木曜日・想い 1
友梨はぐっと背伸びをして、固まっている筋肉をほぐす。
「疲れたー。」
今にも机にうつ伏しそうな友梨だったが、流石に今彼女がいるのは学校の教室なので、そんな事はしなかった。
「ふう、さっさと家に帰って寝たいな…。」
昨日は色々ありすぎてあまり眠れなかった友梨は学校で居眠りなんてする事もなく、少しぼんやりとする頭でしっかりと授業を受けていた。
そして、教科書を机から取り出し、次々と鞄に詰め込み始めていたら、廊下が異様にうるさくなる。
何だろうと思いながらも友梨は自分に関係ないと思っていたので、手を止める事もなく詰め切ると鞄を叩く。
「よし、終わり。」
「おい、友梨。」
「へ?」
聞き覚えのある声に友梨はギギギとまるで接続部分がさび付いたロボットのように首を声のする方に向ける。
「な、何で…。」
声のする方を見た友梨は体を硬直させる。
そこにいたのは昌獅だった。
「何でいるの?」
「お前、何で普通にしているんだ。」
「えっ?」
何の事だか分からない友梨は目を白黒させていると、つかつかと昌獅は友梨に近づく。
「俺はお前に言ったよな?」
「何を?」
「……。」
それを見て友梨は顔を引きつらせた。
昌獅が笑っている。
その眼は決して笑っていない冷ややかなモノだった。
「えっと……ま、昌獅さん?」
「さん、付はいらない。」
「つ、突っ込む所はそこじゃないと思いますけど?」
「そうか?」
「ええ……。」
冷や汗をだらだらと流しながら友梨はどうしたものかと頭をフル回転させる。
「友梨。」
「ひゃいっ!」
「俺言ったよな?」
「にゃ、にゃにを?」
「病院。」
「……。」
昌獅の言葉にほんの少しフリーズしていた友梨だったがすぐにハッとなる。
やばい、と友梨の顔には書いていた。
そして、それを読み取った昌獅はガシリと彼女の腕を掴む。
「強制連行だと言ったよな、俺。」
「そんなの聞いてない。」
「言った。」
「言ってない。」
「言った。」
言った、言ってないのやり取りをしているが、その体は確実に靴箱に向かっていた。
「痛い腕。」
「そう強く握っていない。」
「嘘だ。」
「本当だ。」
友梨はムッと昌獅を睨む。
「昌獅のバカ。」
「何だと。」
「病院行かなくても大丈夫よ。」
「そう思うのはお前だけかも知れないじゃないか。」
「本当に大丈夫よ。」
そう言う、友梨に昌獅は手に力を入れ、友梨の腕を締め付ける。
「――っ!」
痛みで顔を歪ませる友梨に昌獅はハッとなり彼女の腕を離す。
「悪い。」
「……大丈夫だけどさ、本当に、私大丈夫だよ。」
「頼むから、俺と病院行こう。」
「……。」
いつもより弱弱しい昌獅に友梨は初めて昌獅の顔をちゃんと見る。
普通の顔色だと思った、でも、よくよく見ればその眼は友梨が心配だ、不安だからと訴えていた。
「……。」
本当に何ともないと思っている友梨は病院に行く必要世うが分からなかった。
でも、ここまで昌獅が心配しているのに、行かない、という程意地は張りたくもなかった。
「分かった。」
こうして、友梨は昌獅と一緒に病院に行く事になった。




