3.村
ザングたちは村に到着した。
その村は都市部から離れた場所に位置し、アムトス村と呼ばれている。
そのアムトス村の村長宅にて、話が進んでいた。
商人ロイドは、村長にザングとノイのことを紹介する。
「村長、こちらが依頼を引き受けてくれたお二人です」
村長と呼ばれたのは、四十代ぐらいの女だった。
村長にしては若く、それに加え女だった。
それは珍しいことだったが、ザングはそれに気にすることなく名を名乗った。
「俺はザング・アーレントだ。それでこっちが」
ザングの視線を受けてノイは言う。
「わたしはノイ・アーレントだよ」
村長は一つ頷いて言葉を返す。
「私はメリラ・エーベルト。まずは依頼を引き受けてくれたことを感謝します。ところで……お二人は兄妹ですか?」
「違うよー、わたしたちは夫婦だよ。だから姓が同じなんだー」
「え?」
と驚くメリラ。
ザングとノイは十歳以上は歳が離れているように見える。
ノイが十五歳ぐらいなら、ザングは二十五歳と言ったところか。
メリラにとって結婚とは家同士の事情でするものであった。
だが傭兵はそうではないはずだ。
だから、このザングという傭兵は、自分の意思でノイという少女を嫁にしたということになる。
「違うから安心しろ」
ザングが首を振って答えた。
「俺とノイは、どちらも拾われた身だ。昔、傭兵をやっていたクラウスっていう爺さんに拾われてな。爺さんの姓はアーレント。だから俺とノイはアーレントを名乗っている。俺とノイの関係は夫婦でも恋人でもない。だがノイは俺の相棒だ。俺たちは二人で傭兵をやっている」
ノイの非難するような視線を手でひらひらと払いながらザングはそう説明した。
「そ、そうでしたか。説明して頂きありがとうございます。気になったものでして……余計なことを訊いてしまいましたね」
「いいや。依頼主が依頼相手の素性を気にするのは、おかしなことじゃない。他に訊きたいことがあるのなら答えられる範囲で答えるが、何かあるか?」
「いいえ。貴方たちの実力はロイドから聞いています。その事実があれば十分です。さて、ロイドから聞いているとは思いますが、改めて私から依頼内容についてお話ししましょう」
「それは助かる」
「この村から西へずっと進むと、キアの森と呼ばれる森があります。そこは、私たちにとっては大切な森です。私たちは森に入り動物を狩ったり、山菜やキノコを採ったりと、森から恵みを分けてもらって生活をしていました」
一呼吸してメリラは続ける。
「ですが、最近になってキアの森に魔物が出現するようになりました。あの森は魔物が居ない安全な森だったんです。それなのに今は、多くの魔物が生息しているようなのです。魔物を駆除するため、この村で戦える者が森に入りましたが帰って来ませんでした。それから領主様にお願いして兵士様を派遣して頂きましたが、その兵士様も森から帰って来ませんでした……」
「領主は増援を送らなかったのか?」
「はい。他の地域でも魔物の被害が増えているようでして、こちらに割く余裕がないようなのです……」
「確かに。ここ最近は魔物の動きが活発になっているな。ここまでの道中、グリフォンに襲われたが、あれは平原には出現しない魔物だ。異常事態……なのかもしれないな」
それを聞いて、ノイは独り言のように呟いた。
「そう、グリフォン。グリフォンのせいで馬が逃げちゃったんだよね。でも、ロイドさんの元に帰ってきた。あの子は良い子」
ロイドは言う。
「あの子は儂の相棒だからね。でもあの時は本当に助かったよ。君たちが居なければ、儂は死んでいただろうね」
「気にするな。さて話は分かった。その森に入って、魔物を全滅させればいいんだな?」
ザングからそう問われメリラは応える。
「全滅……それはありがたい……。ですが、おかしなことを言うようですが無理はして欲しくありません。まずは森に入って調査を行って欲しいのです。魔物の大体の数や種類、魔物の巣の場所などの情報を求めます」
「……了解した。それが依頼ならばそうしよう」
「はい、ありがとうございます。さて、今日はもう日が暮れますし調査は明日からでお願いします。今日はこの家に泊っていってください」
「いいのか?」
「是非そうしてください」
「ではありがたく」




