水曜日・過去 23
涼太は目の前の二人を見て眉を寄せる。
先頭を歩くのは智里と勇真真ん中に美波を置き、殿に涼太がいる。
そこまではよかった。
涼太は注意深く周りを見ており、そんな時、前を歩く二人の距離が可笑しい事に気づく。
「……。」
智里はある意味では普通に見えるはずなのにどことなく勇真を警戒しているように見えて、勇真もまた智里を警戒、否、ただ観察するように見えた。
涼太はそれを何気なく見ており、そして、ふと何故智里が警戒しているのか気になった。
勇真とはほんの昨日であったばかりの人としか認識していない。
と言ってもここにいる全員がそうなのだが。
そして、自分たちが集まったのは元凶があり必然であった。
もし、内通者や敵が混じっていても自分たちは分からないんだろうな、と何となく思った瞬間、涼太は体を強張らせた。
もし、敵が混じっていたら?
涼太は口の中が渇き、つばを飲み込む。
自分たちは昨日今日であったばかりの他人の群れだ。
たとえ、敵が混じっていたとしても、分からない。
それは危険ではないのではないのだろうか。
「……。」
涼太は頭を振り、そして、二つの考えに至る。
自分にとって初めての相手かも知れないが、二組は違う。
一組は友梨、智里、美波の姉妹。
もう一組は何かの因縁がありそうな昌獅と勇真。
昌獅と勇真の二人は分からないが、三姉妹はまだ仲がいい方の姉妹で彼女らの一人が敵であるはずがないだろう。
それに友梨と美波は確実に敵ではない、彼女たちの目を見ればそれはおのずとわかるだろう。
そして、もう一つ、昌獅は友梨を想っている。
昌獅は人を寄せ付けない雰囲気を持っていた、でも、友梨が傍に居ればそれはやわらぎ、彼女を大切に思っているのが伝わった。
だから、昌獅は友梨を裏切らないし、その真っ直ぐな視線は彼女を騙しているようには見えなかった。
もしも、友梨たちの中にいれば涼太の目は節穴だったという事。
ただ、勇真だけは分からなかった。
勇真と昌獅は仲が悪そうで、かと言って、勇真はこういう人物だというほど自分は知らない。
だから、智里が警戒する意味を理解した。
万が一、勇真が敵ならば家族に害が及ぶかもしれない。
それは彼女にとって何になるのかは分からない、だけど、不愉快なのだろう、だから、智里は勇真を警戒する。
万が一、勇真が敵ならば動けるように。
涼太はちらりと美波を見る。
自分だって大切な人がいる、だから、勇真がもし敵ならば涼太は大切な人の為に彼と敵対するだろう。
涼太は自分の手を見る。
自分の手は小さくきっと大切なものを零してしまうだろう。
だけど、自分の目の前でポヤポヤしている少女だけは何があっても守りたいと思った。
手を握り、涼太は気づいてしまった事を心の中に沈める。
今はまだ見極めの時、可能性の段階で敵か味方か分けてはいけない。
しかし、可能性はいつでも考えないといけない、だから、涼太は頭を悩ませながらも進む事を選んだ。




