第137話 帝国の親善使節団の狙い
※今回は途中まで第三者の視点です
帝国の親善使節団の来訪が近づいてきた。
王国の外務卿は北の帝国からの親善使節団のメンバーについて、国王と宰相に対して報告をした。
「ほう、それでは親善使節団の団長はエルンスト殿下がつとめると」
エルンストはヴァンドル帝国の第二皇子である。
「はい、そのようです」
「次期皇帝になる可能性のある皇子が団長とは驚いたな」
第二皇子エルンストは次男だが、正妃の子である。
長男は側室の子なので、エルンストが皇位を継承する可能性は小さくない。
「団長のエルンスト殿下に帝国の外務卿が同行すると聞いております」
「うーむ、手厚い布陣だな」
「陛下、これは単なる親善使節団ではないのかもしれません」
しばらくすると、帝国の親善使節団からの要請が外務卿に伝わって来たので、再び国王と宰相に報告がなされた。
「陛下、使節団はウィリアム・フェアチャイルドを指名して交流したいと希望してまいりました」
「そうか、ウィリアム君とな」
「帝国はウィリアム君に強い関心をもっているようですね」
「そうだな。単に交流を深めたいということなら良いのだが」
ところで、ヴァンドル帝国の親善使節団の団長は若い皇子であり、随行も帝国貴族の子女が中心だった。
そのため、アルビオン王国側も若い王族が対応することになる。
王国の王子はまだ9歳であり、外交上の対応をすることはできない。
第三王女のエリザベートが対応することも考えられた。
だが、使節団がウィルとの交流を名指しで希望してきたことから、ウィルと親しい第四王女のフローラが対応することになった。
「フローラ、そのようなわけで我が国も貴族の子弟を中心に交流することにするが、その代表を頼む」
「承知しました、お父様。ところで帝国はウィリアムさんに何をしようとしているのでしょうか?」
「そこは分からないのだ。純然たる親善が目的なら良いのだがな」
帝国の使節団のメンバーリストを見て、フローラ王女は不自然な点に気付いた。
「リストに載っているのは、貴族あるいは大商人の娘ばかりですわ」
帝国では魔物と戦うのは男性だけであり、女性の活躍という点では王国のほうが進んでいると聞いていた。
それなのに女の子ばかりの使節団というのは、もしかして……
ある危機感を覚えたフローラ王女は、カーディフ伯爵令嬢スカーレットとレバント商会の会頭の息子オリヴァーに手紙を書いた。
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呼ばれて執務室に行くと、難しい顔をした父上が待っていた。
「王都から知らせがあって、帝国の親善使節団はウィルとの交流を希望しているそうだ」
「私との交流ですか?」
どうして僕を?
「どうやら帝国は寒さのために不作が続き、結核の流行にも苦しんでいるらしいんだ」
「だから開発者である私に興味を持ったということですか」
「おそらくそうだね。交流すること自体は悪いことではないから、ウィルに王都に来てほしいと陛下から依頼があった」
「分かりました。そう言えば、帝国のことを書いた本を読んだら、最近は内政を重視していると書いてありました」
「ああ、少し前までは我が国と同じで剣と魔法を重視していたんだけれど、今の皇帝は内政を重視して、帝国貴族の意識も変わったらしいよ」
内政を重視している国だから僕の生産スキルに興味を持ったのかな?
ともあれ陛下からの要請なので、帝国の親善使節団との交流行事に参加することになった。
今回は正式な行事に出席するので、転移魔法ではなく馬車で王都に向かうことになる。
その支度をしていると、来客があった。
「ウィル、私も王都に行くことになったわ」
「ああレティ、君も帝国の親善使節団を迎える王国貴族の子弟のメンバーに入ったのかい?」
「ええ、実はフローラ殿下からご依頼があったのよ」
「王女殿下のご依頼?」
「ええ、帝国の親善使節団は貴族と大商人の娘たちで構成されているそうなの」
少女ばかりの使節団?
それは妙だな。使節団を若い世代で構成するにしても。
「単なる親善が目的なら良いのだけれど、殿下は帝国の意図をいぶかしんでおられるわ」
そこにオリヴァーもやって来た。
「ウィリアム様、私も王都に参ります」
「えっ? オリヴァーも?」
「はい、使節団には帝国の商人の子弟もいるようなのです。帝国は商業を重視しているからでしょう」
「なるほど。帝国は今では内政を重視しているらしいね」
「そこで王国も今では商業を重視していることを示すために、私にも参加するようフローラ殿下からご依頼がありました」
「そうなんだね。二人が一緒に来てくれるのは心強いよ」




