木曜日・想い 6
友梨は地元の駅近くにある病院の待合のいすに座っていた。
「……。」
ちらりと横に座る昌獅に視線を向けてこっそりと溜息を一つ零す。
「友梨。」
「ひゃ、ひゃい。」
見ている事がばれたのかと友梨は驚いて肩を跳ね上がらせる。
「……さっきから何だ、言いたい事があれば言え。」
「……。」
やっぱりばれてた、と友梨は心の中で叫びながら顔を青くさせている。
「えっと、その……。」
「……。」
「ま、昌獅って病院苦手なのかな~、何て。」
「……。」
黙り込む昌獅に友梨は顔を引きつらせる。
「…………苦手……だろうな。」
「えっ?」
前髪をクシャリと掴んでいる昌獅に友梨はハッとする。
「あっ……。」
「友梨――。」
「高田さん、診察室二番のまでお越しください。」
「……あっ。」
昌獅が何か言おうとした瞬間、看護師さんから呼ばれてしまった。
友梨はどうしようかと迷っていると、昌獅は立ち上がり、友梨に手を差し出す。
「行くぞ。」
「うん。」
友梨は本当に良いのかと表情を少し曇らせながらも、差し出された昌獅の手を掴む。
「後で、話すから。」
先を歩く昌獅は振り返る事無く、友梨にそう言った。
「……うん。」
友梨は一瞬驚くが、すぐに複雑な感情が彼女を襲う。
話してくれるという事は自分を許してくれている事だから、嬉しい。
嬉しい反面、私なんかに気を許してくれてもいいのかと不安になる。
何で彼が私なんか、と友梨の中で卑屈な自分がむくむくと大きくなる。
「……ん?…高田さん?」
「えっ?」
いつの間にか診察室に入っていた友梨は目の前にいる医師にハッとなり、顔を青くする。
「あっ、あの…。」
「昨日階段から落ちたんだってね。」
「は、はい。」
「痛い場所とか気持ちわる所とかないかな?」
「……。」
友梨はちらりと後ろを見ると、呆れたような顔をしている昌獅の顔があった。
どうやら、友梨がぼんやりとしている間に昌獅がある程度説明してくれていたようだった。
「打ち身の部分が痛いですけど、それくらいですね。」
「…念のために検査をしましょうか?」
「えっと。」
友梨は思わず金額が、と思っていると、後ろの方で…。
「お願いします。」
「ま、昌獅…。」
「万が一があったら怖いだろう。」
「でも、大丈夫だよ?」
「お前の大丈夫という言葉ほど信用ならないものはない。」
「……。」
そこまで、言うのかと、友梨は恨みがましく昌獅を睨むが、彼は気にしていないのか真っ直ぐに医者を見ている。
「で、高田さん、どうします?」
「お願いします。」
「それじゃ、呼ばれるまで待合で待っててくれるかな?」
「はい。」
「ん。」
いつの間にか昌獅は友梨の鞄を掴んで外に出ようとしている。
「昌獅、鞄返して。」
「重いだろう。」
「それ、私の鞄だから、お願いだから返して。」
「……。」
無言で扉を開けて、友梨を先に行かせようとする昌獅に友梨は溜息を零す。
「ねぇ、私の話聞いてる?」
「聞いてる、さっさと行け。」
「……。」
友梨はこれ以上何を言って無駄だと分かったのか小さく肩を竦め、診察室から出ていく。
そして、それを見送った昌獅もまた扉をくぐって彼女の後を追った。




