一章 2話 スキル付与
「——見つけた」
全員が同じ声で言った瞬間。
床が、溶けた。
「っ!?」
足元が崩れ、俺はそのまま“落ちる”。
教室も、机も、クラスメイトも——
全部、黒い闇に飲み込まれていく。
いや、違う。
消えてるんじゃない。削除されてる。
「おいおい、マジかよ……」
落ちながら、理解する。
あの女の言葉。
“バグ”
“仕様じゃない”
つまりこれは——
「ゲームかよ……」
その瞬間、頭の奥で“音”がした。
ピコン、と軽い電子音。
——《条件達成》
——《対象:異常認識者》
——《スキルを付与します》
「は?」
視界の端に、見えた。
半透明の文字。
——《スキル:セーブ&ロード》
一瞬、思考が止まる。
「……いや、それ……」
強すぎるだろ。
死に戻りどころじゃない。
自分の意思でやり直せるってことだろ?
——《初回セーブ地点を設定しますか?》
ニヤけた。
「……するに決まってんだろ」
——《セーブ地点:現在》
その瞬間。
“理解”が流れ込んできた。
使い方。制限。例外。
・セーブは任意で可能
・ロードでその時点に戻る
・ただし「完全な再現ではない」
・世界は“微妙にズレる”
「……なるほどな」
だから今まで違和感があったのか。
完全なループじゃない。
毎回、別の世界に移動してる。
「面白くなってきた」
——その直後。
落下が止まった。
気づけば、俺は“何もない空間”に立っていた。
上下も、左右もわからない。
ただ——
「また会ったね」
あの女が、そこにいた。
「説明しろ」
俺は即座に言う。
「ここはなんだ。お前は何者だ。この世界はなんだ」
女は少し驚いた顔をしてから、笑った。
「へぇ、いいね。その反応。今までの君はもっと混乱してたのに」
「……は?」
「言ったでしょ?ここ、壊れてるって」
女は近づいてくる。
距離がゼロになるくらいまで。
「そして君は、その“例外”」
耳元で、囁く。
「普通の人間はね、“気づかない”の」
「でも君は違う。だから——」
女は指で、俺の胸をトン、と押した。
「消される側じゃなくて、狩る側になった」
その瞬間。
空間に“ヒビ”が入る。
バキンッ
割れた。
世界が。
その向こう側から、何かが“這い出てくる”。
人の形をしてる。
でも、人じゃない。
顔がない。
腕が長すぎる。
全身がノイズみたいに揺れている。
「——これが“修正プログラム”」
女が言う。
「バグを消しに来る存在」
そいつが、俺を見た。
いや——
俺だけを認識した。
「いいよ、試してみなよ」
女が楽しそうに笑う。
「せっかく手に入れたんでしょ?」
——《セーブ&ロード》
目の前には、明らかに勝てない存在。
でも。
「……ああ」
俺は笑った。
「負けてもいいなら、いくらでもやりようあるわ」
——初ロード、行くか。
化け物が、動いた。
その瞬間。
俺は——
わざと、殺された。
***
「——はっ」
目を開ける。
教室。
夕焼け。
でも今度は違う。
「……覚えてる」
死の感覚も。
あの化け物も。
女の言葉も。
全部。
そして——
「なるほどな」
口元が、勝手に歪む。
「これ、完全に“攻略ゲー”じゃねぇか」
その日から。
俺は、“死ぬこと前提”で動き始めた。
世界を攻略するために。
何度でも、何百回でも。
——やり直す。




