第131話 魔法銃を作ろう
魔法銃を作るために必要な世界樹の葉を手に入れることができた。
それにしても、まさか世界樹から直接頂けるとは思ってもいなかったな。世界樹の期待?にしっかり応えなくちゃ。
工房に戻ると、地下の作業室にテオと向かう。
エルフの古老さんによると、魔物の攻勢は近いうちに強まるらしい。
魔物に対抗する手段は一つでも多いほうが良い。
魔法銃は魔術スキルがなくても強力な魔法が撃てるし、自分の魔力を消耗しないという長所がある。
古代遺跡からはそうそう見つからないみたいだし、生産スキルで作れるようになれば大きな意味があるだろう。
目の前に鉄とミスリルと、世界樹の葉を並べる。
世界樹の葉は貴重な材料だから、失敗できないと思うと緊張するな。
目を閉じて、魔法銃の設計図を頭の中に浮かべる。
魔物の群れが襲ってきたとき、撃退できる魔法銃をイメージする。
前回、闇の力が強まったときは多くの人が亡くなったようだ。
近しい人が亡くなるのはどんなときでも辛いものだ。
特に親を亡くした子どもたちが悲しみは計り知れない。
みんなを魔法銃で守りたいと願う。
すると、身体の奥から魔力が湧き出してきた。
何かが力を貸してくれたような気もする。
目を開けると、手の平の上に綺麗な魔法陣が浮かんでいた。
いつもは白い光で描かれる魔法陣が、今回は緑色の光で描かれている。
不思議だな。でも生産スキルは無事に発動している。
温かい緑色の光が素材を包み、やがて消えていくと、魔法銃が現れた。
「師匠、おめでとうございます!」
「ありがとう、テオ。どうにか上手く作れたみたいだ」
「さすが師匠です。ところで、いつもと違って魔法陣も素材を包む光も緑色でしたね」
「ああ、テオにも見えたんだ。じゃあ僕の見間違いじゃないんだね」
「ええ、はっきり見えました。一体何が起きたんでしょう?」
「はっきりとは分からないけれど、魔法銃を作るとき、何かが力を貸してくれた気がするんだ」
「そうですか。もしかすると世界樹が力を貸してくれたのかもしれないですね。師匠は世界樹が認めた救世主ですから」
そんなことがあるのかな。
ここは世界樹から離れた場所なのに。
もしかしたら世界樹の葉に力が込められているのかな。
出来上がった魔法銃を手に取る。
鑑定してみると、エリカ師匠から頂いた物と同じものだった。
これで生産スキルで魔法銃を作ることができる。
ただし、素材となる世界樹の葉は貴重だから、そうそう手に入らない。でも……
「じゃあ、いきます」
目の前に土を置いてテオが集中すると、手の平の上に緑色の魔法陣が浮かぶ。
そして、土を包んだ緑色の温かい光が消えると、そこに魔法銃が現れた。
やはりテオの持っている「複製」のスキルは凄いな。
世界樹の葉のような希少な素材を使って作るものでさえ、土で作ってしまえるんだから。
複製には大量の魔力を消耗するから、テオには一日に一つずつ複製してもらう。
取り敢えず魔法銃を三つ複製してもらった。
そして僕の作った魔法銃は工房の地下の倉庫に保管して、複製の一つは世界樹の葉を使うことに同意してくれたエルフたちに渡した。
「さすが救世主様です」と古老さんは感心してくれた。
「世界樹やオリヴァーのお陰ですと答えたら、「その謙虚さも美点です」と褒められてしまった。
よく謙虚だと言ってもらうけれど、設計図をもらったり、素材集めを手伝ってもらえるからこそ、僕が生産スキルで作ることができる。
それに自分の力を過信してしまったら、僕は僕でなくなるような気もする。
「はい、これはオリヴァーの分だよ」
「私が頂いても良いのですか?」
「もちろんだよ。オリヴァーがいなかったら魔法銃は作れなかった」
それに、これでオリヴァーもいざというときに自分の身を守れる。
オリヴァーは戦闘要員じゃないけれど、何があるか分からないし。
残るもう一つは、父上に相談したうえで王家に献上することにした。
希少なものだから、自分で王城に持って行く。
古老さんから聞いた話も報告しておきたい。
王都にあるフェアチャイルド家の屋敷に転移して、家臣に頼んで王城に使いに行ってもらう。
すると、驚いたことに翌日に陛下が会ってくださることになった。
「お忙しいところ、急にお伺いしてすみません」
「いや、ウィリアム君が自分で持ってくる物となると、よほどの物だろうからな」
陛下には僕はどんなふうに思われているのかな。
状況を報告して陛下に魔法銃を献上する。
「魔法銃まで作れるとは……やはりすぐに儂が受け取って良かった。本当にウィリアム君の生産スキルは規格外だな」
陛下は感心したような呆れたような顔をされた。
そして、陛下に古老さんから聞いた内容を報告する。
「うーむ、近いうちに魔物の攻勢が強まりそうなのだな」
「はい、古老さんの話では世界樹が弱体化し、闇の力が強まっている以上、攻勢はきっと強まると」
「そうか、分かった。王国騎士団を各地に派遣して、警戒を強めることにしよう」
陛下が信頼してくださるのはありがたい。
事前に備えることで被害が出ないことを願う。
しばらくしてフローラ殿下から届いた手紙によると、王家に献上した魔法銃は殿下が持つことになったようだ。
護衛がいるとはいえ、戦うスキルを持たない殿下の身の安全を図るためだろう。
陛下がフローラ殿下を大切に思っていることが分かるな。
手紙の中で殿下は「私もこれで皆さんと一緒に危険な未開地に行けると思いましたのに、お父様は認めてくださいませんでした」と嘆いておられた。
いや、武器があるからといって危険な場所だし。
王女殿下が行くことを陛下が認めないのは自然なことじゃないかな。




