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その33

その33


アガメノムに今後も非常時以外は好きに過ごすように伝え、私達はディーアの町へと戻った。


非常時と言っても何もない気がするけれど。


島の竜たちの間で天女伝説が生まれていそうだよね。


四人は門の外で私とフラナヴァータは宿だ。


四人にはお金も渡してあって仮の身分証を受け取る様に言ってある。


「ラル、他の竜たちも連れてきたから迎えに行くよ」


フラナヴァータを含めて五竜はF級冒険者、C級である私とともに依頼として行動するのはかなり難しいだろう。


ただジャンドゥーヤ迷宮にいる蝶人間(仮)が万が一魔王であった場合、戦力不足は否めない。


何しろレベルダウンする以前の私が五竜と共に戦い、存在を賭して封印した程なのだから。


今の私は、レベル187。


封印前の私のレベルは覚えていないけど、多分もっと上だったろうなって程度には未だに違和感がある。


いつまでも私のせいで封印されているのも悪いというのもあって彼らを開放したのだけれど、全員に仮初めの肉体を与えたのは間違いだった様な気がして来た。


素体になった竜たちすまぬ。


待ち合わせ場所である冒険者ギルド前で待っていると、四人がワイワイ騒ぎながらやって来た所だった。


赤毛に鋭い目つきの青年、ガッチリした黒髪の中年男性、プラチナブロンドをショートカットにした真っ青な瞳の十歳くらいの少女と、出る所は出て引っ込んでいる所はちゃんとくびれている青い髪と瞳の美女。


暗中の灯火シュリアード、創世の胎動アニカチャナ、始まりの吐息アルジュナーヴァ、母なる大海アイラヴェータが人化した姿だった。


やっぱり何処か私に似てるね。


これはもう兄弟従兄弟ですで通すしかない。


どんだけ食い扶持に困った寒村なのかと私たちの生まれ故郷が疑われる勢いだね。


それぞれシュリン、ニカル、アルシェ、アイナと微妙な偽名を名乗らせる事にしたけど、私が覚えられない気がしてならない。


ちゃっちゃと登録を済ませて門へ再び仮身分証を返却し、私達は宿へと戻った。


大部屋がもう一つ空いていたので、男女で分かれての逗留だ。


女部屋は私、フラウ、アルシェとアイナの4名、男部屋はラル、シュリン、ニカルの3名となった。


一気に大所帯だよ。


翌日私達は薬を買ったり、適当に装備品を揃えてラルをリーダーとして6人パーティーを組ませると魔封じの森へと向う。


ゴブリンやオーク、森魔狼や魔熊に角ウサギ、その他を一時間ほどで狩りまくってからギルドに戻ると、あっという間に5人ともE級冒険者に昇格した。


勿論狩り過ぎない様に配慮して、合間合間に他の森へ転移したりとちょっとズルいこともしたけど。


これでC級の私とも組めるね!


と言う事で色々と祝おう!となり冒険者ギルドの酒場でワイワイ騒いでから宿へと戻った。




翌朝リューネさんと落ち合って乗合馬車に揺られ、私達はジャンドゥーヤの町へと向かった。


「あのぉ、人数がかなり増えているのですけど?」


「気付いちゃいましたか?

皆フラナヴァータ、フラウ同様精霊で竜なのですが、右からシュリン、ニカル、アルシェ、アイナです。

みんな、このリューネさんは私の弟子だからね?ちゃんと覚えておくように」


そんなやり取りをしつつ町へとたどり着き、徒歩で迷宮へと向かう。


蝶の魔物が魔王であるなら、何かしらの罠や待ち伏せがあるかも知れないとかなり索敵などには気を使ったけど、特に何もなく迷宮の入り口に到着した。


アーストン同様入口付近は壁に囲まれ、入口前は広場になっている。


アーストンと違って転移の石柱がないので、神殿風の建物の左右には東屋がなかった。


そう言えば帰還の紋章をまだアニスに返してないね。


空魔法で転移可能となった私には不要の産物!


いやでも転移不能エリアとかあるダンジョンもあると聞いた事があるし、もしそうだったら紋章も空魔法も使えなくない?


あっれぇ?


人間離れを気にしていたけど、考えてみれば私は天人だし、素直にリューネさんへ相談しよう。


「リューネさん、実は空魔法のレベルが上がって空間転移が可能になったのですけど、ダンジョンって転移禁止エリアがあったりしませんか?帰還の紋章は別の仕組みで帰還出来るのだとしても、3つしかありませんしどうしようかと」


そう伝えるとリューネさんはとても冷静に、あくまでも一般論ですがと付け加えつつ、


「低位から中位のダンジョンには、そこまで凝った効果はないとされています。ジャンドゥーヤ迷宮はB級パーティーや実力のあるC級パーティーでも攻略可能なダンジョンですから、まず無いと思われます。

ですが空魔法はあまり使う方が居ないので、詳しくは分かりません。

通常のダンジョン内と隠しダンジョン、双方で試した方が良いかも知れませんね」


と説明してくれた。


まぁいざとなったら人種は帰還の紋章で、他の面子は召喚なんかで呼び出せたりしそうだよね?


特に五竜は精霊界経由での移動も出来そうだし。


いざとなったら迷宮に穴開けたり出来ないかな?


ちょっと物騒な事を考えたのが伝わったのか、

 

「出来るだけ穏便にお願いします」


と言われちゃった。


ちなみに別行動だった期間も夢は見なかったそうで、元気なリューネさんだった。


ダンジョンに入ると隅っこに移動して目立たない様に転移を試したけど、特に問題はないようだ。


嫌がるフラウにお願いして召喚魔法も使ってみたけどちゃんと発動した。


「取り敢えず平気そうですね」


と言う事でリューネさんの案内で隠しダンジョンへ向かうことに。


魔物はEやF級でも倒せるものばかりなので、あっという間に木の洞に到着した。


リューネさんも知り合った頃の三倍以上強くなってるしね。


「これはわざわざ入る人、いなそうですね」


「確かに」


そんな軽口を交わしつつ洞に入ると階段があり下っていく。


話に聞いた通りの部屋に入ると、何かを感じた。


「天術の転移陣?」


薄っすらと魔力が床や壁に染み付いていて、魔法の転移トラップになっているのが分かる。


「これダンジョンの転移罠じゃないよ!天人の仕掛けたものだ」


そう言い終わった時には皆部屋にゾロゾロと降りて来てて、光に包まれると何処かの遺跡みたいな所に転移させられていた。


「もうちょっと陣を読めれば色々と解析出来たんだけど」


そう呟きつつも、空魔法を試してみると問題なくダンジョンの外に出れた。


ダッシュで隠しダンジョンの階段を降り、最後の段から隠し部屋の術式を解析する。


明らかに天術である事


片道だけの転移で魔力感知も付与されている事


洞や階段に魔力感知で察知した魔力が全て部屋に入ると発動する事


送り先はこのダンジョン内である事


この4つが分かったけど、天術以外解析しなくても分かりそうな内容だけだよね?


ちょっと微妙な気分で皆の元へ転移した。


皆はちょこちょこと襲ってきた魔物を倒しつつ待っていてくれて、死体を収納した後遺跡へと向かった。



そこは見たこともない景色だった。


遺跡は石ともレンガとも違う硬い材質の壁や柱で出来ていて、窓らしき所には透明度が高いガラスに見えるけど、実際にはダイヤかと思うほどに固くて簡単には割れない素材で出来ていた。


建物の作り的には四階建てで、かなり大きな建物だった。


幾ら硬いとは言えかなり古いらしく、要所要所にヒビが入っていて、蔦が張ったり雑草が顔を出しているのは。


植物つえー。


神殿なのか住居なのか、それとも他の何かなのか全く分からず長年生きてきた五竜たちに聞いてみたけど、基本的に興味がない事は覚えていないらしく不明なままだった。


奏竜天女の鑑定の魔眼を使ってみるかな?


まずはガラスの様なダイヤの様な物を鑑定すると、


名称:強化水晶の窓


解説:ダイヤ並みの硬度に加え、柔軟性も兼ね備えた魔法物質。

失われた魔法文明によって作られた。


使えねぇ。


でもこうなる様な気はしていたよ。


建物もめげずに鑑定してみると、


名称:元密林公園事務所


解説:約一万二千年前に崩壊した封印都市ターラストの郊外にあった全天候型密林再現公園の事務所が遺跡化したもの。


「うそっ?!なんか超まともな答えが出たよ?!」


今までも無かった訳じゃないけれど、ですよね?って答えたくなる物が多かった中、封印都市とか一万二千年前とかめっちゃ具体的なのが表示されて鑑定した本人が驚いたね、これ。


「この建物は約一万二千年前に崩壊した封印都市ターラストの郊外にあった公園事務所なんだって」 


私が自信満々に説明すると、


「流石に人間の本や古文書では調べられないかも知れませんが、エルフや天人の様な長命種なら資料があるかも知れませんね」


とリューネさん。


他の面子は、「魔眼が仕事した?!」「珍しい事もあるもんだ」「流石主様」等々好き勝手言って騒いでる。


「でも公園の監理って事務所が必要なの?」


鑑定した本人が言う事じゃないかも知れないけど、役所なり持ち主なりが清掃員とか植木屋さんとかたまに頼めば良いだけじゃんね?


「王都の王立森林公園などはかなり広く手入れもされていて、管理費が莫大な事から入園料を取っていますし職員も複数居るので管理事務所があったと思います」


私の疑問にサラッと答えてくれるリューネさん。


流石物知りさん。


「え、公園に入るのにお金を取られるのですか?」


「ええ、姉が辺境伯家で働かせて頂いていますが、三女のマーシュリナ様付きメイドでして、王都に同行させて頂いた際に支払ったそうですので」


「と言うことはここも手が掛かる公園だったんですねぇ」


一応納得する事にして、管理事務所だった遺跡へと足を踏み入れる事になった。


なんかね?


私とラル、リューネさんを囲むようにシュリンが先頭、ニカルが右、フラウが左でアイナが後ろ、何故かアルシェが私にピタッとくっ付く陣形で進んでいる。


まぁ確かに五竜強いけど、何か違わない?


てかアルシェのこの位置は何?


私以外の面子は全く気にしていない様なのでまぁいいけども。


遺跡内は天井が光を放つ材質らしくそこそこ明るかった。


足元にはゴミの類が多少は落ちてはいるけど、長い間放置されて魔物も入り放題な環境には全く見えない。


「清掃機能とか残ってたりしてね」


「あり得ますね。光る天井もそうですが、古代遺跡には清掃機能や生産機能のある魔道具が起動している事も多いと聞きます。

清掃機能は時間で起動するものもあると言われていますね。

中には警備や警報の機能もあるようですが、ネーサの記憶だとそれらしき物は無かったと思います」


リューネさん、やっぱり役立つわ。


パーティーに一人は欲しい知識人だよ。


うちのパーティー、強いだけの竜とオークジェネラル、あと記憶喪失の天人と言うアレな組み合わせだし。


ギルド辞めてうちに来ないかなぁ。


そんな事を考えていると、ラルの視線が何か痛かった。


「千年以上の時を生きるのであろう?学ぶ事も大事だぞ?」


あ、凄く心配されてる気がする。


「はい、すみません」


リューネさんは知識系のスキルもいくつか持っているけど、それって勉強して芽生えさせた物も多いだろう。


ポイントを貯めてスキルを取得してからササッと勉強して終わりの天人とはスキルの重さが違うよね。


遺跡探索とは思えないほど気楽に進んでいくと、リューネさんが「ここです」と歩みを止めた。


両開きの金属扉があり、その上に看板らしき物があるけど知らない文字なので読めない。


「私の出番だね!鑑定!」


名称:看板

解説:危険な為、関係者以外立入禁止と書かれた看板。


微妙な敗北感に駆られながらも取り敢えず説明すると、みんなそれぞれ頷いたり、まぁそんなもんだろ、ドンマイ!と声を掛けられたりした。


「鱗粉を使った攻撃なども考えられますから、風の守りを…」


「主、任せて」


みんなにちょっと警戒して貰おうかと口を開いたら、サラッとアルシェが魔法を発動させる。


あー、この為に私の横に居たのね。


全員に強力な風の守護が広がり、各々が武器を手にすると、シュリンに変わってニカルが門を開ける。


ちなみにシュリンは火、ニカルは地で、アルシェが風雷、アイナが水でフラウが冬、つまり冷気や氷雪だ。


一頭だけ季節の精霊なのが解せないけど、まぁいい。


どうせろくでもない理由で仲間になったんだろう、感動展開とかあるわけ無いしと、ぼんやりした記憶ながら自分の行動パターン的に想像出来る。


門を開くとかなり奥行きがある広々とした部屋になっていて、左右に5列ずつ先程の強化水晶で出来た筒のような物が奥までズラッと並んでいた。


中には液体が満たされた物や割れたもの、空だったり何か干乾びて落ちていたりと様々だったけど、中には明らかに人型だけど人じゃないものが液体の中で浮かんでいる筒もある。


その列の真ん中は幅10メートルはある広い通路になっていて、奥へ延々と伸びていた。


「ここは嫌な場所だ」


直感的に私が呟くのと、ザッと複数の何かが筒の影から飛び出して来るのはほぼ同時だった。


魔力感知には引掛ならなかった。


蟻に似た人とも、人に似た蟻とも見える物や、カマキリ、バッタ、カブトムシにクワガタムシなど。


何れもそれぞれ部位は異なるけど、人の特徴を持つ昆虫たちだ。


獣人の昆虫版と言えば分かりやすいかな?


手というか足の数はそれぞれ6本あるけれど、人間に似た指や何処と無く似た顔を持ち、それぞれ昆虫を模した鎧でも着ている人種なのではないかと思える出で立ちだったのだ。


聞き取りにくい何かよく分からない言葉を掛けられたけど、語気的に警告か怒りに近いものだろう。


「誰か言葉がわかる?」


と竜たちに聞くと、


「警告。出ていけ。攻撃すると言ってる。10、9、8…」


とアルシェが答えてくれた。


てかもろにカウントされてるね。


「生体警備機能?!」


リューネさんが驚きの声を上げる。


「ゴーレムやアンデッドなど魔法文明やその魔術魔法の流派で異なりますが、魔物を警護の機能として使う遺跡は多くあります。ですがこんな初級から中級向けのダンジョンにそのような物が?!」


やはりリューネさんは凄い。


どちらにしてもこの先に居ると思われる蝶だか蛾の魔物は倒さないといけないので、戦わないと言う選択肢は無かった。


言葉が通じないしね。


あ、アルシェに通訳してもらえばいいのか?


気付いた時には戦闘が始まって終わっていた。


焼かれ、凍らされ、溺れさせられ、破裂させられ、潰されて、虫人間達は全滅していた。


「ちょ?!早いから!リューネさんの敵討ちなんだからもうちょっと考えて戦ってね?!」


出番のなかったラルとリューネさんは呆気に取られてるし。


「流石先輩達であるな」


あ、ラルはめっちゃ熱い視線を五竜に送ってるよ。


「こ〜んなに簡単に倒せるとは思ってなかったのよぉ〜」


アイナの言葉に他の竜たちも頷いている。


「確かに魔王絡みならこんな簡単にはいかないよね。やっぱり違うのかな?」


疑問に思った私はまたもや鑑定を試みた。


一番原型を留めているバッタを鑑定してみると、


名称:昆虫人間の死体

溺死したバッタ型昆虫人間の死体。


と出た。


何となく分かった様な分からない様な?


「もうちょっと待ってて」


と先へ進みたい面々に声を掛け、今度は人型の何かが浮いている筒を鑑定してみた。


名称:昆虫人間培養装置

解説:密林公園用の清掃、警備、保全などの為に開発された魔道具。

人種と昆虫の精気を掛け合わせた物を成体まで育成する培養器。


精気と言うものが何なのか今ひとつ分からないけど、誰か、恐らく古代人が人工的に人と昆虫の亜種、亜人を生み出す魔道具を作ったと言う事か。


「さっきのは魔物じゃなかったよ。人と昆虫を魔道具で混ぜ合わて作った警備兵だったんだ。

そしてこれがその魔道具って事みたい」


嫌な場所だと感じたのは間違いなかった。


ここは歪んでいる。


「そんな恐ろしい事が?!」


リューネさんもびっくりする発見だったみたいだね。


「まさに亜人だったんだよ。

リューネさん、悪いけどこの魔道具に関しては報告するのは止めておこう?

冒険者ギルドは何もしないかも知れないけど、頭のおかしい錬金術師や王侯貴族なんかの手にこれが渡ったら危険過ぎる」


リューネさんは一瞬悩んだ様だけど、すぐに「そうですね」と納得してくれた。


「過去にも悪用された遺跡の魔道具や古代の知識がありました。

発見したのは冒険者でしたが、情報を得たり魔道具や書類を手にした軍や魔術師が大災害を起こした事もあります。

これは神々のお怒りに触れる物だとわたしでも分かりますから」


神々は特に神託を送って来ていないけど、まぁそうだろうね。


筒は全部管やら何やらで繋がっていて、収納しようとしたけど出来なかった。


筒の中にまだ生きている個体がいるのかも知れない。


「来る」


唐突にアルシェはそう言い、風の壁を前方に張り巡らせる。


魔力は感じないけど、確かに奥の方からヒラヒラと蝶に似た物が何かを言いながら飛んでくるのが見えた。


鑑定!


名称:昆虫人間(蝶型)

レベル:73

解説:蝶と人間の精気を掛け合わせて作られた昆虫人間。

蜜を好むが他の生物の体液もストロー状の口で吸う。

鱗粉には催眠、誘眠作用があり、いくつかの魔法を使う。


うん、やっぱり魔王じゃない。


それは他の昆虫人間以上に人に近い姿をしていた。


背に巨大な紋白蝶の羽を持ち、人種の女性の裸体にも似て胸があり、ほぼ人間と変わらない手足がある。


脇の下から退化した腕のような物も見えるけど、殆ど使い道はないように見えた。


よくよく見れば白い繊毛の様な物に覆われている。


人の目に似た形状のそれは複眼になっており、口はストロー状になっていた。


「ネーサの敵!」


〈今こそリューネとお姉様の恨み、晴らしてみせます!〉


リューネさんの声と弓の声が響く。


弓の声を聞くのはめっちゃ久々だね。


「灼熱の矢!」


矢はつがえず、青に近い炎を魔法の矢として放つリューネさん。


弓は魔法の威力もかなり増幅する性能が樹王に与えられている。


そして弓そのものがノリノリな影響なのか、矢と言いつつほぼマーレンさんの破城槌と同じくらい太い炎になっていた。


フワフワと回避しようにも炎はその動きに合わせて飛び、蝶人間に触れた瞬間爆発的な熱量を放って焼き殺した。


熱波はそれだけに留まらず、培養装置にまで波及する。


硬質なはずの強化水晶が砕け、溶け始める。


魔力操作も強化にだけつぎ込んだって事か。


「フラウ!」


「かしこまりました!」


フラナヴァータに命じて風の障壁の上から冷気の壁を作らせ、熱をこちらに来ないようにした。


「シュリン!」


「おうよ!」


今度はシュリアードに命じて炎を消し熱を奪わせる。


リューネさんは燃え落ちた蝶人間の燃えカスを見つめつつフラリと倒れそうになり、ラルが慌ててその身を支える。


魔力の殆どを使ったんだろうね。


そんなリューネさんの呆然とした姿を見て、誰かがほくそ笑んでいるような気がした。


何故かそいつに対して無性に腹が立つ様な、それでいて悲しい様な、変な気分に陥る私だった。

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