水曜日・過去 40
友梨はふと視線を感じて、手を止める。
「……。」
視線の先を見れば、智里がこちらを見ていたような気がしたのだが、すぐに逸らされてしまった。
「何かあったのかな?」
「どうした?」
友梨の手が止まっている事に気づいた昌獅が問いかけて来たので、友梨は慌てて笑って誤魔化す。
「あっ、うん、何でもないの。」
「……。」
ジッと見てくる昌獅に友梨は苦笑いを浮かべる。
「本当に何もないんだよ。」
「……。」
嘘を吐くな、という目に友梨は頬を掻く。
「本当だよ、ただ、視線を感じてみれば智里がいただけだし。」
「……。」
「あの子が何も言ってこないって事は何もないと思うし、それよりも、今手を動かさないと何か言われちゃうよ。」
「……。」
昌獅はフッと笑い、私の頭を掻き乱す。
「なっ!」
目を白黒させる私はハッとなり昌獅を睨むが彼はそんな視線を何とも思っていないのか、そのまましゃがみ探し始める。
「もう……。」
友梨は怒りまではいかない不思議な感情を抱くが、それを発散させることもなく、ただ、自分の胸の内に隠す。
「本当に私の周りは自分勝手な人ばかりね。」
「それはお前もだろう。」
「私は違うでしょ?」
友梨は心外だと思いながらそう口にすると、昌獅は怪訝な顔をする。
「お前は自分勝手だよ。」
「そうじゃないよ。」
「……。」
昌獅はジッと溜息を零し、ポツリと呟く。
「無自覚と言うのは怖いな。」
「何がよ。」
「……自分の事を蔑ろにしているのは、自分勝手だろうな。」
「何の事よ?」
意味が分からない友梨は眉を寄せる。
「さあな。」
昌獅は答えを言う事はなく、ただ、手を動かす。
「……。」
友梨はこれ以上無駄なのだと悟り、諦める。
「……。」
「……。」
黙々と探す二人だったが、それはすぐに友梨が見つける。
「あった。」
友梨は棚の一角に隠されていた「Ⅻ」という数字を見つける。
それは液晶パネルのついた金庫だった。
「智里、「十二」を見つけたよ。」
「そう、それの問題は?」
「……「12→?」だって。」
「そう……。」
「これじゃ、何かわかんないね。」
「ええ。いくつもの候補があっても、世界にたどり着けないと意味がないから、他のヒントを探さないといけないようね。」
「そうだね。」
「おい、友梨、どういう事だよ。」
「どういう事も、そういう事も、残りの「10」、「11」を探さないと答えが一つに絞られないって事だよ。」
「……。」
昌獅は納得がいかないという顔をしているが、友梨はこれ以上何も言う事も出来ないので、金庫を取り敢えず、近くにあったデスク上に置く。
「友梨、推測も言う気はないのか。」
「うん、智里も言わないしね。」
「……抱え込むなよ。」
「抱え込んでいないよ?」
私の言葉に昌獅はまだ納得していないようだが、自分がしなくてはならない事は分かっているのかそのまま友梨から離れて行った。




