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その22 水晶鬼

その22


ユグヌスクさんは少しゆっくりしたいそうで自分の部屋へ向かい、私達はアーストンの冒険者ギルド支店へと向かった。


ざっと魔王の種と亜人王の事を手紙に書いて、アニス宛に送る事にしたのだ。


伝え聞いた情報な上に私達が出来る事が特に思いつかない以上、何かしら刺激を受けて過去の力を取り戻した方が良さそうだし。


私達が依頼する形ではなく、以前受けた依頼の補足である事を説明すると早馬で送ってくれる事になった。


そして昼前にはアーストン迷宮近くで軽食を食べ、右の東屋から四階層へと向かう。


転移すると四階層の石柱の間へ出たので、そのまま隣の階段を降りて五階層へと向かうことにした。


「これから向かう五階層の最奥部、六階層への階段と石柱の間の手前にボスの居る部屋があります」


マレーンさんが再確認する為に私達へ説明してくれた。


「ボスを倒した人たちだけだと、その部屋を通らなくても直接石柱の間や階段まで行ける通路が使えるんでしたっけ?」


「ええ、そうなります。

それと一度ボスを倒した人たちがボス部屋に入ってもボスは出て来ませんが、倒した事がない人が入るとボスが現れる仕組みになっています」


「転移用の魔法陣とか魔道具がありそうですよね」


「えぇ、是非解明してそんな魔道具を作りたいですね!」


マレーンさん、前々から感じては居たけれど、どうやら薬品や魔道具関係の事には凄く熱くなる人らしい。


反面他はめっちゃアバウトと言う、両親、特に母親に似て凄く分かりやすい人だな。


「なお出現するボスモンスターはクォーツゴーレム、別名クリスタルオーガ、水晶鬼です。

見た目はオーガですが、水晶を使った魔法も使いますので気を付けて行きましょう」


「おー!」


「うむ!」


五階層は岩系のゴーレムが消え、代わりにブロンズゴブリンやブロンズウルフが加わった。


カッパーに比べてブロンズも強さがあまり変わらない。


と言うか今朝一気に30レベルも解放された私としては、かなり弱く感じていた。


元々余裕だった事もあり、五階層の最奥部、ボスの間へはすぐに辿り着いた。


ちなみに新たに解放されたギフト、マップはまんま地図が脳裏もしくはウィンドウ表示出来るものだった。


目の前に光の板として出しても、他の人には読めないらしいけど。


野外と室内、ダンジョン内と表示を変えることが出来て、野外だと行ったことのある地域は詳細に、それ以外は大雑把に表示される。


室内は入った部屋や歩いた廊下などが表示出来て、ダンジョンも同様に一度自分が踏み入れた所のみ表示可能となっていた。


このダンジョンでは最短ルートを進んでいるので、マップを表示しても枝道や部屋など通る必要がなかった所は一切出てこないし、まだ踏み入れていない目の前の通路も表示されない。


縮尺もある程度自由に出来るし、ダンジョンで道に迷う可能性が減るっていいよね。




大きな石造りの門の前に立つと、ゴゴゴと重い音を立ててボス部屋への門が開いた。


ボス部屋は50メートル四方、高さは10メートルほどでかなり広い。


私達が室内に入ると門が勝手に閉まり、部屋の中心に魔法陣が現れた。


ラルが大剣を抜き、私はウォーハンマーを構え、マーレンさんが後ろで魔法の準備をする。


何でも魔法陣から出てくる時は防御魔法でも発動しているのか、物理でも魔法でも全く攻撃が効かないんだって。


石柱の転移魔法と同じなのか、魔法陣の上の空間が一瞬歪み、気付けばそこに身長2メートル以上ある水晶の鬼が立っていた。


手には水晶の棍棒を持っている。


普通のゴーレムは顔かな?って程度の造形だけど、このゴーレムは無表情ながら目鼻口が存在していて、口からは牙すらも見えている。


流石ボスだね!


魔法陣が消えるとラルが大剣を掲げながら走りより、大振りで振り下ろす。


水晶鬼は思った以上に素早く反応して棍棒でそれを受けた。


水晶の棍棒なら余裕で砕けるでしょう?と思ってたけど、ヒビ1つ入らない。


魔法武器みたいな物だと思った方が良いかも知れない。


私もラルとほぼ同時に動いていて、大剣を受けたまま両足で踏ん張っている水晶鬼の左膝へウォーハンマーのピッケル部分を力一杯打ち込んだ。


流石にアダマンタイトのウォーハンマー。


私の筋力がレベルアップや剛力スキルで135に上がった事もあり、深々と突き刺さって膝を砕いた。


受けの姿勢を維持出来ず、体が左に傾いた所で私はバックステップで少し下がる。


間髪入れずにマーレンさんの地魔法、岩の破城槌をブチかます。


丸太のように太くて長い岩が水晶鬼の左胸を強打して、数メートル吹き飛ばし、かなりの重量なはずの水晶鬼が、その断片を撒き散らしながらクルクルと宙を舞う。


石畳に乾いた音を立ててアチコチが砕けた水晶鬼に、ラルが高速で近付いて大剣を横に払い、起き上がろうともがいていた首を叩き切った。


頭が床を転がり、水晶鬼の体から力が抜けて砕ける。


私は大小様々な大きさの水晶塊とそこから転がり出た魔石を次々と収納すると、最後に何故かほぼ傷がない頭と棍棒を収納した。


「なかなかに良い連携が取れましたね」


「うむ、この様にして戦うのも気持ちが良いものだな」


「マーレンさんのあの魔法、城を攻撃する時の物ですよね?良い勉強になりました」


マーレンさん、ラル、私とそれぞれに感想を口にしていると、再び床に魔法陣が現れて大きな宝箱が出現した。


魔法陣が消えると私は斥候術で罠や鍵を確認する。


「鍵も罠もないようです」


と私が告げると、


「ではラルさん、貴方が止めを刺しましたし、是非開けてください」


とマーレンさん。


「相分かった」


ラルはそう言うと大剣を鞘に納めて宝箱の蓋をパカッと開けた。


宝箱の中には刀身が水晶の短剣、何かドロッとした液体の入った小瓶、涙型にカットされた水晶のペンダントヘッドが1つずつ入っていた。


短剣は鞘がなく剥き身のままだった。


危ないよね。


小瓶はマーレンさんが手に取って鑑定を始めたけど、短剣とペンダントヘッドは鑑定しないで収納した。


「これはトロールのエッセンスですね。飲むと一時的に再生能力が上がり、多少の部位欠損すら治せる凄い魔法薬です」


とても嬉しそうに語るマーレンさんに、


「それはマーレンさんが貰って下さい。ラルいいよね?」


「構わぬ」


「いや、ダンジョンアタックで得た品々はパーティーの財産ですからそんな悪いですよ」


「でも珍しい薬なんですよね?

構いませんから貰って下さい。

このダンジョンで薬品や薬草を手に入れた場合は非常時以外マーレンさんの物にするって事にしましょ」


「うむ、それで良いぞ。

些事は全てサラ様に任せる」


いや、最後のラルのセリフは何か眷属として間違ってないかい?


とりあえずそんな感じで新ルールを決めて、私達は石柱に登録した後、六階層へと下った。


六階層からは出没するゴーレムが変わり、人間大のクォーツゴーレム、シルバーゴーレム、アゲートゴーレム、クォーツゴブリンとシルバーゴブリン、そしてアゲートゴブリンに各種ウルフまでと種類が増えまくった。


アゲート系は瑪瑙類で色合いなどで赤瑪瑙や紅縞瑪瑙、苔瑪瑙や黒瑪瑙など宝飾品として使われる物も混じっていて、多分きっと懐的にかなり美味しい。


ゴーレムのレベルも上がっているのか、上層部のそれよりも動きが良かったり力が強かったりしたけれど、それでも私達の相手ではなく次々と倒していく。


今回も10階層のボス部屋へ極力真っ直ぐ向かう方向で話は決まっていたけれど、大部屋の前を通った時に複数のゴーレムを見かけると思わず入って倒してしまい、石柱の間まで結構時間が掛かってしまった。


下層へ向かうごとに徐々に迷宮は広くなっているそうなので、その影響もあるんだろう。


すでに3キロ四方に近いサイズはあるだろうね。


上の階層では極たまに冒険者パーティーとすれ違う事もあったけど、六層では脇道や部屋へ入る頻度も増えるのか、音や話し声がたまーーに聞こえる程度になっていた。


罠らしい罠はかなり下の層に行っても殆どないらしいので、一応調べてはいるものの解除や回避をしなくて良い分早く進めるしね。


戦闘が合間合間に入るから、それと収集で時間を食っている感じかな。


七階層は瑪瑙系が減り、色の着いた水晶系が湧くようになった。


黒水晶、茶水晶、黃水晶に紫水晶、緑の水晶に金粉が混じっている様に見える砂金水晶、中には別の鉱物が針のように見える針水晶や色合いの混じった紫黄水晶なんかのゴーレムも出てきた。


うほー!


滾りますとも!


まぁこれも純度や透明度なんかで全然価値は違うし、宝石価値のある物は少ないらしいけど。


でもクズ石でも魔道具の材料や平民向けの普段使い用の安価なアクセサリーにはなるそうなので、出来るだけ砕けた分も回収する。


石柱の間に着いた頃にはかなりの時間が経過していたので、一旦町に戻る事になった。


屋敷に戻るとユグヌスクさんはすでに居らず、夕飯を済ませてお風呂に入るとすぐに寝た。


翌朝は朝食を済ませると一旦収納内の整理をしたいので、庭にゴーレムたちの残骸を出して私とマーレンさんが鑑定し、ラルがそれを手伝った。


魔道具の材料用と宝石や余剰分として売る用、依頼を受けた分のとに分別してみると、やはり価値が高いものは少なかった。


まぁ種類が多い奴は20体以上、少ない物も途中ちょっと寄り道して頑張って探したから10体以上狩っているので、それでもかなりの金額にはなるんだけど。


昼過ぎには仕分けが終わり、ついでに短剣やペンダントトップ、そして水晶鬼の頭も鑑定してみる事になった。


短剣は魔法武器ではあるけど見た目重視のものだったので売る事になり、ペンダントトップも多少の魔法付与はあったもののそこまでの品ではないので売る事に。


水晶鬼の頭は鑑定すると、


名称:クォーツオーガの頭部

解説:クォーツオーガが魔法使用前に倒した場合にのみ得られる特殊な物。

状態保持の魔法が込められており、破壊は難しい。

不純物が少なく透明度が高い為、水晶としての価値も高い。


と出た。


水晶として価値は高いけど、状態保持で加工は出来ないって意味ないような?


価格が今ひとつ分からず、冒険者ギルドで見てもらう事にした。


「やはりサラさんの収納は凄いですね。私では普段入れている分を考えると、これ全部はちょっとキツイですから」


「とりあえず一時的に売る予定のある価値のある物と依頼の品、あとはクズ系は私が持つので、魔道具になりそうな物はマーレンさんの収納にしまってもらって良いですか?ギルドで出すときに大変なので」


「えぇ、構いませんよ」


と言うことでアーストン冒険者ギルド支店へと向かい、事情を説明して裏手の解体所でゴーレムを次々と取り出した。


収納持ちは居るには居るものの、この数は珍しかったらしく職員さんにちょっと引かれた。


まぁ、これでも魔道具用は抜いてあるんですけどね?


それと水晶鬼の頭は傷が無い物は珍しいらしく、オークションに出す事になった。


私達はまだダンジョンに潜りたいのでオークションは全部お任せだ。


短剣とペンダントトップも無事に売れて、大金貨がまたもや登場することになった。


「水晶の頭部は別としまして、その他の査定結果は大金貨6枚、金額9枚、大銀貨6枚となります」


ちょっと色を付けてくれたそうで、3人で分けやすくしてくれたのは有り難い。


何でもここまで持ち込む人は少ないので、かなり助かったそうだ。


ただ今後も同じ石や金属のゴーレムを持ち込んだ場合は、ここまで高くは買い取れないだろうとの事だった。


まぁ市場とかあるだろうし、仕方ないよね。


帰るころにはおやつ時だったので、カフェ的な所に立寄って甘味とお茶を楽しんだ。


明日は八階層だ。


ちょっと急いでボスを倒したいかも知れないね。


ちなみに魔道具用の金属や貴石は、また混ざると面倒なのでしばらくマーレンさんに収納しておいてもらうことになった。


使いまくればスキルレベルが上がるかも知れないしね。




翌朝私達は八階層への階段を下っていた。


八階層からは水晶系のゴーレム以外は全て入れ代わり、緑の貴石ペリドット、水色の宝石アクアマリン、青や緑に黒や茶色が所々混ざったターコイズなどのゴーレムが出没するようになった。


硬さ基準ではないようだし、適当に分けた感じがするけど気にしない。


魔物のレベルもまた上がっているけど、私達のレベルと装備的には余裕だなこれ。


魔物の形状は水晶系だけ人間男性の剣士みたいな姿や、鈍器や戦斧を持つ戦士みたいなゴーレムも混じってきて、強打などの簡単なスキルを使ってきた。


「まぁ、まだ余裕で回避も受け流しも出来るけど、手数が多いと面倒ではあるね」  


「これはこれで良い訓練になるな」


「ここまで余裕でこの階層へ来たのは初めてですよ」


それぞれに感想を述べつつ、やはり欲をかいてたまに大部屋などへ突っ込みながら石柱の間へと到着した。


記録も済ませご飯を食べて落ち着いてから、私達は九階層へと降りた。




九階層は普通のゴーレムが出なくなり、剣士や戦士の様な姿のペリドットやターコイズ、アクアマリン、ガーネットにオパール、黒曜石など多種多様なゴーレムへと変わった。


待ち伏せや戦術らしきものまで使う個体も現れて、ちょっと面倒臭い。


迷宮の広さも増していて、余分に狩るのが面倒になり大部屋アタックはやめることにした。

 

マーレンさん曰く、


「中層は稼ぐ目的よりも下層へ向かう途中という扱いが多いです。

相性によりますけど十一、十二層の方が稼げますから」


との事。


素材は違うけどまたゴーレムらしいゴーレムに形状が戻るそうで、戦術や技もなくて楽だし、素材としては上になるので、そりゃそうだわな。


マーレンさんは魔法寄りなので魔法金属のゴーレムや技を使うゴーレムとは相性が悪くソロがキツいのだろうね。


魔法寄りな私だけど、戦闘系のスキルもそこそこ持っている分かなり動きに差が出るからな。


こうしてその日の内に九階層の石柱の間で登録すると、私たちは町へと戻るのだった。



なかなか壊せないけど水晶として価値は高いって意味ないような?

水晶として価値は高いけど、状態保持で加工は出来ないって意味ないような?

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