033 謁見
路地でステータスを確認した後、総戦力が四ケタを超えていた事実に若干のゆとりを覚えた僕は、リブラの要求通りにバスティア王城へと向かう事にした。
アメル君やガステロとは一時的にお別れだ。
流石に彼等まで王城へと案内する事は出来ないらしい。
王居入口。
中央区の柵の前には門番が立っていたが、歩いてきた僕等を見ると、一礼して道を空けてくれる。
飛将軍・リブラ=トレーサー。
閑職に回されようとも、その名は健在らしい。
「さて、そろそろ見えて来るぞ」
「――おお」
リブラと共に王居内を進んでいくと、目の前にバスティア王城の荘厳なる姿が現れた。
以前ペタン帝国の城を見た事があった僕だが、豪華さで言ったら此方が上の様な気がする。
帝国臣民に聞かれたら、売国奴だと言われかねない感想だが、見たままその通りなのだから仕方が無い。
圧倒された様な表情を見せていると、隣にいたリブラが誇らしげに小さく笑った。
「そんなに驚く事かい? 帝国にも城はあるんだろう?」
「城はあると言っても……まず、大きさが違うぞ。帝国城はコレよりは規模が小さい。飾り付けだってシンプルなものだ」
「ふぅん? それって、宗教が関係してたりするのかな?」
「どうだろうなぁ……」
取り留めの無い会話をしながら、僕達は王城の内部へと入っていく。
大理石の床に、赤い絨毯。
高級そうな壺に、きめ細やかな彫刻等……。
城の内部は目を奪う物に際限が無かった。
傍から見れば田舎者丸出しな行為だっただろう。
現に、すれ違う婦人は僕を見て笑っていた様にも思える。
「――此処だ。準備は良いかい、ピストン君」
「あ、ああ」
通路の角にある扉へと立ち止まり、ノックをする姿勢で此方へと確認を取るリブラ。
決して観光に来た訳ではない。
その事を思い出しながら、僕は深呼吸をして頷いた。
「よし」
言いながら、リブラは目の前の扉を三回ノックする。
「……誰だ?」
扉の中から、しわがれた男の声が聞こえてくる。
「失礼、リブラ=トレーサーです。ピストン=セクスを連れてまいりました」
「……入れ」
「はッ!」
入室の許可を得たリブラは、僕へと一度視線のやり取りをしながら、扉を開けて室内へと入っていく。
彼女へ続き、室内に入った僕が見たものは――
「よく来たな、リブラ。そして――ピストン=セクスよ」
大勢の騎士を背後にして座る、禿頭の老人の姿であった。
「なっ……!?」
完全武装の騎士が五人。
想像よりも遥かに物々しい出迎えに、僕はおろかリブラでさえも驚きを隠せない。
机に肘を置き、両手を組みながら落ち窪んだ眼窩で此方をじろりと睨む御老体――この男こそがバスティア王国、宰相のボロン=パイスキー。神経質そうな顔をした老人は、舌を「チッチ」と鳴らしながら、此方へと声を掛けてくる。
「何を驚いた顔をしておる? 帝国の人間を執務室に入れるのだ。これくらいの準備は必要だろう?」
「お言葉ですが閣下。このピストンはセクス家を追放されております。帝国との関係も切れているとお話した筈ですが?」
「……黙るが良い、リブラ=トレーサー」
「!」
「飛将軍などと称されているが、所詮は小娘。若い男に現を抜かし、己が職務を忘れるとはなんたる様よ」
「な!? わ、私は職務を忘れた訳では――ッ!」
「くどい。話は先程聞いた。……成程、商業都市二プルでキンダーバインが出現したと。巣の中には【召喚】スキルが使われた痕跡もあり。そこまでは分かる。が、解せぬのはそこでこの男を疑わぬ事だ。影も形もない黒霊死団などという輩を犯人と断定するとは、目が曇ってると言われても仕方があるまい」
「ですが! ピストンは召喚スキルを持ちません!!」
「外部の者を呼べばよいだろう。帝国と通じているならば、手配は簡単だ」
「外部!? ハッ、一体何処にそんな者がいるのですか! 国境付近は閣下の命令でこの私が監視をしておりました! 怪しい者など誰も通ってはおりません!!」
食って掛かる様にリブラがそう言うと、ボロン宰相は嘲る様に「カッカッ」と嗤う。
「四大武尊を通した貴様が良くも言う……ッ! 失態隠しの為にそこのペタン人を庇い立てしている様にも見えるぞ!」
「――ッ!? それは侮辱ですッ!」
「ホッ! 侮辱でも何でも良いわ。ピストン=セクスは此方で拘束させて貰う。これは決定事項だ」
「!」
宰相がそう言うと、待機していた騎士達が腰の剣を抜刀する。
考え得る限りの、最悪な展開だ。
どうする?
無理矢理、逃走を謀っても構わないが――
僕がそう考えた、その時だ。
「――皆の者、やめい!」
凛とした女性の声が、室内に響き渡る。
お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//
もし面白い・応援したいと思って頂けたならば、ページ下部の☆の評価ボタンやブックマークなどを押して頂けると嬉しいです。
応援・感想は執筆の励みにもなりますので、気軽によろしくお願い致します!




