2.始まりの村
作者の自己紹介を忘れてました。
八咫と申します、、、カラスが好きなんです。
厨二病じゃないですよ。
さて話は戻って早速2話です。
登場人物が少しづつ増えて、物語が華やかに…
ぜひ皆様も楽しんでいってください。
青い空。
緑の森。
遠くに見える小さな村。
風が草を揺らし、鳥が鳴き、
空気は驚くほど澄んでいた。
「……ここが、異世界……?」
俺は深く息を吸った。
肺が喜んでいるのが分かる。
会社の空調とはまるで違う。
しばらく立ち尽くしていたが、
いつまでもここにいても仕方ない。
とりあえず、見えている村へ向かうことにした。
「道は思ったより綺麗に舗装されてるんだな…こう言うの誰が舗装してんだ…?俺にもできる仕事あると良いんだが…」
しばらく歩くと村の門が見えてくる。
村は木の柵で囲まれていて、
入口には見張りらしき青年が立っていた。
腰に短剣を下げているが、
雰囲気は穏やかだ。
「こんにちはー。旅の方ですか?」
「あ、えっと……まあ、そんなところだ」
異世界に来たばかりで説明できるわけもない。
とりあえず曖昧に返す。
青年は俺の手元を見て、
「あ、紋章持ちなんですね」と軽く頷いた。
「なら問題ないです。どうぞどうぞ。
紋章があれば身分証代わりになりますから」
「……そうなのか」
神様の雑説明よりよっぽど分かりやすい。
青年はにこやかに続ける。
「この村は旅人もよく来ますし、
紋章があるなら危険人物じゃないって判断になります。
成人の証ですからね」
「成人の証……」
異世界人にとって紋章は当たり前のもの。
俺のはタトゥーシール感覚で貼られたやつだが、
見た目は普通らしい。
青年は特に気にする様子もなく、
「ゆっくりしていってくださいね」と笑った。
……本当に、誰も騒がないんだな。
村の中は、
木造の家が並び、
畑が広がり、
子供たちが走り回っていた。
「おじさん、旅人ー?」
「どこから来たのー?」
子供たちが無邪気に声をかけてくる。
「え、えっと……遠いところからだ」
「ふーん!」
それだけで満足したらしい。
子供は元気だな。
村の中央には井戸があり、
その周りで人々が談笑していた。
誰も俺を怪しむことなく、
ただ「新しい人が来た」くらいの反応だ。
異世界転移ってもっと大騒ぎになるもんじゃないのか……?
「おや、 旅の方かい?」
声をかけてきたのは、
落ち着いた雰囲気の女性だった。
年齢は三十代くらいだろうか。
「はい、まあ……そんなところです」
「それなら、まず宿を紹介してやろう。この村には旅人用の小屋があるんだ。私はそこの管理人でね。」
「助かります」
女性は歩きながら説明してくれる。
「旦那、紋章はあるのよね?なら身分は確かだね。
資産管理も紋章がしてくれるから安心だよ!神様には感謝しなくちゃ。」
「……そうなんですね」
神様の説明より百倍分かりやすい。
「それにしても、紋章の光が綺麗だね〜!
どっかの貴族かい?」
「い、いや……しがない旅人ですよ…」
神様にタトゥーシールで貼られたなんて口が裂けても言えない。
女性は特に深掘りせず、
「そうかい」と微笑んだ。
案内された小屋は、
木造で簡素だが清潔だった。
「ここを自由に使っていいかんね。水は井戸から汲めるし、食事は村の食堂で頼めるよ!」
「ありがとうございます」
「いえいえ。旅人は珍しくもないからね!
ゆっくり休んでいきな!!」
女性はそう言って去っていった。
俺は小屋の中に入り、
荷物も何もない部屋を見渡した。
「……本当に、異世界に来たんだな」
現実感がじわじわと湧いてくる。
会社の蛍光灯の下で倒れた俺が、
今は木造の小屋で風の音を聞いている。
なんだか不思議だ。
そして──
胸の奥が、少しだけ軽くなった気がした。
小屋でひと息ついたあと、
腹の虫が静かに主張を始めた。
「……そういえば、最後にまともな飯食ったのいつだっけな」
会社のカップ麺、コンビニ弁当、
深夜の自販機コーヒー。
そんなものばかりだった気がする。
せっかく異世界に来たんだ。
まずは飯だろう。
俺は村の中央にある食堂へ向かった。
木造の扉を開けた瞬間、
湯気と香りと──
熊みたいな大男が目に飛び込んできた。
肩幅が扉の幅と同じくらいある。
腕は丸太みたいに太い。
エプロンが小さく見える。
「おう!いらっしゃい!!」
声もでかい。
店全体が揺れた気がした。
「あ、えっと……旅の者です」
「おうおう!旅人か!
腹減ってんだろ?座れ座れ!!」
豪快に笑いながら、
大男はテーブルをドンッと叩いた。
木のテーブルが悲鳴を上げた気がする。
「アンタ、さっきうちのカミさんに案内してもらってたろ?」
「えっ、カミさん?」
「おう!宿屋の管理してる女だよ。
あれが俺の嫁だ!」
豪快に笑う大男。
あの優しいおばさんの夫がこの熊……?
「……あの、おばさんの?」
「そうだとも!いい女だろ?
気が強くてよく働くんだ!」
なんか、すごく納得した。
あの明るさと親しみやすさは、
この豪快な男と並んで初めて完成する気がする。
「今日はな!野菜のスープと焼きパンと川魚の香草焼きだ!どれも朝から仕込んだやつだぞ!」
「じゃあ、スープをお願いします」
「任せとけ!!」
大男は鍋を片手で持ち上げた。
片手で。
鍋が軽そうに見えるのが怖い。
「ほらよ!!」
ドンッと置かれたスープは、
湯気がもくもくと立ち上り、
野菜がゴロゴロ入っていた。
「……うまそうだな」
スプーンを口に運ぶ。
──優しい味だ。
豪快な見た目に反して、
味は驚くほど繊細だった。
「……うまい」
思わず声が漏れた。
大男は鼻を鳴らす。
「だろ?
野菜は全部この村の畑で採れたやつだ。
カミさんが朝から手伝ってくれたんだよ!」
「奥さんも?」
「おう!あいつは働き者だからな!」
豪快に笑う大男。
なんだか微笑ましい。
食事を終えて一息ついたところで、
突然、熊みたいな大男がズイッと近づいてきた。
「ほれ!旦那!!」
いきなり大きな手を差し出してくる。
「え……?」
「ほれほれ!支払いだ!」
支払い……?
俺金持ってなくないか…?!!
「すいません、今手持ちがなくて…」
「あ?旦那、そんなに紋章光らせといて何言ってんだ???とりあえず手だせ!手!!」
訳が分からないが、とりあえず手を出すと、
大男の分厚い手がガシッと俺の手を包んだ。
その瞬間──
ピロンッ
目の前に文字が浮かび上がった。
銅貨6枚支払いますか?
YES / NO
「……え?」
本当に空中に文字が出ている。
紋章が反応してるのか?
大男が豪快に笑う。
「旅人割りだ!5枚で良い!」
そう言った途端、文字がふわっと揺れ──
銅貨5枚支払いますか?
YES / NO
「……すげぇ……」
恐る恐る、YESの文字に指をかざす。
ピロンッ
支払い完了しました。
柔らかい音声とともに、文字が消えた。
大男は満足そうに頷く。
「確かに受け取った、腹が減ったらいつでも来い!
うちは旅人歓迎だ!」
「……あ、はい…!ありがとうございます。ごちそうさまでした!」
訳もわからないまま、
どうやら支払いは完了したらしい。
財布も小銭もいらない。
握手ひとつで終わる。
社畜時代の俺が聞いたら泣いて喜びそうだ。
食堂から外に出ると
夕方の光が差し始めていた。
「……いい村だな」
豪快な店主と、優しいおばさん。
温かい食事。
笑い声の絶えない食堂。
胸の奥がまた少し軽くなる。
会社の蛍光灯の下で倒れた俺が、
今は異世界の食堂で熊みたいな大男の料理を食べている。
なんだか不思議だ。
でも悪くない。
村に到着しましたね〜
ですがまだまだ物語は始まったばかりです。
面白ければ感想を貰えると作者が握手しに行きますので…是非お待ちしております。




