第126話 王都観光をして西部に帰ろう
市場に行った次の日も、僕らは王都を観光した。
午前中は王都で人気の劇団のお芝居を見に行く。
馬車で劇場に着いたら、案内の人がすぐに出てきてくれた。
「フェアチャイルド家の方々、ようこそいらっしゃいました」
よく家名が分かるものだ。聞いてみたら、主な貴族家の家紋は覚えているんだそうだ。
「客商売をする人たちは凄いな」とつぶやいたら、オリヴァーはにっこり笑って「当然ですよ」と言った。なるほど、商売は厳しい競争の世界だから当然のことなのか。
劇場に入ると、二階の貴賓席に案内される。
個室の貴賓席から観劇なんて、前世の暮らしを考えると夢のようだな。
演目は貴族の男性と平民の女性の悲恋をテーマにしたものだった。
演劇について僕は詳しくないけれど、役者たちの声は朗々と響き、前世のオペラみたいな感じがする。
衣装もすごく凝っていて、引き込まれる感じがあった。
というか、僕の感想はその程度だけれど、レティもソフィーもそっとハンカチを出している。
意外というと失礼かもしれないけど、リアリストのオリヴァーも感動していた。
劇場を出てからも、三人は素晴らしい舞台だったと感想を話し合っている。やはり良い舞台だったようだ。もしかすると僕だけ感受性が乏しいのかな?
午後は王都が一望できる高台に行く。
途中までは馬車で行けたけれど、そこからは徒歩で登った。
身体強化魔法が使えないソフィーとオリヴァーは大変そうだった。
でも登ってみると期待以上の絶景だった。
「さすがに白鳥城と呼ばれるだけあってりンクスター城は綺麗ですね」
「素晴らしい景色です。これはお金がとれますね」
ソフィーもオリヴァーも満足そうで良かった。
その次の日は、それぞれに買いたい物を売っているお店に行った。
やはり王都の商業機能は充実しているな。
ちなみに僕は、買い物は早めに切り上げて王都の屋敷の料理長にお願いして鍋を借りて、アロス(お米)を調理した。
炊飯器はスイッチ一つで炊けて便利だけれど、パエリヤなんかはお鍋で作るものだと前世でも聞いていたから大丈夫なはずだ。
火加減がうまくできなくて、少しお粥みたいになっちゃったけれど、ともかくご飯は出来上がった。
久しぶりのご飯の味は感動的だったな。
翌日、僕らは西部に帰ることにして、もう一度王城を訪ねた。
フローラ王女殿下は忙しいだろうから伝言を残そうと思ったんだけれど、わざわざ出てきてくださった。
王都の観光や買い物の話をすると、一緒に行きたかったと殿下は残念そうだった。
でも、もしフローラ王女が市場に行こうとすれば、警備は大変だろう。
王族は公務も多いし、行動の自由がないから大変だな。
殿下からは「転移魔法が使えるのですから、今後は間を置かずに来てくださいね」と念を押された。
馬車で王都のフェアチャイルド邸に戻ると、帰り支度をしてから僕の部屋に集まってもらった。
「じゃあ、みんな準備はいいかい?」
「ええ、大丈夫よ」
「はい、お土産も持ちました」
「準備はできております」
僕もお店にある分はすべて購入したアロスを収納している。
三人に僕の服を掴んでもらい、転移魔法を発動する。
宙に魔法陣が浮かび、次の瞬間にはノーザンフォードのフェアチャイルド家の屋敷に着いた。
「お家に戻ってきました!」
「やはり転移魔法は凄いわね」
「そうですね、馬車なら一週間近くかかるところを一瞬ですから。驚異的な魔法です」
「みんなお疲れ様。ここで解散しよう」
「ええ、王都はとても楽しかったわ」
レティは馬車でレクサムに向かう。
「転移魔法をはじめ、貴重な経験をさせて頂きました」
オリヴァーは工房に戻った。
僕とソフィーは自分の部屋に戻って荷物を置いてから、夕食を食べるためにダイニングに向かう。
ダイニングに入ると、父上の「お疲れ様。報告は明日でいいから早めに休むといいよ」というメッセージカードが置いてあった。
父上の気遣いはありがたいな。
食後はすぐに自分の部屋に引き上げてベッドに転がった。
今回は王都のいろんなところに行けたなあ。
たまにはゆっくり観光するのも良いものだ。
そんなことをベッドの上で考えていたら、思ったよりも疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。
翌朝はすっきり目が覚めた。
良い気分転換ができたからかな。
朝食の席で父上と母上に王都滞在中のことを報告する。
ソフィーが観光や買い物をしたことを嬉しそうに話すと、両親も微笑んでいた。
また日常が始まる。
王都旅行は楽しかったけれど、やはり馴染んだ我が家はいいな。
ものづくりや未開地の探索もあるけれど、今日はゆっくり休もうかな。




