火曜日・顔合わせ 5
お昼休みになり、各々散っていく人たちを横目に涼太は背伸びをする。
「あー、腹減った。」
鞄から、ごそごそと弁当を取り出す。
お昼は悪友たちと食べる事が多いのだが、今日はその悪友どもは購買部に向かっていった。
どうせ、待つのも面倒だし、お腹もすいている涼太は彼らを待つ事無く食べ始めようとするが……。
視線を感じた。
ジッと自分を見つめる視線。
そちらの方に顔を向けた涼太は目を見開き固まる。
「美波。」
長い焦げ茶色の髪を結い上げ、不安そうに自分をじっと見ている美波に涼太はせっかく広げたお弁当を包みなおし、そのまま彼女に駆け寄る。
「お前、どうしたんだよ。」
「あっ、リョウくん、良かった。」
「…はぁ、じっと見つめるくらいなら、声と掛けろよ。」
「そうしようと思ったんだけど、何て呼ぼうかと思って。」
あはは、と笑う美波に涼太は溜息を零す。
「普通にすりゃいいだろうが。」
「だって、下の学年の子だよ。」
「……。」
美波の幼い容姿や言動に騙されそうになるが、そう言えば、彼女は一学年上だと思い出す。
一学年。
たとえ、一日、一か月、の誕生日の差があったとしても、一学年違うとやはり、それは大きな溝になる。
「……。」
涼太は何とも言えない気持ちになるが、それをこの少女に悟られたくはなかったので、何とか心の内にとどめる。
「美波、飯は?」
「まだだけど?」
「お弁当?それとも、購買?」
「お弁当だけど?」
「教室にあるのか?」
「うん、そうだよ。」
「行くか。」
涼太は美波の手を引くと、美波は軽く目を見開く。
「リョウくん、行くってどこに?」
「お前の教室。」
「何で?」
「お前、なんかオレに用事があるんだろう?」
「何で知っているの?」
「……。」
わざわざ自分の教室に来て、ジッと自分を見ている彼女を見ていれば自然と分かるはずだと、涼太は思うのだが、それでも、この鈍感少女が自分と逆ならば確実気づかないような気がしてならなかった。
「はぁ…。」
突然溜息を吐いた涼太に美波は怪訝な顔をする。
「時間惜しいから行くぞ。」
「はーい。」
どっちが年上か分からない、そう心の中で呟き、涼太は上の学年の階に行くのだった。




