月曜日・駒 6
そして、無事にと言えるかは分からないが、二人は建物の中に入り込み、友梨は半泣き状態で昌獅の背を追った。
容赦なく人を沈める彼に友梨は安心するどころか恐怖を抱く。
それは昌獅の強さに対しての恐怖でも、彼がもし倒れてしまった時の恐怖でもなく、ただ彼が抱えるモノの所為で彼が壊れてしまうのではないかという漠然とした恐怖だった。
一歩、一歩、歩くたびに昌獅の纏う空気が張りつめる。
友梨はとうとう耐えきれなくて、近くにあった空き教室に彼を引っ張った。
「疲れたのか?」
自分の身を案じてくれる昌獅に友梨は嬉しさよりも先に怒りが勝った。
「どうしたっていうのよっ!」
行き成り怒鳴る友梨に昌獅は怪訝な顔をする。
「どうしたって、何がだ?」
「本気で気づいてないのっ!」
「何がだよ。」
「そんな強張った顔をしてっ!」
「……。」
友梨の言葉に何か思い当たるものがあるのか昌獅は黙り込んだ。
「何かあるのなら言葉にして。」
「……。」
「私と貴方は今日会ったばかりの他人何だよ、それなのに、黙っていられたら分からないじゃない。」
友梨の言葉に更に黙り込む昌獅にとうとう友梨は切れた。
友梨はジッと己の手を見てそして、右手を振り上げ、平手を昌獅の頬に食らわせる。
「なっ!」
痛みよりも驚きが大きく昌獅は声を出す。
友梨は肩で息をしてジトリと昌獅を睨む。
「私は男子が嫌い。」
唐突な言葉に昌獅は虚を突かれる。
「中学の時、絡まれてきて、何が何だか分からなかった。」
ポツリポツリとつぶやかれる言葉と共に友梨の目には涙が浮かぶ。
「何で私なんだろう、って思った。何で私に絡むの、何で私の行こうとする方向に邪魔するの、何で唐突に写真を撮ってくるの、何で、何で、って思った。」
「……。」
「だから、逃げるようにしてこの学校に来た。」
昌獅は彼女が何を言いたいのか分からず、ただ黙って彼女の言葉に耳を傾ける。
「この学校の普通科って女子ばっかりだから、だから、私はそれを聞いて、男子が嫌だから逃げた。」
友梨はそう言い切ると唇を噛む。
「……………………正直に言えば、私は貴方が怖い。」
「……。」
「だけど、この状況でそんな事を言っていても駄目だと分かっている。」
友梨は小さく息を吸い昌獅と対峙する。
「ねぇ、貴方は何を抱えているの、言いたくないのなら言わなくてもいい、だけど、ぶちまけてみないと分からない事だってあるんだよ。」
友梨の言葉にようやく友梨が話した事と先ほどの言葉が繋がり、彼女が何を言いたのか僅かに気づく。
「分かりにくいな。」
「し、仕方ないじゃない。」
友梨は羞恥からか俯き、頬を赤く染める。
「……お前は気が強いのか、そうじゃないのか本当に分からないな。」
どこか楽しそうな顔をそう言う昌獅だったが、残念ながら俯いている友梨は気づかない。
「これから、俺にとって一番憎い奴に会いに行こうと思う。」
「憎い?」
「ああ。」
友梨は何度か深呼吸をして顔を上げる。
友梨の目にどこか傷ついた顔をした昌獅がいた。
彼が何を抱えているのか友梨には分からない。
「大丈夫?」
大丈夫じゃない事くらい友梨は分かっている、でも、そう問わずにはいられなかった。
「大丈夫だ。」
虚勢をはる昌獅はそっと友梨の頭を撫で、そして、廊下に繋がる扉に向かって歩き出す。
「もたもたしているとタイムリミットが近づいてくるぞ。」
「あっ、うん。」
「行くぞ。」
昌獅は友梨の手を取って、敵陣に攻め込む。
昌獅のその眼には先ほどまでの友梨心配していた色が無くなっていた、その事に彼は気づかず、彼女は気づいていた。




