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その23 これは良い物だ

その23


翌朝、十一階層から下へ向かう為にラルの武器を変える事にした。


十一階層から下は魔法金属のゴーレムも出てくるので、魔法金属の中では比較的柔らかいミスリルの大剣で戦い続けるのがちょっと厳しいかも知れないのだ。


まぁ、普通の冒険者はスキルやギフトで工夫して普通の鋼鉄の剣でも倒しているらしいけど。


アシュリーナさんなら拳で行けちゃいそうだしね。


ちなみに私のレベルは先日の開放である程度アシュリーナさんを超えたと思う。


でもスキルやギフト、そして何より研鑽されてきた技や猛者との戦闘経験の差があり過ぎて、まだ全然勝てる気がしない位彼女のほうが強いのが分かる。


レベルや位階がそのまま強さって訳じゃないって言うのは本当だよね。


彼女より上位にいるA級やS以上の人達は絶対におっかないに違いない。


話は逸れたけど、硬度と重さは随一のアダマンタイトの大剣とか普通に買える品ではないし、硬さと重さは負けるものの魔法適正や精神感応性が高いオリハルコンの大剣でもやっぱり買えない。


精神感応性って言うのは共感率と言うか意志の力と言うか、その辺が扱いやすさや武器の性能に追加される事もあるなんか凄い性能の事だ。


アクセサリーなんかでも魔法やスキルに影響すると言われて稀に使われてる。


主に王侯貴族の中でも上位者たちだけだけども。


ちなみに二人の手持ちのお金を掻き集めて、ミスリルの大剣を売ってもそれで買えそうなのはオリハルコンやアダマンタイトの小剣か片手剣くらいだ。 


ミスリルも高いけど、他の2つはアホみたいに高いのだ。


ダンジョンの深部なんかで宝箱から出てくる事もあり、見つけた本人が使うか、オークションや高級な武具屋などでしか手に入らない事になる。


何故持っているのか不明な武具をいくつか売れば買えるだろうけど、そもそもその辺で売ってないからホイホイ買えないって事だね。


と言うことで謎武具の中からオリハルコンのバスタードソードを取り出した。


いわゆる両手でも、頑張れば片手でも使える大型に部類される剣なんだけど、グレートソードとも呼ばれている大剣よりは小さい。


私の謎武具は剣類よりも鈍器や斧などにやや偏っているみたいで、アダマンタイトの剣は片手剣と小剣くらいしか無かったのだ。


ヒヒイロカネなんか刀と刀身が短い両刃の直剣しかないし。


てか東の大陸でしか得られないらしいヒヒイロカネをどうやって私が手に入れたのか?


考えないようにしようと思う。


あとはドラゴンやフェンリルなんかの牙や爪を使った武具なんかもあるけど、多分ラルとは相性が悪い。


上位の魔物素材は持ち主との相性が強く出る。


一節にはある程度意思のようなものが宿っているのではないかと言われてる位だしね。


まともに倒した人が剥ぎ取ったり、本人ならぬ本竜(フェンリルなら本狼?)から貰った場合は下手な金属より強いけど、卑怯な手で倒していたり、無理矢理奪った物は下手すると呪われる事もあるのだとか。


生物界最高峰と言われる竜や魔狼の頂点であるフェンリルが、自分を倒した訳でもないオークジェネラルに力を貸してくれるとは思えないんだよね。


「そこでこれです!」


とラルにオリハルコンのバスタードソードを見せると、


「何がそこなのか分からぬが、それを使えと言う事か?」


ちょっと嫌そうな顔でバスタードソードを受け取るラル。


でも鞘から刀身を抜き出すと、何処かうっとりとした表情になり、 


「これは良い物だ」


と頬擦りしそうな位に気に入ってくれた。


何こいつ、こんなんだったっけ?


実は呪われた魔剣だったとか?


鑑定してみたけど全く問題ないいくつか魔法が付与されたオリハルコン製のバスタードソードだったけど、金属の持つ特性、精神感応が変な方向に働いているのかな?


ミスリルの大剣は収納してから朝食を済ませ、私達はまたもやアーストン迷宮へと踏み入れるのだった。




アーストン迷宮の九層、石柱の間に出ると十階層へと降りる。


十階層のボスはミスリルゴーレムだそうで、全身鎧を着た騎士の様な姿なのだそうだ。


ただしサイズが明らかに人間より二周りほど大きく、振るう剣もでかいとか。


ボス部屋へ至るまでは九層と同じ貴石で形態が一部増えて、またもや狼型の物も現れた。


弓を使うゴーレムも追加され、戦術的に段々と巧妙になってくる。


剣士や戦士が前衛を、弓師が後衛、狼が遊撃とちょっと面倒臭い。


まだ攻撃魔法が普通かちょっと弱まる程度の効果があるけど、抵抗力が高い魔法金属系のゴーレムたちにこれをやられたらかなり危ないね。


マーレンさんは風の障壁を強めに張って矢を反らし、私達は矢をそれぞれの武器で叩き落とす。


タイミングを誤ると剣や牙の攻撃を受けてしまうので、立回りも頭を使い連携しつつ倒していく事になった。


ちなみにラルは初めて使ったとは思えない程にバスタードソードを上手く操り、満面の笑みすら浮かべて戦っていた。


何これ怖い。


マーレンさんも同じことを感じたようで、チラッと私に目を向けて来たけど、黙って首を横に振っておいた。


いつもよりもかなり時間を掛けてボス部屋へ到着すると、部屋の中へと入る。


五階層と作りはほぼ同じで、魔法陣が出現しボスが現れるのまで同じだった。


魔法陣が現れた時点でマーレンさんは樽をいくつか収納から取り出し、自分の後ろに置く。


ボスは話に聞いた通り下位巨人くらいありそうな全身鎧の騎士だ。


騎士は盾は持っておらず、大きな剣を抜くと両手で構えた。


こちらの様子を伺っているのか、無闇に攻撃して来ない。


「水縄!」


マーレンさんが水で出来た数十にも及ぶ縄が鎧騎士へと襲い掛かる。


剣で水縄を切り裂き、鈍重そうな体を身軽に動かして回避するけど余りの数に避けきれず水の縄が次々とその体に巻き付いた。


「…よし、今です!」


「急速冷凍!」


マーレンさんの合図に私がそのまんま過ぎる術名を告げ、魔法を発動させた。


鎧騎士を中心として急速に気温が低下し、その身を縛る水の縄が凍り付く。


本来他人の魔力で出来た水は凍らせる事が出来ないか、かなりの魔力を消費するけど、マーレンさんは騎士に巻き付いた水を自分の魔力で作り出した物から、こっそり水樽の中身へとすり替えたのだ。


ミスリルその物は魔法抵抗力が高い為、凍らせる様な魔法に抵抗されてしまう可能性が高い。


だから本物の水を纏わせてそちらを凍らせ、動きを鈍らせる事にしたのだ。


明らかにあちこちが凍りつき、動きが鈍り始めた騎士へラルがバスタードソードで突きを入れる。


「猪突!」


オークジェネラルの剣技のようなものなのか、剣を自らの腹部より少し上辺りに構えて体ごとぶつかる様にバスタードソードを突き入れた。


パリパリと音を立てつつ氷を砕いて剣で受けようとするけど、速度がまるで追いついていない。


オリハルコンのバスタードソードはラルの意志を受けて仄かに赤い輝きを放ちつつ、ミスリルを穿いて下腹部へと突き刺さり背部から切っ先が飛び出した。


防御を捨てて完全に騎士の間合いに入ったラルに、ミスリル製の剣が振り降ろされるけど、そこで私の出番である。


「うぉりゃっ!!」


やや動きの鈍いミスリルの刀身をウォーハンマーの槌で強く弾いた。


軌道がズレた剣がラルから逸れて振り降ろさた瞬間、ラルは何を思ったのか突き刺さったままのバスタードソードを上へと斬り上げた。


「斬り裂けっ!斬鉄っ!」


ラルが吠える。


でも構えが悪い分力が入り難く、無理に斬り上げても突き刺さった状態なので相手の体を持ち上げる事になってしまうだろう。


いや、そこは剣を抜いて下がる所でしょうよ?


いくら強靭な肉体を持つオークジェネラルでも、あんな金属の塊を変な体勢で持ち上げたら、腰やらあちこちの関節や筋肉を傷めかねない。


流石にオリハルコンでもミスリルの鎧相手にそれは悪手だよ?!


そう思ったけど、バスタードソードはラルへと応える様にその刀身を先程とは比べ物にならない深紅の光を放ちながら、ギャリギャリと嫌な音を立てて胸へ至りそのまま止まる事なく左肩へと斬り上げた。


何これどういうの?!


いや、相手はミスリルで鉄じゃないけど剣術の技の中にはありそうな名前だね。


てかあるのかも?


魔力なしで斬撃飛ばすとかも見たことある様な気がするし。


鉄をも斬り裂く剣と聞くと、鉄より硬いものは切れない様に思えるけど、「鉄の如き【硬いものすらも斬る】」技なら、全く意味は違ってくる。


その上使用している剣はオリハルコンだ。


技と剣が重なり合えば硬度が下位に当たるミスリルを斬れるのは道理かも知れない。


これもその一つなのだろうと私は思う事にした。


ミスリルの騎士は剣を取り落し、それに釣られるようにフルフェイスの兜やそれぞれの部位がガラガラと音を立てて床に落ちる。


どうやら中身は無かったらしく、動く鎧状態だったらしい。


ゴロンと握り拳大の銀色な魔石も石床へと転がり落ちた。

  

ミスリルの人型ゴーレムが入ってたら、流石にこうも綺麗には斬れなかっただろうしね。


「ラルさん、凄いですね!

かなり高位の剣技だったので驚きました」


剣技って言うのは、剣術スキルの技の略称ね。


「初めて使う技ではあるが、この剣なら応えてくれる。

我にはそう思えたのだ」


「いやそれほぼ賭けじゃないの。

命のやり取りをしている以上危険は付き物だけど、今後はこんな無茶な事しないでね?」


「サラ様やマーレン殿の援護を信じておったのでな。

しかし心配を掛けてしまったようだ。すまぬ」


とラルは頭を下げた。

 

「まぁいいけど。

『神々よ。我が友を癒やす奇跡を与え給え』」


万が一を考えてラルに回復魔法を掛けてから、魔石や鎧を回収する。


すぐって訳じゃないけど、ダンジョンに吸収されたら困るからね!


回収が済むと魔法陣が床に描かれ、宝箱が現れた。


鍵と罠が無いことを確認してからマーレンさんに開けてもらった。


宝箱の中にはミスリルで出来た細いネックレスチェーン、群青色のドロドロとした液体が入った小瓶、ミスリル製の円盾が入っていた。


よし、今回は鑑定してみよう。


前回収集した貴石や鉱物が多過ぎて鑑定が面倒だった訳じゃないからね?!


ネックレスチェーンは状態保存と簡単な毒や魔法耐性が掛けられていて、円盾はいわゆるバックラーと呼ばれる片手に装備して使う小さめの盾だ。


同じく状態保存と弱い防御力強化の魔法が掛けられている。


薬品は勿論マーレンさんが鑑定してて、


「これはっ?!鉄を魔鉄に変える触媒、魔鉄薬じゃないですか?!」


どうやら錬金術の薬品らしく、安い鉄を魔力のこもった鉄に変える時に使われる触媒らしい。


魔鉄は普通の鉄と比べたらそれなりの値段で売り買いされているものの、ミスリルなどよりずっと安価で魔法付与も本当に僅かしか出来ない品で、この触媒を作る材料費や労力の方が高いと研究開発されたものの、結局売り出される前に作られなくなった幻の薬らしい。


「これはレアですよ!

何しろ試作品位しか存在していませんからね?!」


凄く微妙な幻の品だったけど、喜んでくれて何よりだ。


私達は石柱の間で登録して、少しの間お茶とお菓子や果物を楽しんでから十一階層へと降りた。


十一階層はミスリルゴーレム、ゴールドゴーレム、エメラルドゴーレムの3種類が出没する。


人間大のノシノシ歩くその姿に安堵感を覚えるのは何故だろう?


ゴールドゴーレムとエメラルドゴーレムは魔法金属ではないので、マーレンさんが魔法メインで倒し、ミスリルゴーレムを私達が担当する事になったけど、ミスリルゴーレムの数がかなり少なく、他の階層に比べて急に増えて来た冒険者たちの影響もあってあまり戦わずに十二階層へと進んだ。


なおミスリルゴーレムはラルの剣技でなくとも、アダマンタイトのウォーハンマーと剛力で十分行けたのは安心した。


十二階層はプラチナゴーレムが加わり、ミスリルゴーレムの数も多少増えていた。


その分冒険者も増えて来て、他の階層ほど遭遇する事もなく、かなり迷宮の広さも増しているのに予想より早く石柱の間へと着いてしまった。


「十三階層からは冒険者の数も減りますから、今日はもう戻って明日早朝から来ましょうか」


マーレンさんの意見に私達は賛成し、ユグヌスクさんの別邸へ今日も泊まった。


早めに食べて早風呂で済ませ、ぐっすり眠った翌早朝、まだ空が暗い内からアーストン迷宮へと向かった。


十三階層はプラチナゴーレム、ミスリルゴーレム、ミスリルゴブリン、ミスリルウルフと、サファイア、ルビーのゴーレムが出現する。


冒険者は早朝な事もあって殆ど見当たらず、私達はウハウハ状態で駆逐して行く。 


ミスリル系のゴーレムたちの数も増えたけど、その分レベルや難易度も上がっているので、この階層からは冒険者が減るらしい。


ダンジョン自体も広くなっているので、歩いては遭遇してを繰り返して行くようになった。


「作業みたいになって来ましたね」


「ええ、この手の迷宮は敵の強さよりも自身の精神力との勝負になってきますね」


無言で嬉しそうに剣を振るうラルは良いとして、私とマーレンさんは無心でモンスターを倒し回収して行く。


石壁や床に亀裂があり、そこに草が生えているのが見られるようになって来た。


マーレンさんはその時だけは喜々として薬草採取をしていた。


そして十四階層に辿り着く。


ここからはルビーやサファイア、プラチナが居なくなり、ダイヤモンド、オリハルコン、アダマンタイトのゴーレムたちが出没する。


丸っと入れ替わりだね。


いずれのゴーレムもヤバかった。


硬いし強いし、ダイヤモンドゴーレム以外魔法の効果がほぼない。


マーレンさんは魔法を足止め程度に使い、私は身体強化も使って殴り、ラルは剣技を使ってどうにか倒している様子だった。


「この感じだとボス戦は厳しいかも知れないですね」


数度の戦いを経て疲労を覚えた私は、そう皆に声を掛けた。


「ぬ?目的を忘れたのか?

依頼の達成、魔道具の材料集め。

この2つが主な目的だったはずだが」


 「確かにそうですね。

依頼はすでに達成していますし、材料も予想以上に手に入っていますから、当初の目的はすでに達成しています」


「かなりの勢いで階層を突破してきたから、最後まで行かなきゃって思い込んじゃってたけど、言われてみればそうですよね。

十五階層のボスを倒さなくても石柱があるからまた必要な物を必要な分だけ狩ることも出来ますし」


「それでは少しだけ試したい事があるので、それをしたら戻りましょうか?」


「そうですね。店もずっと閉じている訳にはいきませんし」


「了解した」


そんな訳で十四階層へと戻る階段付近まで戻ると、いくつかスキルや武器性能の実戦テストを行った。


ボス戦や奥へ進む余力を考慮する必要が無くなったので、他の冒険者もいないしやりたい放題だ。


そして夕方前には迷宮を出ると、今日はゆっくり休む事にして、明日朝一で仕分けをし、冒険者ギルドアーストン支店で売り払ってからディーアの町へと戻る事になったのだった。


オリハルコンやアダマンタイト、ミスリル騎士の残骸は驚くほど高額で売れて、初めて白金貨を手にしてしまった。


もうちょっと強くなれたら最後のボスも倒しに行きたいな。

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