034 我、推参!!
執務室の扉を蹴って現れたのは、子供の様な背丈をしたブロンドの少女であった。眩いばかりの金のドレスを身に着けた彼女は、堂々した立ち振る舞いで騒動の中心へと歩み寄る。
近付いてくる少女の姿に、居並ぶ騎士達は動揺しながら後退りを見せるという失態を演じるも、上司である背後の宰相からの叱責は無い。
何の事はない。
宰相であるボロンも、動揺していたのだ。
一瞬でこの場の空気を支配した少女は、静かになった周囲を見回しながら満足そうに頷くと、次いで僕へと視線を向けた。
「ほぉ? 貴様があの、四大武尊か」
「……貴方は?」
爪先から頭の天辺まで、不躾にジロジロと観察する少女に、僕は思わず問うてしまう。
しかし、疑問は別の場所から解答される。
「女王陛下……」
呟きは、隣に立つリブラ=トレーサーのものである。
何故ここに。
そう続くであろう言葉は、女王と呼ばれた少女の笑い声にかき消される。
「ナッハッハ!! 驚いたか!? 驚いたか!? 何やら面白そうな事をしているのを見付けてのぉ! こっそり後を付けてやったのじゃっ!!」
悪戯が成功したとばかりに、少女は笑う、笑う。
対する此方の感情は氷点下だ。
どんなリアクションを取ったら良いのか分からず、僕達はただただ沈黙を貫き通す。
「女王キサラ=フル=バスティアーナ、此処に推参!!」
ピシリと。腕でポーズを取りながら、高々と宣言する女王。
どうでも良いが、とてつもなく楽しそうだ。
「それで――」
「ぬ?」
「何をしに来られたので? 女王陛下……」
衝撃から立ち直ったのだろう。
宰相ボロン=パイスキーは、咳払いを一つした後に、現れた女王へと用件を訊ねる。
「何じゃ~金柑頭~? 愛しい陛下が遊びに来てやったのじゃぞ? 用件を聞く前にほれ、泣いて喜ぶ方が先じゃろて」
「金柑……ッ! ゴホンッ! 陛下、今は取り込み中でして! お戯れなら後でお伺い致しますぞ!!」
「ほぉ~ん……我の行動を戯れと称すか……」
丸々とした目を細めながら、女王は不敵に口元を歪めた。
「――騎士王大原則、ひとぉ~つっ!」
「!」
「騎士王とは、人を出自で差別してはならない!!」
人差し指を前に突き出しながら、女王キサラはそう叫ぶ。
「ピストン=セクスと言ったなぁ~、貴様!」
「は、はい!」
突然話を振られ、つい、慌ててしまう。
「帝国は小尊教を信仰していると聞く! ならば一度聞いてみたかった!! 貴様から見てこの我は――美しいかッ!!」
「――ッ!!」
両手を腰にやり、踏ん反り返る様にして此方を見据える女王。
いきなり何を!? と、思ったが。
僕は彼女の容姿を見て、思わず言葉を失ってしまった。
幼き少女の身体に宿った、成人した女性の魂。金塊よりも美しいブロンドの髪は腰まで伸びてその身を輝かせる。人並外れた均整の取れた顔は、正しく黄金比と呼んで差し支えないだろう。身に着けたドレスは厚ぼったく、幾重にも重なったスカートのフリルは大輪の花を想像させた。
外見から予想するに、彼女は土精との混血なのだろう。
人の身では作り出せない神秘的な美しさを感じる。
それに何より――注目すべきはその胸だろう。
――超絶神秘的極絢爛爆乳
A、B、C、D、E、F、G、H、I……。
駄目だ! 計測不能ッ!!
この女王にカップ数などという無粋なランク付けは意味を成さない!!
なんたる!!
なんたる、ワガママロイヤルおっぱい!!
小尊派の僕が、揺らいでしまっている……だとぉッ!?
……だが、それも仕方が無いのかも知れない。
何故なら彼女は、二つの要素を掛け合わせた唯一無二の存在だからだ!!
小さいのに、大きい。
驚天動地の新事実!!
青天の霹靂とはこの事かッ!!
相反する二つの属性は、共存し得るという事を、彼女はその身で証明してみせた!!
二律背反の女王、キサラ=フル=バスティアーナ。
彼女の問いに、僕は――僕は――
「――美しいですっ!!」
「よっしゃぁぁあああ――っ!!」
気が付けば、叫んでいた。
率直な感想に、両手を上げてガッツポーズを取る女王。
白目を剥く宰相。
取り残される騎士達。
「何だこれ……」
呆然とした飛将軍は、一人虚空にツッコミを入れるのだった。
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