12.昔話
白い景色が広がる空間で、女は名を名乗った。
「ワタクシの名はカリーナ。封印を守る守護者です」
「封印に……守護者……か。色々と訊きたいがまずは……」
ザングはノイに視線を向けたあと、カリーナに向き直る。
「俺の名はザング・アーレント」
「わたしはノイ・アーレント。まずは、この場所が何なのか教えて欲しいかな」
そのノイの言葉を聞いて、カリーナは頷いた。
「はい。この場所は、魔王の力を封じ込めるために創られた結界の内側です。あれに魔王の力を封印しています」
カリーナは指先をその方向へと向けた。
指がさし示す方に、瘴気が漏れ出る巨大な柱。
その巨大な柱に目を向けて、ザングは言う。
「魔王というのは?」
「この世界が神々によって創造されて、しばらくのことです。地上に力を持った生命体が生まれました。その者たちは、他の生命体とは比較にならないほど強力な力を持っていました。神々はその者たちのことを魔人、と名付けられました。そして、その魔人たちの中でも飛び抜けて大きな力を持った存在。その者を魔王、と呼びます」
カリーナは一呼吸して続ける。
「神々はその者たちに目をかけて、様々な恩寵を与えました。その者たちは神々に感謝し、崇め奉り、忠誠を誓ったのです。神々と魔人たちは良好な関係だった……と思います。魔王が神々に迫るほどの力を手に入れるまでは」
「王は傲慢によって身を滅ぼす。いつの時代も同じということか」
「傲慢……まさにその通りです、魔王は神々に弓を引きました。神々に取って代わり、己が世界を支配しようと考えたのです。そして始まったのです。魔王を筆頭とした魔人たちと神々の戦争が」
「結果は?」
「勿論、神々が勝利しました。ですが、魔王とその配下……五天魔将だけは滅ぼすこと敵わず。封印の柱に封じることで、決着をつけたのです」
「あれがその封印の柱ってわけだな?」
巨大な柱の方へ目を向けてザングがそう言うと、カリーナは頷いた。
「その通りです」
「それで、あの封印はちゃんと機能しているのか? あの瘴気の濃さは只事ではなさそうだが」
「瘴気を感じ取れるのですね……。ええ……封印は今も機能しています。ですが……」
「言ってみろ」
「封印の力が弱まっています。長い年月の影響か、それとも別の原因があるのか、それは分かりません。封印が弱まった影響で五天魔将の一人、フォルティスが解き放たれました。放っておけば、魔王も解き放たれてしまうでしょう」
「魔王が解き放たれるとどうなる?」
「神々は魔人たちとの戦争に勝利しましたが、大きな打撃を受けました。大きな傷を負った神々は、天界へと帰ることを決められたのです。神々の制約により、再び地上へ顕現されるのは……おそらく気が遠くなる程の未来となるでしょう。つまり魔王が解き放たれるということは、神々の居ない世界で巨大で邪悪な意思が生まれ落ちてしまう。ということです」
「魔王が世界を滅ぼすと?」
「それを可能とする力を魔王は持っています」
「……なるほどな」
「ザング」
「なんだ? ノイ」
「ちょっと話が大きすぎて付いて行けないかも」
「一理あるな。少し落ち着いて整理しようか。だがその前に……カリーナ、お前が何者なのか教えてくれ。守護者、と言っていたな?」
「はい。守護者とは、神々によって創られた存在。その目的は、この封印の間を守ることにあります。ですが……ワタクシはフォルティスに負けて、逆に封印されてしまったのです。ワタクシは不甲斐ない守護者です……」
「そう気を落とすな。なんとなく分かってはいたが、お前は人間ではないのだな?」
「ええ、違います」
「ふむ。それで、そのフォルティスって奴を俺が倒したから、お前は自由となった?」
「はい、その通りです」
「だから俺のことを恩人と言ったのか……」
「左様でございます。あの、ワタクシからもよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「ワタクシは封印された状態ではありましたが見ておりました。貴方様がフォルティスを倒すところを……貴方様の異常な強さを……。貴方様は……何者なのでしょう?」
それを聞いてザングとノイは視線を合わせた。
一拍置いてザングは言う。
「分かった。俺も話そう」




