水曜日・過去 29
「さて、どうしようか。」
勇真はニッコリと笑いそう言うとそれぞれを見る。
「………。」
「えっと……。」
「ん~。」
「……。」
「普通に開けるんじゃねぇのかよ。」
黙り、そして、何かをうかがうような目をする智里。
何か言いたそうな、でも、言ったら迷惑じゃないか、と戸惑いを見せる友梨。
本気で考えようとしているのか、ふりをしているのか分からない美波。
睨むようにして勇真を見ている昌獅。
そして、涼太がそれぞれの反応を見て、自分の思っている事を口にした。
「何かあったら拙いからね。」
「確かにな。」
「あの……。」
勇真の言葉に涼太は頷き、そして、友梨は意を決したように口を開く。
「どうしたんだい?」
「先ほど、上の階で昌獅と一緒に機械の蠍と蜂に襲われました。」
「……。」
「もし、この階でも同様な事が起こったらまずいので、美波と智里は下の階で待機してもらって、安全なら五階まで上ってきたらと思うんですけど…。」
友梨の言葉に勇真は頷き、涼太も異論はなく肯定の言葉を述べる。
「友梨。」
「……。」
冷たい声に友梨は一瞬肩を揺らし、そして、挑むような目で昌獅を見た。
「何?」
「お前はどうする気だ。」
「私は扉を開けようと思うよ、それか、上で待機するか。」
「駄目だ。」
「何で。」
「何でって分かっているだろうが。」
苛立ちを隠そうとしない昌獅に友梨は肩を竦める。
「私は大丈夫よ。」
「何処がだ。」
「何で昌獅はそこまでして、私を外そうとするの。」
「お前が女だからだ。」
「女だからってそれ何よ、智里だったら巻き込む気でしょ。」
「アレは人間じゃない。」
「人間じゃないって…それは……。」
突然巻き込まれるようにして名前をあげられた智里の額には青筋が浮かんでいるのだが、残念ながら友梨はその事に気づいてはいなかった。
「うん…私もそう思う時もあるけど……って、そんな話じゃなくって。」
「お前が勝手に自分の妹を引き合いに出したんだろうが。」
「それは……。」
「取り敢えず、てめぇは四階にいつか、よくても間の踊り場までだ。」
「……。」
「痴話げんかもいい加減にしていただけるかしら?」
黙り込んだ友梨を尻目に智里は二人の間に割り込む。
「何だよ。」
「どうでもいい事よ、どうせ、駄犬は譲る気はないのでしょうから、最初から役割は決まっているでしょ?」
「……。」
「駄犬その一が扉を開けて、踊り場の所で駄犬その二と優男がいればいいでしょう、そして、わたしたち三姉妹は四階で待機よ。」
「智里っ!」
「文句は言わせないわ、さっさと配置につきなさい。」
智里は有無を言わさず、そのまま自分は下の階に向かう。
一瞬戸惑った美波は智里の後についていき、涼太は友梨と智里を見て何か友梨に言いたそうな表情をするが、結局何も掛ける言葉が見つからなかったのか、大人しく踊り場まで行く。
「友梨ちゃーー。」
「友梨。」
勇真の言葉を遮るように昌獅は友梨に言葉を掛ける。
「昌獅……。」
「ここは俺たちがいるんだ、お前が無理に頑張る必要はねぇんだよ。」
「無理じゃ…。」
「力は温存させとけ。」
「でも…。」
「正直体力きついんだろう。」
「――っ!」
昌獅の言葉に友梨は言葉を詰まらせる。
「階段の上り下り、それに先ほどの戦闘、それにお前の妹とのやり取りでお前結構やばいだろうが。」
「でも…。」
「少しでも休め。」
ポンと友梨の頭を叩き、昌獅はいつでも、扉を開けれるようにドアノブに手を掴む。
「友梨ちゃん。」
勇真が声を掛けると友梨はハッとしたような顔になり、そして、唇を噛んだ。
「さっさと行け。」
昌獅の言葉に友梨は一瞬泣きそうな顔になった。
そして、勇真が声を掛ける事もなく友梨は大人しく四階にたどり着いた。




