第43話 危惧
まぁ、ワームは取りあえず一匹残らず片付けた」
「そうですね、一件落着って所ですかね」
そう言うのは、血を分けたアドロの実の兄、クライス・マラインだ。ワーム達の残骸を再度確認するも、無残にも魔法で灰と化し、原型の面影すら留めていない。
「取りあえず、仲間と合流しなくちゃあならないのだが、お前ら知らないか?」
アドロがクライスのパーティ全員に声を掛け、逸れた仲間の居場所を聞く。
すると、クライスのパーティの一人、さっき魔法を放った女が言った。
「なら、ここの階層に一応ベースキャンプ張っているから」
その言葉に耳を疑った。つまり、ここに皆逃げ込んでいたという事になるのか?
「ベースキャンプ?」
俺は疑問を浮かべる。ベースキャンプといえば、根拠地という事になる。
「そう、一時的にここに退避してるんだけど、モンスター避けの結界が貼ってある筈。次の第3階層、まだ誰も辿り着けていない未攻略地点。その攻略の作戦を練るためにね」
ベースキャンプ・・・とはいっても、何処かに煙が立ち上っていたり、何かしら有る筈だ。辺りを見渡しても、それらしきものは見つからない。
「君たちも速く合流した方がいいんじゃない?そこでなら、逸れた仲間に合流できる可能性が高いと思うけど」
「そう言えば、俺もミノタウロスに上の階層で襲われて・・・途中でダラム達とも後で落ち合おうと一端解散してそのままだ」
俺がポツリと呟くと、クライスは少しだけ動揺した姿を見せると、頷き、冷静さを保ちながら、「そうか」と言う反応が返って来た。
「まぁ、ダンジョンで行方不明になる事自体は良くある話なんだよ。特にランクが下の冒険者には要注意な話だなぁ。何人それで死んだ奴がいるかも、分からない」
そう、唇を噛み締めて離すのはクライスだ。この世界では冒険者がダンジョンに入って、そのまま消息不明何て事も珍しくはないそうだ。仲間が目の前で死んで行くのを見て、トラウマを抱えた冒険者者もいる。
実家に帰って家業を継ぐケースだったり、一度こうなってしまえば、引退する確率が高くなるそうだ。それがそう言った理由で挫折する者も、そう少なくないそうで、冒険者稼業というものも言ってしまえばそれなりのリスクがある。
「それで、ついてこいってどういう事だ?」
「俺たちは、第三階層を目指す」
「第三階層・・・」
その言葉を聞いて息を飲む。第一階層ですら、狂気のモンスターが蔓延っていた。第二階層でも死にそうになっていたのだ。クライス達が来てくれなかったら、とっくに屍となり、貪り喰われていただろう。想像するだけで背筋が凍る様な嫌悪を抱いている。それ程あの見た目はどうも好かない。
「そのために、臨時のベースキャンプを張って、万全の準備で第三階層の攻略を進めるんだ」
それまで黙って話を聞き、口を開かなかったアドロが、呟く。
「そう、第三階層。未だに誰も足を踏み入れた事のない階層の筈なんだけど、先に一部の腕に自信がある冒険者が下見に入って、ソイル班はそのまま全滅、ダン班もどうなっているか分からない状態なんだよ」
クライスが話すことが、事の悲痛さを物語っていた。それを聞き、即座に思い浮かんだのはシルフィーの事であった。彼女も先に第三階層へ行ったのだろうか?
「シルフィーは何処に!?」
俺は即座に声を上げた。その勢いに驚いたのか、周りは一斉にビクッと大きく身震いした。
「・・・エルフ?」
俺が事情を説明し終えると、クライスは顎に手を当て、少し考え込むようにして言う。エルフという単語を耳にしたマライン兄弟以外は皆、顔を顰めた。やはり、この世界だとエルフへの当たりが強いのだという事を改めて身に染みた。
俺は全て事情を話した。彼女を探していることも、全て包み隠さずに。
「フムフム、そうか。君は恋人・・・いや仲間を探したいんだね?しっかし、今のご時世に亜人好きとは変わり者が居るもんだねぇ」
念入りに話を聞いていたクライスは、揶揄う様に言ってきた。彼が人を揶揄うときは大体二ヤつく。
「へぇ、新人はそう思っていたのか?」
「ちっ違うんだ!俺と彼女とはそういう関係では無く、とにかく彼女は命の恩人で!」
その誤解を招く可能性のある悪意のある物の言い方に、俺は必死で説明するも、アドロもクライス同様便乗する。やはり血を分けた兄弟だ。
「うん、事情は分かった、ユート君はそのエルフのを探しに行きたいんだね?支部が違うから分からないけど。ベースキャンプの方にいったん退避した方がいい。そこで詳細を聞いたらいいさ」
そう言うと、アドロの方を何か言わんとばかりに見る。アドロはそんな兄の行動を一目で察する。
「ああ、かなり危ないし、特に活性化した魔物は厄介だ。ワーム何て比じゃないな」
「お前なぁ、さっきワームに悪戦苦闘してたのはなんなんだよぉ?」
クライスの突っ込みに速攻アドロは否定する。
「うっせ!っち、違うし!?黙っとけ!」
周りの冒険者達の間で、笑いが巻き起こった。




