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ダークネス・ゲーム  作者: 弥生 桜香
第五章

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水曜日・過去 37

 友梨は一時的に問題を解く事を諦め、カードキーを探す。


「おい、そっちはどうだ?」

「ないね。」

「ああ。」

「うーん。」


 涼太が声を掛けると勇真、昌獅、美波の順で返事を返す。


「本当にこの部屋にあるかもわからねぇな。」

「そうだね。」


 友梨はただ、ロッカーの一つ一つの中を確認し、十の数を越えた時、ようやく彼女は自分に向けられた視線を感じ取った。


「ん?」

「……。」


 じっと見つめる厳しい目に友梨の額から汗が流れる。


「えっと、どうしたの昌獅?」

「……。」

「だ、黙ってられると困るんだけど?」

「……。」


 黙ったままの昌獅に友梨は眉を寄せ、一瞬悩むがすぐに昌獅に近寄る。

 数歩というところで友梨は何もない所で躓く。


「ひぇっ!」

「友梨っ!」


 友梨は床に顔をぶつけると思って固く目を瞑るが、思っていた衝撃はなく代わりに暖かい何かが彼女を優しく包み込んでいた。


「本当にお前は目が離せないな。」


 頭上から溜息と共に零れた言葉に友梨は固まる。


「……。」

「おい、友梨。」


 ダラダラと垂れる汗を感じながら友梨は必死で頭を働かせる。


「大丈夫か、お前?」

「ダ、ダイジョウブです。」

「……片言になっているぞ。」


 呆れたような物言いに友梨は顔を真っ赤にさせるが、それでも、自分のドジっぷりの羞恥には負けていた。


「……。」


 いつまでも昌獅に支えてもらう訳にもいかない友梨はゆっくりと顔を上げる。


「大丈夫か?」


 優しい声に友梨は小さく頷く。


「大丈夫…ありがとう……。」


 しっかりと言いたかったのに、蚊の鳴くような小さな声になってしまい友梨は口をもごもごさせる。


「気を付けろよ。」


 友梨が一人で立てたことを確認すると、昌獅は友梨の頭を叩く。


「ねぇ、昌獅。」

「何だ。」

「昌獅はさ、私の頭叩くの好きだよね。」

「はぁ?」

「……無意識?」


 友梨の言葉に本当に驚いている昌獅に彼女は呆れながら聞き返す。


「嘘だろ。」

「……無意識決定。」


 友梨は軽く叩かれた自分の頭を撫でる。


「まあ、嫌じゃないけどさ。」

「友梨?」

「何でもない、というか、何で昌獅は私を見てたのよ。」


 初めに昌獅に見つめられそこから発生した出来事を思い出し、友梨はそもそもの原因を聞く。


「お前が大丈夫かと思って。」

「大丈夫だよ?」


 そんなにも自分が思いつめた顔でもしていたのかと、友梨は不安になりながら頬に自分の手を押し当てる。


「勘違いしているな。」

「えっ?」

「お前階段から落ちただろうが。」

「あっ…。」


 すっかりと忘れていた事に気づかされ、友梨は気まずくなり目を逸らすが、突き刺さる視線に渋々戻すのだった。


「そう言えばそうだったね。」

「忘れていたのか。」


 呆れたような顔をする昌獅に友梨は目を逸らす。


「だって。」

「お前な……これが終わったらちゃんと病院に行けよ。」

「えっ?何で?」

「……。」


 友梨は昌獅の表情を見てしまったと思ったが、もうすでに漏れた言葉は残念ながら戻る事はなかった。


「お前本気で言っているのか?」

「え、えへへ…。」

「……分かった。」


 ようやく話が終わったと思った友梨はホッとした。


「うん、じゃあ、私はこっちを探すから、じゃあね。」

「…………もし、行ってなかったら明日強制連行だ。」

「ん?何か言った?」


 昌獅が何か言ったのは聞き取れた友梨だったが、残念ながらその内容までは聞き取れなかったので、彼女は首を傾げた。


「何でもねぇ。」

「ふーん。」


 友梨は大したことじゃないんだろうな、と一人納得して捜索を再開する。

 そして、カードキーを見つけたのは涼太だった。

 Ⅷと書かれたロッカーの中に入っていたカードキーはよくよく見れば何かの絵が描かれていた。


「何か見覚えがあるんだけどな?」


 描かれたものは王座に腰掛けた人物が剣と天秤を持った絵だった。


「タロットでしょ。」

「智里?」


 友梨が悩んでいた事をサラリと答える智里は涼しい顔をしていた。


「タロットの8「正義」カードでしょ?」

「あっ。」


 友梨は智里の言葉でその絵柄をどこで見たのか思い出す。

 昔漫画雑誌の付録でついていたタロットカードの意味を調べる為に図書館からそれにまつわる本を何冊か読んだ事があった。

 その時にこんなカードがあるのかと納得した。


「何か意味があるのかな?」

「あるんじゃないかしら?」

「でも、これは今回の意味じゃないよね。」

「……。」

「……。」


 智里と友梨は互いに睨み合うようにして見る。


「どういう事だ。」


 二人の言いたい意味が分からない昌獅は眉間の皺がいつもより深くなっている。


「えーと、智里。」

「どうせ、すぐ分かる事だし、後でネタバラしすればいいのじゃない?」

「えっ、でも…。」

「説明が面倒よ。」

「そっちが本音でしょ。」

「……。」


 ポツリと呟かれた言葉に友梨が反応するが、智里はそれを丸ッと無視する。


「智里って本当に可愛くない。」

「可愛くなくて結構よ。」

「……。」


 冷たい智里の態度に友梨は半ば落ち込みながらも、ずっと考えてたパスワードを入力する。


「3…2…7…4……。」


 友梨が声を出しながら押すと智里がその数字を耳しながら顔を顰める。


「……その数字。」


 ポツリと呟かれた言葉に友梨は儚く笑う。


「……。」


 それは一瞬のやり取りで、友梨は自分と智里しか分かっていないと思っていた、だから、彼女をずっと見ていた人に気づいていなかった。


「……。」

『解除されました、カードキーをスライドしてください。』


 感情のない女性の声に促され、友梨はカードキーを溝に埋めスライドさせる。

 刹那、電子音が鳴る。


「開いたようね。」

「うん。」

「行きましょうか。」


 ようやく9までたどり着き、友梨はホッとする。


「やっと「9」まで来た。」

「……。」


 友梨は自分が全員先に行ったと思い、少し油断していた。

 近くに彼女を見つめる彼の姿があった事を、だから、彼女は築かずに呟いてしまった。


「3274…か。」


 友梨は自分が押した数字の意味を自分だから気づいてしまった。

 3月27日それは友梨の誕生日、つまり、友梨を指す。

 そしてーー。


「4…「死」って事だよね…私誰かに死んでほしいと思っているほど憎まれていたのか…。」

「どういう意味だ?」


 低い声音に友梨は弾かれたように振り向く。


「昌獅…居たの?」

「どういう意味だ。」


 低い声に友梨はびくりと体を震わせる。


「あの……。」

「説明しろ。」


 目の前に昌獅、後ろにはロッカー、友梨には逃げ道はなく、昌獅はドンとロッカーに拳を殴りつけ、友梨は自分という檻に囲う。


「あの……。」

「逃げるな。」


 その眼を見て友梨は嘘も吐けないと悟る。

 観念した友梨は力を抜いて、そして、説明する。


「私の誕生日ね、3月27日なの、だから、327そして、縁起の悪い数字でさ、4,9とか言うでしょ、4は「死」9は「苦」ってね。」

「……。」


 友梨は何とか笑みを浮かべた瞬間、彼女は昌獅に捕えられる。


「お前は死なせない。」

「あっ……。」


 友梨の脳裏に夢で見た「ナツ」を思い出す。

 もし、彼女が本当に昌獅の姉ならば昌獅は身内を失っている事になる。

 それならば、彼にこんな事を言ってはいけなかったと、友梨は自分の失態に唇を噛む。


「絶対に守るから。」


 ギュッと抱きしめられ、友梨はその胴に手を回そうと手を上げた瞬間――。


「友梨先輩、昌獅、何してーー、昌獅何してんだよ。」


 ひょこっと顔をのぞかせる涼太は床で尻餅をついている昌獅を呆れた面持ちで見ていた。


「ゆーうーり…。」


 恨みの篭った声音に友梨は乾いた笑いを浮かべる。


「あ、私もいかないとね、ごめんね。」

「いえ…。」


 涼太に謝り次の部屋に向かった友梨を見て、昌獅はガシガシと髪を掻き乱す。


「くそ…。」


 悪態を吐き、昌獅は涼太を睨む。


「何睨んでるんだよ。」

「何でもねぇよ。」


 あからさまに何かあるだろうが、と涼太は思ったがあまりかかわってはいけないと思ったのか、肩を竦めた後、顔をひっこめた。

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