水曜日・過去 32
「で、どうすんだよ。」
苛立ったような声を出す昌獅に友梨が振り返れば案の定苛立っている昌獅の顔がそこにはあった。
「解くしかないと思うけど?」
「で、どっちだ?」
「今はわかんないってば。」
友梨は肩を竦める。
「……。」
昌獅は苛立ちながら、舌打ちをして周りを見渡す。
「二択だからどっちでも。」
「下かな?」
「上じゃねぇか?」
「……。」
「ちょっと待ってね、確かあのメモもってたよね?」
「何をだよ。」
急にガサゴソと鞄の中を探り出す友梨に一人を除いて目を瞬く。
「お姉ちゃんのあの趣味?」
「悪い?」
「何よ…。」
「別に、で、どうして、そんなものが必要なの?」
「あー、うん、これって、六月の異名だと思うんだよね。」
「何でかしら?」
「あー、あんま覚えてないけど、確か興味本位で調べた時にさ、恋染月、とか夢見月とかすごくきれいなものがあって、確か鳴神月もあったような気がするんだよね。」
「……ふーん。」
「あっ、あった、あった。」
友梨はそういうと小さなメモ帳を取り出した。
「お前さっき分からないと言っていただろうが。」
「うん、今は分からないって言ったよ。」
「……。」
「あー、やっぱ、鳴神月は六月か……。」
「何で六月の異名だと思ったのよ。」
「順に言ってそうでしょ?」
「まあね。」
「んー、あー、雨月は分からないけど、風待月が六月みたい。」
「そう、なら、上ね。」
「そうだね。」
マイペースに話しを進める姉妹にとうとう昌獅は頭を抱える。
「こいつって、自分は何も役に立たないと言いながらこうして役に立っている事にどうして気づかないんだよ。」
「それが、馬鹿姉だからよ。」
「――っ!」
急に背後から現れた智里に昌獅は肩を跳ね上がらす。
「おま、さっきまで友梨と話していたんじゃねぇのかよ、高田妹その一。」
「話していたけど、終わったから貴方の大きな独り言に付き合ってあげただけよ、というか、高田妹その一、ってネーミングセンスないわね。」
「あん?」
カチンときた昌獅は智里を睨むが智里は涼しい顔をしている。
「ふう、誰を中心として見ているかがわかるけど、それにしても、ふーん。」
「何が言いたい。」
「何にも。」
「……。」
「……。」
「二人とも、何している訳エレベーター仕舞っちゃうよ。」
「あら、いつの間に。」
「押したらすぐだった。」
「ふーん。」
「ほら、昌獅も。」
手招きをする友梨に昌獅は色々と馬鹿らしく思い、肩を竦め彼女の元に足を向けた。




