9.魔法陣
森の奥、瘴気が特別濃い場所にソレはあった。
「何だ……これは?」
地面に浮かび上がる黒色の紋様。
それを眺めながら、ザングは眉間に皺を寄せる。
「ひどく不快な気分だ……。瘴気の大元はこいつだな」
「……」
「ノイ? どうした?」
「わたし……これを知っている……ような気がする」
「なに?」
「これは……魔法陣」
「魔法陣?」
「うん。そう呼ばれているはず。これは、誰かが仕掛けた術式」
「何故それを知っている?」
「わからない。なんでだろう……」
「……ふむ」
地面に描かれた黒色の魔法陣。
その魔法陣から漏れ出す黒い瘴気をザングは目で捉えていた。
「この魔法陣から漏れ出す瘴気が魔物を寄せ付けているようだな。この魔法陣を消せば、森は平穏を取り戻す……ということか」
「そうだけど、これは消せない。これは術式であって物理的なものじゃないから」
それを聞いてザングは靴底で魔法陣を消そうと試すが、ノイの言う通り魔法陣は消えなかった。
「何かで蓋をしても意味がないか?」
「うん。視覚的に見えなくなるだけで、魔法陣が消えるわけじゃないから。それじゃあ意味がない」
「ではどうすればいい?」
「中に入って、調べる必要があるね」
「中に入る?」
「ザング、ごめん。わたし、どうして知っているのか自分でも分からないの。でも、分かる」
「理由はいいさ。知っていることを教えてくれ」
「うん。これは転移術式と結界術式の複合……かな。この魔法陣の上に立って念じれば、結界の中に入ることができる……と思う」
「分かった。それじゃあ―――」
「待って」
「どうした?」
「多分……中は危険。何が潜んでいるのかわからない。無事に戻れる保証はない。それでも行く?」
「危険は承知だ。だがそうだな……万が一ということもある。ノイ、お前は村に戻っていろ。報告する者が必要だ」
「やだ」
「おいおい、好き嫌いで決めるなよ」
「やだったらやだ。わたしも行く」
「……分かった。中に入ったら俺の言う事を聞けよ?」
「いつも聞いてるじゃん」
ザングは笑みを浮かべ、ノイの頭に手を置いた。
「俺から離れるな。俺が守ってやる」
「え、それって、愛のこくは―――」
「違う」
「えー」
「さて、お喋りはここまでだ。行くぞ」
「はーい」




