木曜日・想い 7
診察室を出た友梨はレントゲンやCTなどの検査を受ける為、待合の長椅子に座ってぼんやりとしていると、彼女の頬に冷たい何かが触れる。
「うひゃっ!」
「ぶっ……くくく。」
素っ頓狂な声を出してしまった友梨に対し、冷たい缶の飲み物を持った昌獅はくくくと笑っている。
「……。」
友梨はすぐさま何が起こったのか理解する。
「まーさーし。」
「悪い、つーか、すげぇ声出すな。」
「……。」
本当に謝る気があるのかと友梨は彼を睨みつけるが、昌獅はそんな友梨の視線など痛くもかゆくもないのかしれっとした顔でリンゴジュースを差し出す。
「…ほら。」
缶を揺らされ、友梨は渋々とそれを受け取る。
「ありがと。」
「ん。」
昌獅は自分用の缶コーヒーのプルタブに指を掛ける。
「ねぇ、昌獅。」
「何だ。」
「昌獅はさ、どうしてそこまで私に気をかけてくれるの?」
「……。」
友梨の問いかけに昌獅の手が止まる。
「昌獅はさ、カッコいいし、彼女だっているんじゃない?」
「いねぇよ。」
「嘘だ。」
「……。」
友梨の言葉に昌獅は溜息を零す。
「そんな余裕がなかった。」
「昌獅?」
「……。」
昌獅は缶コーヒーを見て、そして、目を瞑る。
「友梨、俺には姉が居たんだ。」
「……。」
友梨はそっと横目で昌獅を見る。
もし、彼が無理をしているというのなら、彼女は止める気でいた。
でも、杞憂だったのか、彼は彼女が思っていたよりもしっかりとした、何かに挑んでいるようなそんな目をしていた。
彼の口から語られる話は友梨が思っていたよりもずっと、重く、暗く、そして、昌獅という人間の一部の物語だった。




