水曜日・過去 6
中に入るとすぐ右手には扉があり、真正面にはエレベーターホールがある、そして、その突き当りにはまた扉があった。
「普通のビルみたいね。」
「ただ、何だろうな、この張り紙。」
右手の扉に張られている紙に触れ、昌獅は怪訝な顔をする。
「不用意に触るべきではないと思うんだけど。」
智里の冷え切った声を無視して昌獅はジッと書かれている字を見る。
「「伍」ってなんの意味があるんだ?」
「うーん。それを言うならエレベータのそれぞれの扉には「Ⅲ」、「2」、何て読むのか分からないけど……「肆」ってかいてあるよ。」
「突き当りには「①」ね。」
「どうしようか。」
「バラバラで行動する?」
「馬鹿じゃないのか?」
美波の言葉に涼太はすかさず突っ込みを入れる。
「何で?」
「バラバラに行動して何かあったらどうするんだよ。
「でも、分かんないんだよ?」
「それでも、一人一人で行動するのはよくねぇよ。」
「うー……。」
「まあまあ、二人とも確かに二人が言っているのはどちらも正しいと思うよ。」
友梨は二人の間に入り、宥める。
「私としてはチーム分けをして二手で分かれたいかな。」
「うーん、リスクはあるけど、それも手だね。」
「チーム分けはどうするつもりだ?」
「取り敢えず、三村さんと日部くんが別チームがいいと思うよ。」
「そうね、戦力的に考えたら妥当ね。」
智里の肯定的な言葉に友梨はこっそりと息を吐く。
「それで、他のメンバーは?」
「うん、三村さんのチームには智里、日部くんのチームには私が入ったらいいかな、と思うんだけど。」
「そうしてくれ。」
「うん、そうだね。」
昌獅は僅かに智里を見たと思ったらすぐにそう言い、友梨はやっぱり、昌獅は智里が苦手なんだな、と思った。
そして、同じことを思っているのか勇真は苦笑して頷いていた。
「で、残るチビたちはどうするの?」
「それなんだよね……。」
友梨は残る二人を見る。
友梨的には涼太をこちらのチームに入れたい、だけど、そうすれば美波があっちのチームに行く。
そうなれば勇真の負担が大きくなるので、申し訳ない。
そして、美波がこちらのチームに入れば彼女を守り切れる自信がなかった。
「うーん。美波ちゃんをこっちの方に入れようか?」
「でも、そうすると三村さん大変じゃないですか?」
「何とかなるよ。」
「……。」
友梨は申し訳ないと思いつつも、どうする事も出来ないな、と諦めていると、涼太が手を上げる。
「一つ提案ですけど。」
「何かしら、駄犬。」
「いちいち突っかからないでくださいよ。」
火花を散らす二人に友梨はオロオロしかけていると、それに気づいた涼太が咳払いをして空気を変える。
「友梨先輩と昌獅には申し訳ないけど、オレと美波が勇真たちのチームに入るのはどうだろう。」
「ふーん……。」
「昌獅なら友梨先輩一人くらいなら何とかなりそうだし、もし、美波がそっちのチームに行ったら友梨先輩、こいつに気を取られ過ぎてなんか共倒れしそうだし。」
「う……。」
涼太の言葉に友梨は僅かに顔を引きつらせる。
「かといって美波が勇真のチームに入っても、まあ、そう簡単にくたばりそうもないけど、美波がひょろっと消えて、なんか仕出かしそうで怖いし。」
「何か酷い言われよう……。」
唇を尖らせる美波に涼太は本当の事だろう、と言い、話しを続ける。
「オレは勇真や昌獅みたいに頼りにはならないけど、こいつ一人を見張る事くらいと自分の身を守るくらいはやれると思う。」
「で、何で、お姉ちゃんたちの方に入らずこっちな訳?」
智里はどこか試すような目で涼太を見つめるが、それに気づいていない涼太は特に気にする事無く言葉を発する。
「友梨先輩の所にオレたちが入っても友梨先輩は気を取られ過ぎて自滅しそうだから。」
「……。」
友梨は涼太の言葉に思わず、額に手を当て、私ならやりかねない、と思う。
「で、あんたなら適度に放置をするし、勇真だってその辺は割り切ると思から。」
「………。」
「で、どうする?」
挑むように智里を見る涼太に友梨はこれ以上自分が口を出す必要はないと思い、ただ成り行きを見つめる。
「確かに、それが一番よさそうだけど。」
智里は何故か友梨たちを見る。
「お姉ちゃんたちは大丈夫な訳?」
「えっ?」
「こっちは四人、まあ、戦力とかは別として人数的にはそっちの方が大変だと思うけど、お姉ちゃんは大丈夫だと思うの?」
「……私は。」
友梨は涼太の提案には納得している、だけど、ふと、昌獅は大丈夫なのかと、不安になって彼を見ようと顔を動かそうとした瞬間、低い声が友梨の耳に届く。
「俺らの所はそれでもいいが、逆に聞くが、そっちはそれでいいのか?」
昌獅の言葉は友梨以外の人に問いかけられ、そして、それぞれが返事をする。
「わたしはそれでいいと思うわよ。」
「おれも大丈夫だ。」
「オレは提案した方だし、嫌とは思っていない。」
「あたしも大丈夫だよ。」
「なら決まりだな。」
チーム分けが決まり、ようやくどの扉を開けるかを話し合いをしようとした瞬間、六人の携帯が一斉に鳴った。




