↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣たちの王ザングウェン  作者: ヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/14

7.森の魔物

 村の者から借りた馬に乗り、ザングとノイはキアの森を目指していた。


 ザングとノイは、どちらも馬を操ることが出来る。

 これはクラウス・アーレントから仕込まれたことだ。


 クラウス・アーレント。

 元傭兵にして、ザングとノイを拾い上げた人物。


「……ふッ」


 馬の上でザングは笑みをこぼした。


 ザングにとってクラウスは恩人だった。

 日常の事柄や世の中の常識。この世界で生きる術をクラウスに教え込まれた。


「爺さん、あんたが死んでもうすぐ一年か。あの世で見ているか? そこそこ……上手くやれているだろう?」


「ザング、なに笑ってるの?」


 馬で並走するノイがそう尋ねた。


「ああ、爺さんのことを思い出してな。こういうのは何と言うべきか? 懐かしい……であっているか?」


「うん。たぶん正解」


「ノイ、お前は爺さんのことを思い出すことはあるのか?」


「あるよ。クラウス爺はわたしにとっては、本当の親みたいなものだったし。たまにクラウス爺のことを思い出して泣いたりしてるし」


「……本当か?」


「うそうそ、冗談だって。わたしはもう子供じゃない。いつまでも泣いてたら、クラウス爺に心配かけちゃうからね。それに、わたしにはザング居るから平気だよ」


「……」


「何か言ってよ」


「メリラも同じようなことを言っていたな」


「うん、そうだね」


「俺には……分からないことだな」


「もし、わたしが居なくなっても……分からない?」


「さあな。その時になってみないことにはな」


「えー、なんか冷たくない?」


「だが、お前が居ないと困るのは事実だ。だから居なくなるな。できれば傍に居ろ」


「それってもしかして……愛の告白?」


「いいや」


「えー、ここはそうだって言う場面でしょ」



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 キアの森は、樹木が生い茂る巨大な森だ。

 この森には様々な生き物が生息している。

 豊富な食料を抱える豊かな森は、生き物たちにとっての楽園と言えた。


 しかし今、その森であきらかな異変が起こっていた。


「嫌な気分だ」


 森を目の前にして、ザングは顔をしかめた。


「口で言うのは難しいが……瘴気、とでも言えばいいのか?」


 それを聞いてノイは頷いた。


「うん、わたしも感じる。森から濃い瘴気の気配……」


「お前も分かるのか?」


「分かる」


「ノイ、思ったよりも厄介なことになっていそうだ。お前はここで待っているか?」


「まさか。わたしも行くよ」


「守ってやると約束はできないぞ?」


「いらない。わたしも一端の傭兵。自分の身は自分で守る。それに、覚悟はできてる」


「分かった。では……行くぞ」


 二人はキアの森に踏み入った。


 それから五分も経たない内のことだ。


 現れたのは巨大な猪。

 人よりも大きいその猪は、まるで岩が動いているかのようだった。


「ロックボアか。ノイ、ロックボアの危険度を覚えているか?」


「勿論」


「では、敵戦力の評価を述べてくれ」


「クラウス爺の定めたロックボアの危険度は三。一から六の六段階評価で、真ん中の位置。これは小隊クラスが相手して何とか倒せるってレベルだね」


「一個小隊は、だいたい三十人程度だったな?」


「そうだね」


「いいだろう」


 その瞬間、ザングの爪が黒色に変化し、鋭く伸び始めた。


 ロックボアは戦闘態勢に入っているが、慎重にザングとノイの様子を窺っている。


「ザング、わたしがやる。ザングは周囲の警戒をお願い」


「一人で大丈夫か?」


「よゆー」


 ノイは腰のベルトに手を伸ばした。

 鞘から二本の短剣を抜き、左右で一本づつ握る。

 そして、軽く息を吸う。


「いくよ」


 その瞬間、ノイの姿が消えた。


 次にノイが現れたのは、ロックボアの背の上だった。


「ヴォオ!?」


 ロックボアは意表を突かれた。


 二本の刃が躍る。

 ザクザク、とロックボアの体に突き刺さる。


「ヴォオオオオオオ!」


 痛みと怒りにより、ロックボアは咆哮を上げる。


 ロックボアは、脚を蹴り上げて森の木々へ突進。


 太い樹木が簡単にへし折れるが、それは意味のない行動だった。


「遅い遅い」


 挑発するような少女の声をロックボアは聞いた。

 だが、その少女の姿が見当たらない。

 そうしているうちに、また体に刃が突き刺さる。


「ヴォオオオオ!」


 ノイの動きは単純に速かった。

 ノイはロックボアに姿を捕捉されることなく、一方的に刃を突き刺していく。

 それを可能としているのは、主に二つ。


 一つは魔力操作技術の高さ。

 体に漲る魔力を操作し、爆破的に身体能力を高める技法。

 ノイは人の何倍もそれが得意だった。


 二つ目は卓越した戦闘センス。

 敵の動きを予想し、どう動けば効率よく倒せるか。

 ノイはそれを自然に理解する。


「流石だな、ノイ」


 ノイの戦闘能力の高さはザングも認めるところ。


 ロックボアは暴れ回るが、ノイはすべての攻撃を躱す。


 やがて、決着が付いた。


 全身を穴だらけにされたロックボアの巨体が地面に沈んだ。

 赤い血だまりの中で、ロックボアは息絶える。


「どう?」


 ノイは期待の眼差しをザングに向けた。


「よくやったノイ。すごいぞ」


「やった。ザングに褒められたー」


 両手を上げて喜ぶノイ。

 だがその喜びも束の間、新たな脅威が現れた。


 ズドン、と大地を踏みしめて現れたのは巨大な鶏の姿をした魔物。


「おいおいどうなってる。何故コカトリスがこんなところに居るんだ?」


 コカトリスと呼ばれるその魔物は、本来ならもっと標高の高い場所に生息しているはずだ。


「おかしいね。この森で何かが起きてる……」


「まあ、考えるのはあとだな。ノイ、コカトリスの危険度は三だったな?」


「そう。危険度はロックボアと同じだけど、あの尾から生えた蛇には注意して」


 奇妙なことにコカトリスの尾から蛇が生えていた。

 その蛇は、殺意を宿した瞳でザングとノイを睨みつけている。


「ザング、わたしがやろうか?」


「いいや。順番的に次は俺だろう」


「そっか」


 ザングは前に出てコカトリスを見上げる。


「来い」


 それを挑発と取り、コカトリスは大きく鳴いた。


「ギイイイイイイッ!」


 コカトリスが動き出す。

 巨体が途轍もない速度でザングへと迫る。


 それはすでに、大質量の凶器だった。

 コカトリスの突進をまともに受ければ、人間などひとたまりもないだろう。


 それをザングは敢えて前に飛び出し、コカトリスに接近。

 そしてザングは姿勢を低くして、コカトリスの腹に拳を突き上げた。


 空気が爆ぜるような轟音。

 ザングの拳の威力により、コカトリスの巨体が浮く。


「ギグッ!?」


 コカトリスは地上から約五メートル打ち上げられ、完全に無防備を晒す。

 それを見てザングは自らも飛び上がり、右腕を払った。


 コカトリスの首が飛ぶ。


 コカトリスの血が雨のように降り注ぐ中、ノイは呟く。


「やっぱり、ザングには敵わないな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。