水曜日・過去 39
「リョウくん。」
涼太はこのメンバーの中で自分を呼ぶ唯一の人に対して溜息を零しながら振り返る。
「何だよ美波。」
「あのね。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
沈黙が続き、涼太は黙って待っているが一向に話が始まらない。
「美波…続きはないのかよ。」
「えっとね。」
「……。」
「えっとね…。」
「……。」
「あのね…。」
「……………~~~っ!」
いつまで経っても何も言わない美波に涼太は静かに拳を震わせる。
「その……。」
「だ~~~っ!」
「ひぅ。」
髪を掻き乱しながら天を仰ぐ涼太に美波はびくりと体を震わせる。
「いい加減話せ。」
「あの…ね。」
「ん。」
「……リョウくんはさ、どう見る?」
「何がだよ。」
全然話が進まない事に苛立ちを隠さない涼太に美波は困ったような顔をしている。
「この『ゲーム』だよ。」
「……。」
「何であたしたちだったんだろう。」
「適当じゃねぇの?」
「本当にそうなのかな?」
「違うって言いたいのか?」
涼太は驚いていた、友梨や智里ならそんな事を言っていても可笑しくはないのに、美波がこんな事を言うとは思ってはいなかった。
「ん~。何と言えばいいのか分かんないんだけどね、例えるなら、実験?」
「実験?」
「無作為にあたしたちを選んだかもしれない、違うかもしれない、だけど、行っている事は普通じゃないよね。」
「ああ。」
「あたしたちは真剣に挑んでいる、だけど、それをやっている人は遊んでいる……ううん、違う実験体としてあたしたちを見ているような気がするの。」
「何か面白い話をしているようね。」
突然現れた智里に涼太は反射的に顔を顰める。
「あら、その表情は何なのかしら?」
「……。」
「まあ、今回は見逃してあげるけど、次はないわよ。」
「……。」
しっかりとくぎを刺す智里に涼太は顔を顰める。
「ところで、美波。」
「何?」
「貴女は何故そう思ったのかしら?」
「何を?」
「見ているようだと。」
「だって、色んな所にあるよね。」
「何がだ?」
美波の言葉の意味が分からず、、涼太は顔を顰める。
「隠しカメラ。」
「――っ!」
涼太は反射的に後ろを見るが、この部屋にそんなものがあるとは思えなかった。
「……ふーん。」
智里は特に驚いていないのか、顎に手を当てている。
「何処にそんなものがあるんだよ。」
「そこの時計の針の中心とか、あと、そっちの置物のくぼみ、あと、さっきロッカーの所にもあったよね。」
涼太は知らず知らずのうちに自分の腕を摩る。
自分の中の温度が一気に下がったような気がした。
「成程ね。」
「智里お姉ちゃん?」
「おい、どうするんだ?」
「どうしようもないでしょ?監視されているとは思っていたけど、その証拠も掴めないから放っておいたけど、どうせ、見つけたとしても、何も変わらないわ。」
「どういう事だよ。」
「リアルタイムで見られているのだとして、それをいちいち壊していったとしても、相手はそれ以上に「目」を持っているのなら、潰すだけ、わたしたちの時間を無駄にすると思っただけよ。」
「……。」
智里の言い分は分からなくはないが、それでも、いい気はしなかった。
「そもそも、この携帯だって、色々と入っているともうわよ。」
「……。」
智里は送り付けられてきた携帯を振る。
「あら、その顔はそこまで考えつかなかったって事かしら?」
「……。」
黙り込む涼太に智里は溜息をわざとらしく零す。
「図星みたいね。」
「そんなんで、大丈夫なのかしらね。」
智里は目を細め、ジッとある一点を見る。
「まあ、こちらのキーカードも気づいていないようだし、大目に見てあげた方がいいかもしれないわね、それにしても……、こちらのキーカードが……なんてね。」
「何か言ったか?」
智里の最後の言葉が聞き取れなかった涼太が聞くが、智里は何事もなかったかのように身を翻す。
「無駄話も終了よ。」
「おい。」
「さっさと、今日は片を付けて帰りましょう、疲れたわ。」
自由奔放の猫のように智里はマイペースに動き出す。




