水曜日・過去 24
美波は前を歩く姉を見て首を傾げる。
「……んー?」
何か違和感を覚えるのだが、それが何か美波には分からない。
「どうしたんだ?」
後ろから涼太に声を掛けられ、美波は振りむく。
「ん~?」
「……。」
唸る美波に涼太は眉を寄せる。
「なんか変な事を考えているのかよ。」
「変な事ってどうゆう事?」
小首を傾げる美波に涼太は溜息を零す。
「ああ、そっか,てめぇは天然だったな。」
「何が?」
「……。」
普通の人ならば喧嘩になりそうな会話なのに美波がほけほけとしているからか喧嘩にはならず突っ込み不在の漫才のようになっている。
「ねぇ、リョウくん。」
「……お前もある意味最強だな。」
「へっ?」
「何でもねぇよ。」
涼太は大げさに溜息を零し前方の二人を見る。
会話が弾んでいるようだが、ところどころ不穏な単語が聞こえ、涼太は耳を完全にふさぎたくなるが、美波がいる手前そうできないでいた。
一方、天然の入っている美波は何となく違和感があるようだが、幸いにも涼太のように智里たちの会話の不穏な単語は聞こえていないようで首を傾げているだけだった。
「智里お姉ちゃんたち仲がいいね。」
「そうか?」
美波の言葉に涼太は顔を顰めた。
「うん、智里お姉ちゃんって外面が良いから。」
「……。」
絶対に褒めてはいない言葉に涼太は絶句する。
「だから、あんなにも自然な顔をするなんて気を許しているんだよ。」
「そ、そうか。」
「うん。」
涼太はフッと過った考えに冷や汗を流す。
もし、美波が言っているように今の智里が素を表しているのが気に入っているとかいう理由ならば自分や昌獅に対してのあれは一体何なのだと恐ろしくなる。
「どうしたの?」
「いや、何でもない…。」
言いよどんでいる涼太に美波は小首を傾げる。
「そう?」
「ああ。」
「そろそろ私語は止めたらどうかしら?」
「うげ…。」
氷のような冷たい声音に涼太は反射的に顔を顰める。
「あんたの方こそ私語だったんじゃねぇのかよ。」
「あら、本当にそう思っているの?」
「ああ。」
「うーん、だったら、駄犬の目は節穴って事ね。」
「何だと。」
あからさまに喧嘩を売っているような智里に思わず涼太は噛み付く。
「弱い犬はよく吠えるわね。」
「この……。」
涼太の手が震え今にも智里に飛びかかりそうだが、彼の理性が強いのか手が震えているだけでとどまっている。
「ふん、暴力で訴えないだけ理性だけはあるようね。」
「……。」
ギロリと智里を睨む涼太に彼女は涼しい顔でそれを受け止める。
「さて、問題。」
「問題?」
「わたしたちはどちらに行くべきだと思う?」
智里はそう言って二つのドアの前に立つ。
そのドアには二つの「4」が書かれていた。




