だからな!」


よく咀嚼して飲み込んだ後、キリッとした顔でよく分からない返事をして、再び食べ始めるルーナ。


話聞いてるじゃんよ。


「決めたです。私ウドゥオステラはサラさんの眷属になるです」


〈夜魔王エネエブラスの分体、星のウドゥオステラが眷属となりました〉


再び天の声が来た。


いや、何も言いません、言いませんよ?!


星神様はしっかりとお仕事をなさっていらっしゃるだけですよね?!


「では僕も。樹王ユグヌスクはサラストリー様の眷属となります」


いやマジ勘弁して?!


「モグモグんぐっ。妾もそれで良いぞ」


お、ちゃんと飲み込んだよってか、あんた略し過ぎだろ?


〈樹王ユグヌスクが眷属となりました。夜魔王エネエブラスの分体、夜のウーナノクスが眷属となりました。

全分体を眷属とした為、夜魔王エネエブラスを眷属としました。


これにより解放条件が達成された為、封印中のベースレベルが200上がりました。


ベースレベルの上昇によりHP、MPが全回復しました。


能力値ポイント、スキルポイントが200ずつ加算されました。


熟練度上昇の為、剛健7、俊敏6、特殊戦闘:羽衣9、祈願魔法10、回避5、属性魔法:光7、火5、雷5、天術5、竜人格闘術7、竜操気7、眷属魔法10へスキルレベルが上がりました。


特殊称号:大魔王を得ました。称号:プラントマスター、称号:ナイトメアマスターを得ました〉


私の元のレベルは一体いくつなのよ?!


そして大魔王って何?!


私も魔王になっちゃったの?


〈魔王は進化で種族が変更されます。称号とは異なります〉


機械的に言ってるけど絶対星神様直の声だよね。


教えて頂いてありがとうございます。


称号だけなら一安心、なのだろうか?


「ほほう?眷属とはこの様な感じなんだね。いやぁ滅多に出来ない経験だよ」


ユグヌスクさんは喜んでいるし、三姉妹も満更ではないようだ。


ラルは何かこう、微妙な目で私を見つめていて、アルシェは何故かほんのり喜んでいる。


そしてリューネさんは完全に目が死んでいた。


『マスター!大変です!マスターのレベル上昇や称号の変化等により本迷宮が45階層へと進化しました。神殿部を40から最下層までとし、16階層から39階層を植物、夜に属する魔物たち、亜竜、竜としました』


強さによって分けたのかな。


竜や亜竜だけよりは戦いやすいダンジョンになったかも知れないよね?


そう言う事にしておこう。


こうして私は大魔王となり、みんなにご飯を提供しまくるのだった。

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