水曜日・過去 5
六時十分前に友梨たちは指定の場所にたどり着いた。
「ここ?」
「そのようね。」
友梨が誰に問う訳でもなく問いかけると智里が目を鬱陶しそうに細め、答える。
「真新しいビルだね。」
「特に何も入っていないようだな。」
勇真と昌獅は階層と本来なら何の会社が入っているかの案内を見るがそこは真っ白だった。
「どうする、入るのか?」
「不気味だな……。」
少し緊張した面持ちの涼太と怖がっている美波を友梨は見つめ、意を決したように声を出す。
「行くしかないもん、行こう。」
「……。」
昌獅は何を思ったのか、強がる友梨の頭をポンと叩く。
「何?」
「気張りつめすぎると、倒れるぞ。」
「大丈夫だよ。」
「どうだかな。」
最後に数回頭を叩かれ、友梨は不思議そうな顔で昌獅を見つめる。
「何なのアレ?」
悪意はないのは分かっている、だけど、何の意図があって叩かれたのか分からない友梨はただただ不思議そうな顔で昌獅を見つめる事しか出来なかった。
「青春だね。」
「おじさん臭いですよ。」
「……まだ若いんだけどな。」
「この中では一番の年長です。」
友梨と昌獅のやり取りを見ていた勇真は眩しそうに二人を見つめ、ポツリと呟けば、冷めた目の智里がすかさず突っ込みを入れる。
「まあ、確かに。」
「年長なんですからしっかりとしてください。」
「そうだね。」
「それにしても、このメンバーには緊張感というものがないのかしら。」
智里は機嫌が悪そうな顔で友梨と昌獅、そして、年少組の涼太と美波を睨むようにして見る。
「でも、変に固まるよりはいいと思うよ。」
「そうかもしれませんが、限度というものがあると思うんですけど?」
「ははは。」
「……ふう。」
智里は溜息を零し年少組に声を掛ける。
「二人ともボケボケしてないでさっさと中に入るわよ、後わたしの脚を引っ張らないで頂戴ね、物凄く面倒臭いから。」
「はーい。」
慣れているのか美波は返事を返すが、慣れていない涼太は不機嫌な顔をして智里を睨む。
「何かしら。」
「何でもないですよ、おばさん。」
「……。」
涼太の言葉に智里はニッコリと笑い、涼太に近寄る。
「何ですか……。」
「何か言ったかしらこの駄犬。」
「いだだだだっ!」
容赦なく頬を引っ張られた涼太は声を上げるが、智里は加減するどころか余計に力を入れる。
「あらあら、痛いの?」
「でもね、貴方の痛み以上にわたしの心の方が傷ついているのよ?」
何処がだよ、と目で訴える涼太に智里は目元だけは笑っていない微笑で低い声を出す。
「あんまりわたしを苛立たせないでよね、この駄犬、あんたみたいな屑はさっさと燃えるごみとして塵となりなさいよ。」
「ち、智里ちゃん?」
「ふふふ、時間も惜しいですから今日はこの辺で…………駄犬、次はないからね。」
勇真の言葉に智里は涼太から手を離すが、最後にどすの聞いた低い声を出す。
「……怖ぇ……。」
涼太は智里の恐ろしさを間近で感じ取り、体が凍り付きそうなくらい冷たくなる。
「リョウくん?」
心配そうな顔をする美波に涼太はハッと我に返り、何でもないというように笑う。
「大丈夫…。」
「智里お姉ちゃん、今少し機嫌が悪いからあまり突っ込まない方がいいよ?」
そのようだな、と心中で返事をして、涼太は先に進んでいった友梨、昌獅、勇真、智里を追うように美波と一緒に中に入っていった。




