032 やばい魔術を覚えてるんだけど
首都ブルボンの都市中央には、背の高い柵で囲まれた区画がある。一定以上の身分が無い者は立ち入りする事も出来ないというその場所の中に、バスティア王城は存在する。
僕達と別行動を取っていたリブラ=トレーサーは、一人王城へと向かい、商業都市ニプルであった事件を国王へと報告に行っていたのであった。
「あぁ、いや……特には……」
「ピストンさんが、また腰を振ってたんです! それも人が大勢居るパレードの最中に!!」
何かあったのかと問う彼女に、僕は「何も」と言いたかったのだが、横からきたアメル君がバラしてしまう。
「またか、ピストン……此処数日で君の癖は把握したよ。実力は申し分ないだけに、惜しい男だ……」
勿体無いと言わんばかりに、深々と溜息を吐くリブラ。
「騒ぎを起こし掛けた事は謝罪するが……僕は自らの責任の下で腰を振っている。故に、被る被害も全て僕のものだ。君達に迷惑を掛けるつもりは毛頭ない」
「成程。では、改める気は?」
「ない」
「……はぁ~」
即答すると同時に、溜息を吐くアメル君。
自分でも意固地だとは思うが、これだけは譲れない。
僕から"腰振り"を取り上げたら、それこそ"ただのピストン"になってしまう。
家を無くした僕にとって"腰振り"とは寄る辺なのだ。
誰にも止めさせはしない。
「……不思議な事だが、腰を振った後の君は以前よりも強くなっている。君がそうやって頑なになるという事は、それ相応にその行為は重要なものなのだろう?」
「……」
「だんまりか。まぁいい。今はそんな話をしに来た訳じゃない」
「そうだ。女王陛下とは謁見出来たのかよ?」
後ろからガステロが口を挟むと、リブラは首を横に振る。
「宰相のボロン=パイスキーが陛下との謁見を許してくれなくてな。仕方が無く奴に今回の件を話たのだが、話題が逸れてピストン君へと注目がいく事となってしまった」
「……僕へと?」
「すまない。元帝国のセクス家と言う情報は、流石に隠せるものではなかった。詳しい話は君を交えて行うと宰相は言ったよ」
「それって、罠とかじゃないのか……?」
「……否定が出来ないのが困り所だね」
苦笑するリブラ。
そこは嘘でも「大丈夫」と言って欲しかったな。
「もしもの時は、私が命を張って君を守る」
「そんな事をされても、全く嬉しくはないのだがな。とは言え、僕が行かなければ話は進まないのだろう?」
「ピストンさん……」
「旦那……」
そんな心配そうな目で僕を見るなよ。
まるで、これから処刑されに行くみたいじゃないか。
……念の為、ステータスを確認しておこう。
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[ピストン=セクス LV.25]
【種族:人間】【クラス:魔剣士】
総戦力:1210
生命力:290/290
魔法力:125/125
攻撃力:232
防御力:190
素早さ:210
賢 さ:118
幸 運:45
スキル:剣術LV.3 性魔術LV.2 火属性魔術LV.2
魔法剣LV.1 身体強化Lv.1 解析LV.2
術技:【性】リリス 【火】ファイアー・ボール
【性】ティエス【火】ボルケイノ
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リブラとの戦闘のおかげで、五つもレベルが上がっている。 総戦力四ケタは達成感があるな。
とは言え、傍には2880の奴がいるから、浮かれてばかりもいられない。
恐らくはその数値ですら今は正しく無いだろうしな。
特筆すべきは上昇したスキルレベルだろう。
解析レベルが上がった事で、ステータスを表示した際の項目が増えているし、性魔術と火属性魔術がそれぞれLV.2に上がった事で、新たな術技を習得している。
ボルケイノとは、火の中級魔術の一つだ。
どうやら僕は、攻撃系の魔術を良く習得するらしい。
願ったり叶ったりという奴だ。
性属性の中級魔術・ティエス――これは一体……ッ!?
「どうした、旦那?」
「い、いや……何でも……」
術技の項目に意識を向けた瞬間、魔術の効果が頭の中へと伝達される。性属性魔術――余りにも特殊なその効果を知った僕は、思わず口篭ったまま返事をしてしまう。
これは何とも――使い処が難しい。
強力無比である事は間違いない。
間違いない……のだが。
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■ティエス■ 消費魔法力:50
タイプ【性属性/中級】【状態異常/永続】
対象の雄に効果。
性別を雌へと変える。
解除不可。
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掛けられた相手の人生は、間違いなく180度変わるな。
僕は、ガステロへとチラリと視線を向ける。
「?」
――いや、きついな。
こいつで試すのは悲劇しか生まれない。
……とにかく、色々と成長出来たという事で、この件は置いておくことにしよう。
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