火曜日・顔合わせ 6
ジロジロとみられる涼太は顔を僅かに顰める。
彼が今いるのは美波のクラスだ。
本当は静かな場所にでも移動して食べようと思ったのだが、この少女は何を思ったのか、自分の席についてお弁当を広げたのだ。
そして…。
「リョウくん、食べないの?」
「……。」
涼太は黙り込み、そして、何の言い返す気力もなかったので、渋々自分のお弁当を広げる。
「リョウくんのお弁当綺麗だね。」
「そうか?」
涼太はそう言って自分のお弁当、母親がご飯を詰め、おかずは自分で作ったものを見つめた。
「うん、この春巻きとか美味しそう。」
「食うか?」
「いいの?」
目を輝かせる美波に涼太は苦笑して、自分のお弁当の蓋に春巻きを置く。
「口に合うか分からねぇけどな。」
「いただきます。」
春巻きを頬張る美波に涼太は少し目を細める。
「美味しい。」
本当に美味しそうな顔をする美波はニッコリと微笑む。
「そうか。」
自分が作ったものでこんなにも嬉しそうな顔をする彼女に涼太は嬉しいと思う反面、本当にこれは自分よりも一学年上なのかと疑いたくなる。
「リョウくんのお母さんって料理上手なんだね。」
「………。」
涼太は美波の言葉に固まる。
普通は確かに涼太がお弁当のおかずを作ったとは思わないだろう、思わないだろうと涼太だって分かっているのだが、それでも、面白くはなかった。
「リョウくん?」
「………。」
涼太は小さく溜息を吐き、白飯を食べる。
美波は不思議そうな顔をするが、特に気にする事無く食事を再開する。
「ごちそうさん。」
「えっ…。」
あっという間に食べ終わった涼太に美波は三分の二くらい残っている自分のお弁当を見て目を見張る。
「早いね。」
「普通だろ。」
「うー…。」
お箸を悔しそうに噛む美波に涼太は肩を竦める。
「食う速さ何て人それぞれ何だから仕方ねぇだろう。」
「そうかもしれないけど。」
「待っててやるからさ。」
「うん。」
美波は自分のペースで食事する。
一方、暇を持て余している涼太は顔には出ていないが、正直もっとゆっくりと食べればよかったと後悔していた。
もし、ここが自分の教室ならば机にうつ伏していただろうが、残念ながらここは美波の学年の教室の為、彼はどうする事も出来なかった。
「ごちそうさまでした。」
両手を合わせてそう言う美波を見つめ、涼太は彼女に視線を向ける。
「何でオレを呼んだんだ?」
「うん、今日の放課後ね、智里お姉ちゃんが集合してだって。」
「で?」
「それだけ。」
ニッコリと笑う美波に涼太は呆気に取られる。
「おい、そんなんすぐに済むじゃねぇかよ。」
「えー。」
「……。」
涼太は痛み出す額を押さえ、溜息を零す。
「もういい、どこで待ち合わせなんだよ。」
「駅前だって。」
「何でだよ。」
「友梨お姉ちゃんと合流するから。」
「……。」
涼太はこれ以上彼女に聞いても無駄だと悟り、お弁当を掴む。
「分かったよ、放課後な。」
「うん。」
かなり調子を崩された涼太は重い足取りで教室へと向かった。




