第127話 ゆっくりしたらアロスを食べよう
王都から戻った翌日、テオ、ルーナ、リアとギルに三日後から未開地の探索を再開したいと伝えた。
お願いしたら明日からでも集まってくれるかもしれないけれど、みんなも予定があると思うし、働き過ぎは避けないといけない。
今日は僕もゆっくりすることにした。
朝食の後は、自分の部屋でロッキングチェアに揺られながら、王都で買ってきた本を読む。
自分では疲れていないと思っていたけれど、気付いたら眠っていた。
王都は楽しかったけれど、それなりに疲れは溜まっていたのかな。
午前中は眠ったり本を読んだりして過ごした。
ランチを食べた後も、しばらく自分の部屋でゆっくりする。
それからゆっくり工房に出掛ける。
ベイカーさんにアロス(お米)を見せるためだ。
「ベイカーさん、これは王都で見つけた新しい食材なんだ」
「あら、初めて見る食材ですね。アロスというのですか。どんなふうにして食べるんでしょう?」
「炊いて食べるんだけど、やってみるね」
王都では取り敢えず食べることを優先したけれど、今回はきちんと炊こう。
まずはボウルにアロスを入れて研ぐ。
それから水を捨てて、綺麗な水を入れたら30分くらい水を吸わせる。
アロスが十分に水を吸ったら鍋に移し、また水を注いで火にかける。
中火くらいで加熱する。
鍋の中でぶくぶくと音がしてきたら沸騰したサインだ。
沸騰してしばらくしたら火を弱め、もう少ししたら、さらに火を弱める。
「だんだん火を弱めていくんですね」
「そうなんだよ」
もういいかなと思って蓋を開けたら水分は残っていなかった。
これで炊き上がりだ。
「出来た!」
「じゃあ食べていいですか?」
「いや、しばらく蒸らしたほうが美味しいんだよ」
せっかくだから美味しく食べたいし。
十分蒸らしてから、ご飯をお皿に盛る。
ご飯茶碗はないから、そのうち作りたいな。
「頂きます」
久しぶりのちゃんと炊いたご飯だ。
あはは、また涙が出そうだ。
「おお、ジューシーですね。それに仄かな甘みもあります。これは美味しいですね!」
さすがベイカーさん。米の良さを分かってくれた。
アロスのレシピとして、とりあえずピラフとパエリアを伝えた。
ベイカーさんはすぐ試しに作ってみると言ってくれたから、楽しみだ。
オリヴァーにはアロスを見つけたら全部買ってほしいと頼んである。
レバント商会のネットワークをもってすれば、きっと買い付けてくれるだろう。
そのうち未開地でアロスを作れるといいな。
土の専門家のテオが大丈夫だと言ってくれたから、水田を作れそうだし。
そうなると醤油や味噌もほしいな。
どこかで大豆と似たものを売っていないかな。
ベイカーさんとアロスを食べた後は、ゆっくりすると決めていたから、工房でものづくりはせずに家に戻った。
夜も早めにベッドに入る。
お昼寝もしたのに、すぐ眠れそうな気がするな。
「うーん、疲れが取れた感じだ」
翌朝起きたら、さっぱりとした気分だった。
今日は生産スキルを使おうかな。
時間のあるときにやってほしいと父上に頼まれていたから、今日は騎士団宿舎の倉庫を拡張しよう。
実は工房の地下室の倉庫はもう内部を拡張してあるんだ。
機密性の高い魔法石や複数の付与をしたミスリルなどを収納しているんだ。
辺境伯の屋敷の庭の奥の方に作った倉庫も拡張した。
これまでものを作り過ぎては収納場所に困っていたけれど、これで当分困ることはないはずだ。
「リアム、お邪魔するよ」
「これはウィリアム様。よくいらっしゃいました」
「今日は倉庫の拡張に来たよ」
「ああ、閣下が言っておられましたな」
「うん、いろいろあって遅くなったけど」
騎士団宿舎の地下にある倉庫に向かう。
リアムの指示を受けて、騎士たちが倉庫の中身を出してくれた。
空間魔法で拡張するときに内部にモノがあったらどうなるか分からない。
だから空っぽにしてから拡張している。
倉庫に保管されているものをすべて持ち出したところで、空間魔法を発動する。
対象が大きいから、しばらく集中を維持する。
やがて温かい光が倉庫から溢れ出す。
「ふう、これで出来たと思うよ」
「倉庫の見た目は変わらないのですな」
「うん、そうなんだよ」
テントもそうだったけれど、内部を拡張しても外見は変わらない。
倉庫の扉を開けると、リアムは目を瞠った。
「おお、これは!」
内部は予定どおり、以前の3倍くらいに広がっている。
倉庫から出したものを戻しに来た騎士たちも驚いていた。
「これだけ広ければ、武器と防具を全部しまっても、なおスペースがあります。ウィリアム様、また何か画期的なものを作って頂いても収納できますぞ」
いや、収納スペースができたから画期的なものを作ろうというのはさすがにどうなんだろう。




