火曜日・顔合わせ 7
「遅い。」
凍り付くような冷たい目で見られ、友梨は思わず昌獅の後ろに隠れたくなる気持ちに抗う。
「し、仕方ないじゃない…こっちは遠いんだし……。」
放課後、学校が終わり昌獅と一緒に帰って来た友梨は顔を合わせて早々文句を言われ、顔を引きつらせる。
「十分よ。」
「何がよ、というか、待ち合わせ通り六時丁度じゃない。」
「わたしを待たせて十分経ったって言っているのよ。」
「……。」
「おい。」
涙目の友梨は声を掛けてくれた昌獅を見上げる。
「この煩いのは?」
「煩い?」
ピクリと智里の米神が動くが、昌獅は無視をする。
「こ、この子は私の妹で、智里。」
「高田智里よ。」
「……。」
「あら、わたしに名乗らせておいて貴方は名乗らないの?」
「日部昌獅。」
「ふーん。」
値踏みする智里に昌獅は眉間に皺を寄せる。
火花が飛び散っている二人に友梨は助けを求める為に視線を彷徨わせる。
美波は感心しているように口を開けて呆けており。
見知らぬ少年は顔を引きつらせ彼らから目を逸らし。
勇真は苦笑し、すっと二人の間に入る。
「えっと、昌獅、智里ちゃんだったかな、君もその辺にした方がいいよ。」
「勇真…。」
「貴方は?」
「三村勇真、大学生だよ。」
「まともそうな人がいてよかったわ。」
「……。」
「……。」
明らかに少年と昌獅を蔑んでいるような口調で、その二人は智里を睨む。
「大体分かった事ですし、移動しましょうか。」
「えっ、ちょっと待って。」
「何かしら愚姉。」
「……。」
「だんまり?」
「私、この子知らないんだけど。」
友梨は失礼かと思いながらも、少年を指さす。
「駄犬その一。」
「おいっ!」
「本当の事でしょう?」
「……。」
友梨は憐れむような目で少年を見つめる。
「くそ…。」
「時間が惜しいわ。」
さっさと移動する智里に友梨は申し訳なさそうに少年を見る。
「………ごめんなさいね。」
「……まともな人が居てよかった。」
心からの言葉に友梨は本当に申し訳なさそうな顔をする。
「えっと、歩きながらだけど自己紹介ね。」
「はい、オレは月前涼太。」
「私は高田友梨、あの二人の姉よ。」
「……。」
涼太はあの二人の姉って大変ですね、とは口には出さないが、確実に目でそう訴えていた。
「ははは…。」
友梨は乾いた笑いを浮かべる。
しかし、そんな二人に水を差す人物がいた。
「おい、餓鬼。」
「……。」
昌獅の言葉に涼太は眉を吊り上げる。
「オレは餓鬼という名前ではありませんよ。」
「餓鬼は餓鬼で十分。」
「……。」
「一言忠告、そいつはまともじゃない、ある意味この中で一番厄介な性格の持ち主だよ。」
「はぁ?」
「何よそれ。」
怪訝な顔をする涼太と流石にそこまで言われるいわれのない友梨は同時に昌獅を見る。
「事実だろう。」
そう言って去る昌獅に友梨はただただその背中を睨む事しか出来なかった。




