2.黒爪
グリフォンは両翼を動かして上空へと跳び上がった。
その間、グリフォンの鋭い視線は地上の獲物から離れない。
地上の獲物。それは黒髪の若い男、ザング・アーレント。
長身で筋肉質。若く健康な肉体を持つザングは、グリフォンにとっては絶好の獲物。
上空のグリフォンを見上げ、ザングはあくまで余裕の表情。
「来い、クソ鳥」
挑発するように言うザング。
強気な態度だが、ザングは武器らしき物を装備していなかった。
その光景を離れた位置から見ていたロイドは、ノイに尋ねた。
「彼、武器もなくて本当に戦えるのかい?」
「問題なし。それに、武器ならちゃんとあるよ」
どこに?
とロイドは訊こうとしたが、それを口にする前にグリフォンが動き出した。
グリフォンは上空から急降下。
鋭い鉤爪で獲物の命を絶つつもりだ。
途轍もない速度で襲い掛かってくるグリフォン。
それをザングは、並外れた反応速度と運動能力で躱した。
グリフォンの鉤爪は空を切るが、翼を持つグリフォンは優位な立場にあった。
グリフォンは再び空へ上昇しようとしている。
「させるか」
そう言ってザングは、左手を下から上に振るった。
それは一見、意味のない行動のように見えた。
しかし、その効果は絶大。
赤い血が飛び散り、グリフォンの首が飛んだ。
首と胴が別たれ、グリフォンは死亡。
遠目では、ザングが腕を振っただけでグリフォンの首が飛んだように見えた。
だからロイドは理解できなかった。
「な、何が起きたんだ……?」
「言ったでしょ? ザングには武器がある。それがあの爪だよ」
「爪?」
ロイドは目を凝らした。そして、ノイが何を言っているのか理解した。
ザングの爪が鋭く伸びていた。
それはまるで鋭い刃物のように。
そしてその爪の色は、深い黒色。
黒に変色し、鋭く伸びた爪。
どういった理屈でそうなっているのかは、ロイドには分からなかった。
だが、ここでようやくザングの通り名を思い出した。
「そうか、あれが彼の武器……。『黒爪』のザング……か」




